80話 ごごご誤解だよ
三章 八十話 「ごごご誤解だよ 」
ふぃ〜…… この状況はなんなのだ? 俺は、ただ休日を過ごそうとして、しかも自分にしては珍しく旅館の手伝いをする気でもいたのに…… なんでこんな恐怖体験することになるんだよ。
一応は座って話してくれてる…… 上手く別れたな〜 俺と桜守がテーブル跨いで、チームみたいだ。
「で? 」
「お嬢さん…… で? とは 」
怖いよ、何もしてないのに、なぜこんな緊張をしなくちゃいけないのですか? 神・仏・女神様・界王○様。
「さ、郷橋さん…… 何か、怒っているのですか? 」
「先輩、別に怒ってなんていませんよ〜 …… ただ? そこの男はなぜ部屋に女を連れ込み、あまつさえ師匠なんて呼ばせてるのかっていうのを聞きたいだけなんですよ? 」
「お嬢さん? べ、別に連れ込んでは…… 」
「は? 」
「そ、そうですよねぇ…… そう見えるんすかねぇ…… 」
おかしいな、たしか桜守はちゃんと伝えてきたって、言ってたのにぃ。
「それ以外にどう見えるの? 逆にさ 」
「おっしゃる通りで…… 勉強はしろって、言ってるんですよ? 」
「何の勉強? 至近距離で、師匠師匠って呼ばれながら、いらやしくゲーム教えるのが勉強なの? 私の知識不足ね、それなら 」
「えっと…… どう説明していいやら、状況をワンシーンのみ切り取ったら、誤解を招くかもしれませんが、はぁはぁ…… とにかくご想像してるのとは、全然違うのでご理解をいただきたいです 」
「ご理解…… ね、息大丈夫? ずいぶん荒れてるんじゃない? 動揺してるんじゃない? 」
「はぁはぁ…… ご心配ありがとうございます。持病ですねきっと、動揺ではないです 」
嘘付きました…… 純然たる動揺です。だって、怖いんですもん、動揺くらいしますって。
つーか、桜守さーん? 何か援護射撃してくれませんか? FPSの上位ランカーなら、助けてくださいな。
「すごい持病ね、さっさと病院行ってきたら? 運が良ければ、永眠許可してもらえて安らかに眠れるかもよ? 」
「それ…… えぇ…… マジですか 」
お嬢さんは、死ねなんて言わないよね! 俺は信じてるよ、そんな子じゃない!って…… だよね。
「師匠…… ぷぷっ、なんでそんなに怯えてるんですか? 顔が真っ青ですよ 」
「桜守、誰のせいで…… てゆうかお前だって怖くなってたろさっき 」
「ま、まぁたしかに…… 郷橋さん怒ると怖そうですもん。それにしても、君だったのにお前に変わりましたね呼び方…… えへへ 」
「んなどうでもいいこと…… はっ! 」
さらに形相が鬼神化してらっしゃる。何をした? 今のわずかなやり取りの中に、そんな気に障わることあった? ないよな…… 逆ギレか。
「やっだな〜…… ほんと仲良しさんになってますね、先輩? 」
「さ、郷橋さん? なんかわかりませが、ごめんなさい! 」
「なんで謝るんですか〜…… やましいことしちゃいました? それなら、今すぐソレ(ダメ主人公)を折檻しなきゃいけないんですよぉ 」
「折檻って拷問ですよね…… 師匠、一体何を? 」
「お前な…… 」
もう! この子は、話しを聞かないにも程があるわ…… 一体何を? だと!? 全ての、原初様が何を言ってるんですか、ほんとにさ。
どんどん状況が悪化してる気がする…… 俺は冷静に、客観的に話したいのに、それを許してくださらないのですかお嬢さん。
いや待て、桜守に全部説明させれば万事解決するんじゃないか? この子は、話しは聞かないけど話しを聞かせるのは、そこそこ上手かったような…… それに先輩から説明受けた方がいいよなきっと。
解決案らしきもの、主に全部他力本願だが糸口が見えたと思った…… するとまた築年数の古い(そんなオンボロじゃないよ?)が開く…… お嬢さん、閉めてなかったんかい。
「おーい、郷橋? 何か問題でもあったの…… か? 」
「みーちゃん何かあった…… の? 」
