番外編 FIRST WORLD
タイムリープが起こる前の二人の日常の一部です。
「お、終わらない…。納期までギリギリコース確定だ……ヤバい。いやマジで」
俺は仕事の納期に追われていた。デザイン関係の委託業務なんだけど、あれやこれやとアイディアが浮かんできて取り入れてたら時間が全く足らなかった。
今回は春服の新作のデザインを請け負っていたんだけど、毎回イメージモデルを頼んでいる友ちゃんがタイミング悪く大手ファッションショーに出演が決まっており、頼むに頼めなかった。
「イメージは出来てるんだけどなぁ…。実物を見る見ないの差はやっぱ大きいな…」
とまぁそんな感じで仕事に追われていた。
____________________________________
「おーーわったぁ!」
ギリギリ納期限内に送信が間に合い、凝りきった肩を解す。
現在は時刻………20時!?やばい、晩御飯の支度忘れてた……
俺は恐る恐る嫁ちゃんの居るであろう方向に視線を向けたのだが……あれ?いない?
そこで初めて気づいた
「ん?いい匂いがする…」
匂いの元を辿るとそこには、料理をしてる嫁ちゃんがいた。いやマジで。
「え!?嫁ちゃんがご飯作ってくれたの?」
「ん?ああ、旦那お疲れ。何かすんごい集中してたからさ、腹減ったーって言いずらかったんだよね」
「ご、ごめん……情けないことに仕事に追われてて……」
「ま、終わったならいいんじゃない?それに労いも込めて今日は私が作ってやろーって思ってね」
「嫁ちゃんが料理できることに驚きを隠せない」
「何言ってんの?私は基本ハイスペックなんだぜ?作ろうと思えば作れる!……旦那の作るご飯のが美味しいから今の今まで甘えてたけどね」
そう言えばそうだった。最初に嫁ちゃんの気を引けたのは俺の弁当だったしね。
今でも覚えてる、嫁ちゃんが『くっ……胃袋だけは掴まれちまった』って何故か悔しげに呟いていたのを(笑)
「それでも作ってくれてありがとう、嫁ちゃん!嬉しいよ」
「仮にもアンタの嫁だよ?たまにはそれらしい事もしないとね(笑)基本食っちゃ寝だけどな!」
「全然構わないよ?嫁ちゃんのお世話が俺の生き甲斐みたいなもんだし」
「分かってる?アンタが私をダメ人間にしたんだからなー!?」
「あははは!それでもさ」
俺は嫁ちゃんを見つめて
「愛してるよ、嫁ちゃん」
「恥ずかしげもなくよくもまぁ………」
「ん?どうかした?」
「な、なんでもないわい!もうできるから旦那はテーブル拭いて!!」
顔を真っ赤にしながら布巾を投げる嫁ちゃん。知らないだろうけど、たまに照れる嫁ちゃんの顔が堪らなく好きなので。いやマジで。
一息吐き、テーブルを囲って食事をする。あ、そうだそうだ。
「嫁ちゃん」
「ん?どしたん?」
「仕事も落ち着いたからさ、近々何処か出掛けようよ」
「お!いいねぇ〜旅行とか行っちゃう?」
「旅行か〜いいかも!行きたい所ある?」
「ん〜富〇急も行きたいし、温泉、寺……よし旦那、全部行こう」
「スケジュール管理大変そうだなぁ……ま、たまにはパーッと羽を伸ばしに行きますかー」
「珍しく乗り気じゃん旦那」
実はね?
「もうすぐ結婚記念日だしね」
「あ、そう言えばそっか。付き合い長すぎて忘れてた」
「まぁ一回目ぐらいはねー。盛大にお祝いしたいじゃん?」
「そうなると海外もアリだな……」
「欲張りだなー相変わらず。嫁ちゃんの行きたい所で良いからさ、焦らず決めなね?」
「やったぜ!」
「ご飯も美味しいよ!また作ってほしいなぁ」
「気が向いたらね。私は旦那の作るご飯のが好きだし」
これは何処にでもいる夫婦のありふれた生活の一部。幸せで、互いに好きあい、羨ましいとさえ思う関係性。
旦那も嫁ちゃんも、こんな生活が死ぬまで続いてほしいと願っていた。
だからこそ嫁ちゃんはーーーーーーーーーーー
何度繰り返してでも、望む未来の為に立ち上がるのだ。
嫁ちゃんも最初は純粋に可愛かったんですよ…いやマジで!




