79話 死相?
三章 七十九話 「死相? 」
自爆して、過去の恥を晒し、笑われる男か…… 滑稽だな。いや、一周回ってある意味愉快なやつだよね? 裏返せば、隠し事のできないやつ…… そんな綺麗なわけあるか。
「んで? 」
「んで? 」
「なんで真似すんの、勉強しに来たんじゃないの? 」
そうだそうだ、早く勉強しに帰りなさいよ。ここにいても、なんの知識も得られないぞ。弱味は与えたけど。
「そうですよ。だからみんな、下にいます 」
「下? 下…… お嬢さんの部屋か 」
「はい! 郷橋さんがオーケーしてくれたおかげで、全員で勉強できるんですから、感謝です 」
「そうか…… なら早く戻ってやれって、久野とか心配すんじゃない? 」
きっと、下手に遅くなると警察に連絡しなきゃ! とか、あいつなら言いそう。
そして俺の部屋に居ると分かるや、俺が殴られるか、蹴られるか、撃たれるか、のいずれかを迫られるに違いない…… マジで戻ってくれ。
「大丈夫ですよ! お兄さんの部屋が上だよって聞いたので、様子見て来ますと言い、出て来たんです 」
「なんで様子を見に来られなければならない 」
「約束通り、一緒に勉強する為に決まってます 」
「んな約束はしてない 」
嘘は言ってないよな? 勉強しに行くので! って辺りは聞いた…… だが、俺が勉強するなんて一言も言ってないんだから。
決して、汚くはない。そもそも俺なんかが、お勉強したってもう手遅れだって。
「しましたぁ! 」
「してませぇん! 」
「はぁ…… お兄さん、勝ちたくはないですか? 」
「それも言ったろ、勝たせたいってさ…… だから捨ての役目は俺が買うって 」
「捨てなんて嫌です! やるなら、ダメで元々勉強しましょう? 」
「無駄なことはしたくないの、俺に構う時間は1分でも勉強に回せって、それは君らの勝ちにきっと繋がるからさ 」
無駄…… 学生には、あまり聞かせたくない言葉だがしょうがない。だって本当に無駄だ…… 君らと違って、基礎がない人間がいくら難しい本を読んでも、何一つ理解できないで終わる。
そんで、やる気を誘発させたとたかって、責任を感じてほしくもないしさ。俺の恥ずい過去を、ゲロさせたことは責任感じてくれよ。
「…… ちょっとカッコいいですね、それ 」
「やめろって、こっちが恥ずかしくなっちゃうだろ。それに、勝ちに繋がるは本当だから頑張れ 」
「なら…… 」
「奈良? 旅行か 」
「違いますよ! なら、少し気分転換に休憩します。さっきから、この部屋にある物が私を誘惑してくるんですよ 」
「何言ってんの? 」
飴と鞭ってか、だが残念だな。俺はまだ鞭打たれてる君を見てないから、飴をあげる気になれない。
そもそも飴にならないぞ? この部屋にある物は、下手したら毒になる物ばかり。
「朝から勉強頑張ってたので、そろそろ休憩しますってことですよ 」
「いや理解はしてるよ? ただ、俺がその頑張りを見てないので、早く戻りなさい 」
「お兄さんに見てもらわないとダメとか、無理ゲー過ぎます! とにかく、疲れたのでゲームしたいです。そこのフィギュアとか見たい、触りたいです 」
「ゲーム部の部長だろ、無理ゲーの一つくらい攻略してみろ。それから、壊す可能性があるので、お触りはNGだ 」
お勉強はしていなかったが、子供との距離感や行動をテレビから教わることはしてた。
それによると、まず物を壊すって言ってた。それから人の話しを聞かない、ヨダレまみれに…… って、高校生にそれはないか。
「今、お兄さんが持ってきた死にゲーを攻略してますよ? それに、壊さないからお願いします! 」
「俺の言ってる無理ゲーと違う…… ま、上がらせた時点でもう手遅れか、絶対に壊すなよ、華奢なボディなんだから丁寧に触れてくれ 」
「やっぱりお兄さん、小さい…… 」
「なんでやねん…… いくらしたと、思ってる? 諭吉先生を3人も家出させたんだぞ。しかも、今プレミアついてて、その倍はする 」
俺も驚いたんだぞ、まさかメーカーが潰れて流通が少なくなったんよ。あれよあれよの間に、どんどん高くなっていった。だから壊すなよ!