「先輩、初絵…… 少し時間かかりそうで、そこのアホが! 桜守先輩に師匠呼ばわりされて悦に浸ってたんで、ちょっと説明をしてもらおうかと 」
「ちょ、おじょ、お嬢さん!? 」
え、悦に浸るだって!? 冗談じゃないっすよ! 心底恐怖に陥ってたんですけど。
それと、久野にそんなことを言うとさ…… 絶対HPが削れるんですから、やめてください。
「なん…… だと…… 」
「宮田さん…… とうとう真性のク…… ダメですよ? 」
「師匠さっきから、動揺しすぎですって…… 何回も噛みすぎですよ…… ぷぷっ 」
「おま、お前なぁ…… 」
これ以上…… 何を悪くすれば気が済むのですか、お主は。
「ほ、ほぅ…… 師匠? 師匠だと? 緋夏、どういうことなのだ 」
「文字通り、尊敬できる人です! …… たぶん 」
「そーかそーか…… フンッ! 」
「ッッ! 」
俺は…… いきなり…… 胸ぐらを掴まれましたぁ。すごい怖いです…… 苦しくてたまりません。
「最初お前が来た時言ったよな? 変なことするよって、緋夏が可愛いて愛おしくても、絶対するなよってさぁ 」
「ごごご誤解だよ…… うっ…… 話せばわかるって! 桜守から、事情聞いてくれ…… 無実だから 」
やだな、いつかのヤンキーより怖いよ…… 久野はどんだけ桜守LOVEで生きてんだよ、お母さん? それとも…… いや、考えちゃダメだ。
「そう言うように、緋夏を洗脳したな? お前を殺して緋夏を取り戻す! 」
「なんっ!? 全然違うっ…… うぇ…… から、マジで桜守から聞いてください…… お願いします 」
洗脳って…… 俺をどういう風に見てるんだよ! 是非教えていただきたいですね。
「先輩〜 そのままおとしちゃいましょう 」
「みーちゃん…… 話しくらいは 」
「珠希!? 師匠が死にそうなんですけど! なんでそんな怒っているの? 」
「緋夏…… すまなかったな、私が行かせたばっかりにこんな下衆に! 」
「え? え? 説明キボンヌです 」
「桜守…… ここにうっ…… 来てからの経緯を説明してあげくれないか? 」
こっちも説明キボンヌだよ、突然の来訪に突然の胸ぐら掴みとか…… 休日ってなんだ? 俺の知ってる休みと違うよ。
「け、経緯ですか? わ、わかりました! 」
「頼…… むわ…… オェ 」
ーーーー 桜守は、カクカクシカジカの如く手早に説明した。みんなは、それを聞いてちゃんと理解してくれてる様子だ…… 最初から、聞いてくださいよ! ほんとにもう!
「…… という具合で、私は師匠のしていることは尊敬できる! と思い、呼び方を変えたんです 」
「先輩…… こんなのになったらお終いですよ 」
「みーちゃん…… こんなのって 」
「初絵…… たぶん初絵より、柔らかいと思うよ 」
「え…… そんなに? 」
「チッ、なんで師匠なんだよ! 私だって緋夏にもっと色々と、違う呼び方されたいぞぉ 」
「珠希は珠希です! 一番の親友なんですから! 」
「そ、そっかぁ…… そうだよなぁ…… 嬉し! 」
「はぁ…… 誤解がとけたなら、皆さんお勉強しに戻ったらどうです? 」
そろそろ戻ってくださいよ〜 これから、一人言で愚痴を言いまくってやるんだから。
「そんな邪魔だと? ごめんなさいね、変な勘違いしてしまって! 」
「いやそういうわけじゃ…… 」
ほんとですよ! どんだけ怖かったか、しかしそれを少しでも口にしたら、さっきの再来間違いなしだから、口にするのは絶対帰ってからだ。
「ま、私らも少し休憩したいと思ってたから、ここでゲームさせてくれよ。緋夏も一緒にやろうぜ 」
「その言葉、ウェルカムです! 」
「いやーー 」
「師匠、いいですよね! 」
「…… ジュース飲む? 」
ほんと聞きませんねぇ! この子ら! 何、俺は育児で疲れて亡くなった霊にでも取り憑かれたか? そう思うくらいに疲れるんですけど。
誤解が解けたのは良かった…… いやいや! そもそもが、おかしいんだから良かったもクソもねぇ。
ジュース…… 飲むか。




