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すんません 、「俺」は、記憶ないっす  作者: 志奏
三章 「果つることなき想いは再びに」
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90話 真っ平らじゃん



三章 九十話 「真っ平らじゃん 」



全く、なんつー冗談をかましてくれるんだか…… 犯罪者と似てる声かもってさ。


結局、冗談だったから良かったけど。そんな奴と似てても、正直困るし。


「そんじゃ俺は、そろそろお掃除行ってくるっす 」


「こりゃ惚け魔も卒業だな 」


「まだ続くんすね…… とっくに卒業証書の授与は、終わってます 」


今はその上位互換…… いや、下位互換のサボり魔を警備員しながらやってるんで。


「行ってら、僕は今からまかないを食べてから仕事に行くよ 」


「竹やんと同じとはいえないな、俺の警備員って仕事は 」


「全然違うね! だって、女子校のって時点で違いすぎる! 代わってよ一日 」


「できることなら永久に代わりてぇ…… はぁ 」


ほんと代わってくれよ。俺には荷が重くて、今にも投げ出しちゃいそうなんだ…… とくに明後日の対抗戦とかさ。


「うわ…… 相当嫌なんだね。その溜め息はガチで面倒に思う時のやつじゃん 」


「おいおい、しっかりしてくれよ? 女将さんに頼まれてるんだぞボウズ 」


「わかってるんすけど、いろいろと面倒というか厄介というか 」


これがさ〜 どっちも、半々くらいで俺の中にあるから、どうにもやる気スイッチが押せないんです。


「やっぱり、3次元はダメってことかな宮君 」


「そんなのは当たり前だろ。ダメ以前に何も望んでねぇからさ 」


3次元に望むものなんてさ、金、金、金、趣味、趣味、趣味、くらいしかなくね。


「さっすが〜 」


「宮田…… 今度、飲みに行くか 」


「ジュースオンリーで 」




俺はその場を後にして、温泉…… 大浴場まで行く。すると、普段は消灯されてなきゃいけない時間に、灯りがついてる。


誰だ? 消し忘れたな? やっぱ俺が、ここの掃除は担当しないといけないってことだな。


俺は…… それこそ、いつもやっていたのと同じように、なんら変わらない手つきと気持ちでドアを開けるーー


ーー それが間違えてるなんて思うかよ。


「し、し、し、ししし師匠? 」

「ほう…… 今度は覗きかよ 」

「み、宮…… 宮田さん? 」


そこにいたのはお客様じゃなく、泊まりがけでお嬢さんのところに勉強しに来てて、お昼に4000円以上も出させた奴らがいた。


ふっ…… そうだな、普通に考えたらそうかもしれん。だが言い訳させてくれ…… それはわからんわ。


あっ、でもまだ服を脱いでいないから大丈夫だよね? 脱いでたら、殴っても撃たれても文句言えないけど、脱ごうとしてただけだからセーフだ。


「おい待て、覗きってなんだ? 俺はいつものように掃除しに来ただけだ。それから消灯してる時間なのに、灯りがついてから見に来たってこと 」


覗きなんか頼まれてもするか! するなら、絶対に可愛い2Dの子がいい。


「そ、そうですよ!師匠が覗きなんて、ないですよね! 」


「緋夏、騙されるな…… あいつは巧みに言葉を使って、罪を免れる気だぞ 」


「そんなこと…… ないですよね? 」


「さすがに…… 死…… 言い訳はちょっと 」


「いやいや松柴さんは知ってるでしょ!? こっちで仕事してる時は、この時間じゃないっすかいつも 」


それから死…… なんて言おうとしたの? すごい気になります。清々しいくらいに、言ってくれた方が俺も楽になるんですが。


「そうなんですか松柴さん? 」


「は、はい…… それは間違いないですけど…… 」


「なら師匠は悪くなーー 」


「いいか緋夏、男は覗きを正当化する為ならありとあらゆる手段を考え、行動できるんだ 」


「わ、わ、私は…… しっ、信じてます…… よ? 」


「きっとこいつは今、やったー!うら若き女子のヌードが見れた!って妄想をしてるに違いない 」


「ひっ! 」


「宮田さんなら…… あり得る…… かも 」


いやいやありえないから。あと久野、お前の方が妄想力たくましいからね?


