81話 殺す気?
三章 八十一話 「殺す気? 」
はぁ…… 部活が潰れるかもで、勉強しに来たのでは? なんでみんなして、レースゲームに興じてんだか。しかも、俺がジュースとか出して接待してるしさ。
「負けた〜 郷橋は、レース系マジで強いな 」
「ありがとうございます! 久野先輩こそ、格ゲーだと手も足もでないですよ私 」
「私も…… 何か特別上手いジャンルないかな…… 」
「初絵は、全部上手いじゃん! 」
「でも…… そこそこだし 」
「羨ましいですよ松柴さん、どのジャンルも上手くプレイできるなんて、私や珠希なんて…… はぁ 」
「そう…… ですか? 」
「はい! 自信持って良いことだと思いますよ 」
「はい…… 」
「皆さん? かれこれ一時間くらい経ちますが、そろそろ戻った方が…… 」
和んでる最中にごめんね、でも俺だってそろそろ…… さっきの愚痴を壁さんに、聞いてもらいたいんですよね。
「師匠〜全然余裕ですから、まだ遊びたいです! せっかくお邪魔しに来て勉強ばっかはつまんないですよ 」
「勉強ばっかを、俺は見てねぇし 」
それだけなら許せるが君に至っては、散々な誤解を撒き散らして、挙句よくわからん呼び方をするようになりやがって…… お利口な弟子になってくれ。
「だから師匠が見てる前提は無理ゲーです! 」
「緋夏〜こいつは私達のことが邪魔なんだよ、やっぱ師匠なんて呼ぶのやめておけって 」
「大丈夫です珠希、師匠は基本的に受け付け準備できてる人なので、私達を邪魔なんて思わないですよ 」
「そんなに邪魔? ごめんね、私のせいなら後でゆっっっくりと聞くわよ? 」
「いえ、ちょっとだけ大丈夫かなと邪推してしまって…… ジュースおかわりします? 」
お嬢さんにゆっくり愚痴なんて言ってみろ、さらに面倒くさくなるわ…… 愚痴を言ってる側がストレス溜まりそうなんでね。
「私はまだある 」
「お、気がきくな! 私はオレンジがいい 」
「私もオレンジがいいです! 」
「私は…… お茶で 」
「へーい…… 」
買い置きしてある自分が憎い! 無ければ、帰ってたんじゃないか? いや…… ゲーム機がある時点でもうダメだ。
ーーーー さらに時間が経過した…… この子らほんとに大丈夫なの? 俺のサボり場所を守れるの? 頼むぜ、捨ての大将やってやるんだから勝ってくださいよ。
「先輩…… 強い…… 」
「松柴だって強いよ、たぶん私の次にこの部だとできるレベルだよ 」
「格ゲーで珠希に、そう言われるなんてよっぽど松柴さんは上手いんですね 」
「さすが初絵ってことですね! 」
「みーちゃん…… 少し恥ずかしいよ 」
「でもほんとに羨ましいよ 」
「そう…… かな 」
「え、俺は? 一回勝ったよ、ガン○ムで 」
そうだそうだ! いつも、年上らしい扱い受けてないんだから、少しはすげぇってなれ。
「師匠…… 空気を 」
「緋夏の師匠は小さいな 」
「アンタ…… 子供じゃないんだから 」
「宮田さん…… ショボ…… らしいですね 」
「失言ですよねぇ…… ほんとすいません 」
あーあ…… さらに扱いが雑になる予感がするよ。でも勝ったしぃ! 俺強えし! みんなの言う通り、小さいわ…… あとショボいか。
「たしかに私は負けたけど、お前は一種類の機体が強く使えた…… それに比べて、松柴は全機体で私と良い勝負するぞ? 」
「お、俺は一途にその機体が好きなんだって 」
「はいはい 」
「わ、私は…… 優柔不断ってことですか? 」
「違っ、違いますって! ほんと俺の言い方って、アホ丸出しですよねぇ! コホン…… その機体しか上手く使えませんでした 」
クソッ! 久野には今度もう一度、勝ったからね俺はって言っておこう…… 別に小さくはないけど、勝ったの勝ったし? その辺は、はっきりとね。
「さすが師匠! 変わり身の速さを感じます! 」
「先輩…… それ褒めてるですか? 」
「お嬢さんの言う通りだ…… 」
変わり身の速さって…… たしかに、火の粉が降りかからない為に普段から、その場その場で良い顔をするように心がけてきたな。接客でも、案外使える手だしね。
「普通に褒めてますって! 」
「なら…… 余計に悲しいよ 」