「マジですか…… お兄さん、趣味に全力投球しすぎですよ 」
「最高の褒め言葉をありがとう。でも、フィギュアはそんなに買わないから、どっちかって言うとゲーム関連で財布が泣いてる 」
好きなアニメのゲームとか出ちゃうとその都度、限定版に手を出しているからすぐに金が無くなる。
「なるほど…… この部屋に納得です。決めました、お兄さんへの呼び方を変えます 」
「お、いいぞいいぞ、やっと敬称でーー 」
「師匠で! 」
「し…… 死相? 怖えよ 」
やだこの子、何か見えてるのかしら? 早く病院へお行きなさい。それから、俺も何か憑いてないか神社へ行かないと。
「どんな聞き違いです!? 師匠です師匠! マスターですよ 」
「中二、患ってたけ? 」
「患ってません! ちょっとは、カッコイイと思いますけど、私は違いますから! 普通に同士として尊敬できるって思ったんです 」
「中二をカッコいいって…… まぁ、格好はつけてるよな。言いたいことはわかった、だが断る! 」
「なんでですか、いいじゃないですか師匠〜 」
「全然、良くありません生徒〜 」
いいわけあるか、なんで師匠なんて呼ばれにゃならん。てっきりこれからは、さん付けで呼ぶのかと思ったのに。
さん付けにこだわりはないけど、お兄さんよりはマシだし、普通に良い距離感があると思った。
だが師匠ってなんだ? お兄さんだって嫌なのに、嫌のランクが上がるんですが。
「師匠だって、呼び方にこだわりはないでしょう? 珠希なんて、お前って呼ぶレベルだし…… 私なんて、むしろ良い方です! 」
「あ、あいつはもう言ってもダメだと判断したんだ…… たしかにこだわりはないけど 」
「なら決定です! 師匠! 」
「早く勉強しに戻りなさい、これは師匠からの言いつけです 」
「それは嫌です! もう少しだけ休憩します 」
「ですよねぇ…… 」
言うこと聞く気配が、全くない弟子を持ってしまった…… まぁいつか飽きるだろ。なんなら今、飽きてくれてもいいよ。
ーーーー 桜守はフィギュアを見ていいなぁと、羨ましがりながら、今度はゲームをしたいと言い出し、俺はゲームを起動させる…… 勉強せんでいいの?
「えへへ、このゲームならアニメ見てましたから、語れると思いますよ 」
「そうかい、では質問、主人公の電話するフリの時使う合言葉は? 」
「気をつけろよ、エル・プサイ・コン○リィ 」
「コン○ルゥな…… わかってんじゃんか 」
少しだけ嬉しいかも…… 今まで、この手のやり取りは竹やんとしかできないかった。まさか、高校生の女の子とオタ談できるとは。
「師匠は、どの子派ですか? 」
「ん〜 …… 全員じゃね? 」
全員、見どころあるキャラばっかりだろう? かと言って、これ言うと竹やんはいつも怒ってたな、誰か一人の嫁を決めるのが当たり前だ! って。
「うわぁ…… ハーレム狙いはさすがに 」
「なんで、そう、なるの! 俺が言ってるのは、見どころがある子しかいないってことだ 」
「上手く言いくるめる気ですね? 」
「師匠を疑うんじゃねぇの 」
「あっ、師匠って認めましたね! 」
「すぐに追い抜かれるから、大丈夫だ 」
そもそもゲームの腕なら、既に負けてる気が…… でも、たしか桜守はFPSは得意だが、他が壊滅的なんだっけか。
「無理です。さすがに、この量の物を揃えるのには時間と愛が必要ですよ! 師匠の愛は、尊敬します 」
「その言い方はやめろ、たしかに愛と金と時間はたっぷりとかけているが、人に言われるとなんか恥ずかしいからさ 」
警備員になってゲームに対して使える時間が増えたこと、それだけはあの校長は誇っていい…… 何様だよ、俺は。いや、被害者ってことを忘れるな。
「師匠はシャイですね! 私は、人に言われると認めてもらえたって、嬉しい気持ちになるのに 」
「そりゃ素直だからだ、俺はひん曲がってるから、何言われても真正面から受け止められない 」
「す、素直ですか…… 褒められました 」
「聞いてる? 人の話し…… 少し、プレイしたらちゃんと戻れよ 」
「了解です! 」
「いい返事だ 」
「あっ師匠、これってーー 」
「ん? 」
桜守が、ゲームについて何かを聞こうとしたんだろう…… しかし、答える前に寮のドアが開く。
思った…… 閉め忘れるとか、アホかよ。
「アンタ、いくらなんでも鍵は…… は? 」
「お、お嬢、おびょうはん(お嬢さん) 」
なんで、途中から噛むんだよぉ…… 俺は。
「師匠、おびょうはんって…… すいません郷橋さん、もう少ししたら戻ろうかと…… ひっ! 」
「師匠って…… は? 」
「お嬢しゃん、しょ、しょれは…… ひっ!」
俺まで、ひっ! を言わざる得ないな。だから桜守の気持ちはわかります…… あの顔は怖いよね。何度見ても慣れない、慣れちゃダメだけど。
今回も怖いなぁ…… 恐れる意味でも、恐いなぁ。
桜守よ、君は漏らすなよ? 俺は一回、あの子のおばあちゃんとセットで、あの顔をされた時は…… 少し漏らしんだからよ。
これ言えば…… 師匠も解任かな…… はははは