「桜守も真に受けるな、服を脱いでいないだろ? それで妄想なんかするか! それに、正直その真っ平らのボディには…… ね 」


あくまでも3次元に限るがな。2次元なら、真っ平らも素晴らしいって思うが…… リアルだと、マジでないから困る。


「よーし、そこを動くなよ? 今からリアルでやってみたかった、コンボ技を使うから 」


「師匠? 見てもないのに、真っ平らって断言できるんですぅ? やっぱり覗きですか? 」


「見なくてもわかるだろ。服の上からでも、凹凸ないじゃん 」


「ん? ほっほぅ…… ということは、松柴の身体目当てで来たのか、かわいそうに松柴 」


「そう…… なんですか? 」


「え!? なんでそうなるの? 松柴さんも、本気にしないでくださいね 」


そんなマジで怯えた目で見つめないで! 何もしてないのに、罪悪感で潰れちゃう。


「松柴のはすごいからな〜 」


「だから違うって 」


こいつオッサンより、たち悪いわ。高井さんだってそんなこと言わな…… 言うかも。


「なら松柴のも小さいと? 」


「いや、松柴さんのは大き…… 」


しまった…… つい。


「ん? 大き…… なんですかね〜 」

「師匠…… 最低 」

「ひ、ひどいです…… ひどい 」


「聞き違えるな久野! 大きさは人それぞれって言うつもりだったんだ 」


それもそれで、見方によっては変態の会話っぽく聞こえるかもしれん。


「!! あっそうだ…… 郷橋のってどう思う? 」


なんだいきなり…… そういうやお嬢さんがいないな、1人残って勉強してるのか? だとしたら君ら、薄情だぞ。


「なんでお嬢さんが出てくる 」


「大きさは人それぞれだっけか? なら、気になるじゃんか 」


ぐぬぬ…… たしかにそう言った手前、答えておけばこの場を上手く回避できるかも。


「そりゃ…… 慎ましやかな、実に着物映えする体型だと思いますよ? 」


「へぇ…… つまりは小さいと? 」


「慎ましやかなだ、慎ましいだろだってさ 」


「だとさ、小さいってよ郷橋 」


「は? 」


こいつ何言ってーー




俺は背後からくる恐怖を…… いや、背後にいた恐怖に気づいていなかった。


俺の首筋に、そっと手を添える感触がある。


「うひゃあ! 」


だって急に首に手の感触があるんだもん…… この奇声くらい許して。


「慎ましやかって、どういう意味かしらね? 」


手の主がわかってしまった。

そうか〜 久野は策士だなぁ…… まんまと、かかった俺もたいがいだけど。


「ゴクッ…… お嬢…… さん 」


「はい、お嬢さんですがなにか? 」


「ハァハァ…… こ、これからご入浴ですか? 」


怖いよ! なんでお嬢さんは、そんなにホラーなの?


「どうしたの、息荒くして? 私は慎ましやかなって言葉の意味を聞いてるだけよ? 」


「ハァ…… ハァ…… 後で作文にして、提出させてください 」


「どうして? 知ってるから、その言葉を使ったんでしょ? 」


「ハァハァハァハァ…… 許してください 」


「落ちついて、ゆっくり息をして 」


「ハァ…… はい…… ハァハァ 」


その言い方はとても優しく、穏やかな感じがする。

でも、その裏に潜んでるモノを知っている。


「さ、ちょっとお勉強会をしようか 」


「え…… は、はい…… 」


なんのお勉強会? あの世での暮らし方講座とか?


「じゃあ…… 行こうか 」


「はい…… 」




最後の「行こうか 」は、全てをひれ伏させる力を持っているかのような、冷たい声色だった。


そこで悟った…… もう何を言ってをダメだとね。


俺はその後、何故か女将さんも込みの親子揃っての折檻&授業を受け、覗きはしてはいけないことです! って、心の底まで叩きつけられる。


お嬢さんが女将さんまで、巻き込んでのお説教をしてくるとは予想外だった…… 女将さんの、「アンタ…… 死にたいのかい? 」は俺の恐怖ランキングに新たな歴史を刻む。






チクショー!!! 本当に今日は、チクショー!!!


なにもしてねぇし! なにも見れてもねぇ!


こんな目に遭うなら…… 真っ平らでも見ときゃ良かった。








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