あぁ……悲しいよ…… 素直にそう思ってくれるところがね、悲しいのさ。
「なんで!? 」
ーーーー さらにさらに時間が経過した…… もう2時間くらいになったぞ。お昼までいるとは、誤算だったよ。
「そろそろ勉強会を再開しますか! 」
「だな、結構居心地の良いサボり場だったな 」
「先輩達、お腹空いてません? もうお昼だし、何か食べますか 」
「みーちゃんが作るの? 」
「え!? ま、まぁ作れると思うけど 」
「すごいな郷橋、私と緋夏はその辺のスキル上げは諦めてるから 」
「珠希〜 それは言わなくていいです 」
「何か食べたいやつのリクエストがあれば 」
「なんでもいいですよ! 嫌いなものは、マッシュルームですね…… 」
「おいおい…… 何でもいいって言う割に、嫌いなものをさりげなく言ってるぞ 」
俺もその手使わせてもらうかも、結構苦手な食べ物が多いからな…… でも板前陣には言えねぇわ。
「それでも食べれないんですよ〜 」
「大丈夫ですよ先輩、マッシュルームはうちの冷蔵庫にはないので 」
「私はなんでも食えるから大丈夫 」
「私も…… 大丈夫かな 」
「で、アンタは? 」
「え? 」
「だから食べれないのある? 」
「いや、俺は大丈夫ですよ? カップ麺とか適当に食べるんで 」
だから、早くお嬢さんの部屋に戻ってください。じゃないと、壁さんとスキンシップがとれない。
「そんな不摂生してたら、いつか後悔するわよ? だから早く言いなさいって 」
「大丈夫ーー 」
「は、や、く! 」
「き、キノコと…… ブロッコリーです 」
「ぷっ…… 意外なのが苦手なのね 」
「師匠と苦手まで被ってます! 」
「全然違うから…… マッシュは食べれるし 」
キノコはさ、食感がね…… 苦手なんだよ。ブロッコリーは…… なんで苦手なんだっけ。
「じゃあ今度は私の部屋に行きましょう 」
「やっとお昼です! 」
「うぃーす 」
「宮田さんも、一緒でいいんだよね? 」
「えっ!? あ、あぁ…… 来れば? 」
「いや、取りに行きーー 」
「面倒だから、来る! 」
「ありがとう…… ございます…… 」
やっぱり休日とか嘘だ! 学校いる時と、何か違うか? いいや何も違わねぇ。
だけどお嬢さんの部屋に行くのは…… 初めてかもしれない、俺が忘れてるだけかな? いや、たぶん初めてだよな。緊張…… いやいや、ないわ。
みんなが立とうとした時…… 桜守が不意に言葉を発した。
その言葉を俺が読み取れることができれば、絶対に言わせないように全力を尽くした筈だ…… だが言葉は、そんなことを考える隙も与えずに全員に聞こえてしまうーー
「こんなにお世話になっているので、よければご両親にご挨拶したいです! お祖母様には、来た時挨拶できたのでせっかくなら 」
「あ〜 そうだな、私達一応は先輩だしな 」
「え…… 」
「あ、せ…… 先…… みーちゃん 」
「どうかしましたか? 」
「どした? 」
ダメだ、悪意もない…… 違う。常識的に考えれば、桜守と久野の言ってることにおかしなことは何一つとしてない。
どっちかと言えば、動揺してる俺の方がおかしなくらいだよ。
でもな…… それは言わなくてもいいことだ。
「ゴフっゴフっ! うぇぇ 」
思考できてるのに、俺はジュース飲んでたから…… 思いっきりむせたんですけど、殺す気?
「ゴホッゴホッ…… ふぅ…… 」
「し、師匠!? 大丈夫ですか! 」
「何やってんだよ 」
「いや、ちょっと詰まって…… 」
どうしよう…… どうこの場を乗り切る? 話題を変えたい! でも、あからさますぎると逆に変だ。
だって、言ってることには何の不思議も非常識もないんだから。
だけどダメだ…… その話題は俺の胃もたれの原因になりかねない!だいたい、俺もよく知らないんだからよ。
いや、お嬢さんにはなるべく気にしないでって…… そりゃ無理か、俺と違うもんな。お嬢さんはーー
ーー いた筈の両親が亡くなってる。
俺の場合は元から覚えてない、いたかどうかも怪しいし、それに気にしてない。でもお嬢さんは、 気にするよなそりゃ…… まだ高校生だもんな。
……俺とは違うよ
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