75話 辛っ
三章 七十五話 「辛っ 」
鬱展開通り越して、いきなりのバットエンドが確定したかな…… 3日って、そりゃ無理も無理だ。
「終わったな、3日じゃ何もできねぇ 」
「お兄さん、諦め早っ! 」
「おい5人目、時間はあるんだ、勉強すればいいんだよ 」
「そうよ、言い出したならアンタも最後まで付き合って見せなさいよ 」
「宮田さんにも、わかるように教えてくれますよきっと 」
「いやぁ…… 小学生くらいの学力を、3日で高校…… しかもエリート校の、基準にまではさすがに無理でしょ 」
まぁ、巨○の星みたいにギプス付けての勉強と怖い親父がいたら、多少は様になったかもしれないけどね。
あ、でも俺にそんなことに耐える根性がないから、どの道ダメだわ。
「小学生って…… お兄さんそれは 」
「言いすぎじゃない、マジで数学とかわけわからん、国語や英語も勉強って形になると全然わからんと思うぞ 」
「たしかに、アンタって勉強できる感じしないもんね 」
「さすがお嬢さん、その通りっすよ 」
だてに、4年間くらい同じ職場で働いてるだけあるぜ。
「緋夏、コイツがこんなんじゃ、もうダメか? 」
「う〜ん…… となると、向こうは5人でこっちは4人って考えた方がいいですか 」
「まぁ待て、俺にも作戦がある 」
正直…… 作戦って言えるほどのものではないと思うけど。
「さすがお兄さん! 年上の知恵を貸してください! 」
「アテになるか? 」
「ろくでもないことは、ないわよね? 」
「私はちゃんと…… 半信半疑しますよ 」
「半分も信じてくれて、嬉しいっす…… 」
どうしよ…… まさか半信半疑も信頼されてるとはな、信頼……されてるのか?
「作戦内容は…… 」
「内容は? 」
「は? 」
「は? 」
「…… 」
「捨ての…… 大将作戦です! 」
「すごっ! …… え? 」
「…… 」
「…… 」
「…… 」
あれま…… これは予想より、反応が悪いですねぇ。
「よーし、もう一度言う…… 捨ての大将作戦です! 」
「…… 」
「…… 」
「…… 」
「…… 」
おやおや、ちょっと難しかったかな? 久野に至っては、ろくっっでもねぇ! みたいな顔してる。
「捨てのーー 」
「聞こえてるっての 」
「お嬢さん? 」
「聞こえて、理解して、失望して、それで無言なのよ、みんな 」
「良い作戦だと思うんすけど…… 」
これ以上ないくらいの、合理的かつ最も勝率が高い作戦だと思うんだけど。
「お兄さん…… それは作戦じゃない 」
「だな、まぁ期待してなかったけど 」
「宮田さん…… どこも良くないです 」
「えぇ…… そんなにダメ? 」
「ダメと言うか…… 情け無いというか…… 」
「その作戦内容ってさ 」
「たぶん、想像してる通りだと思うよ 」
「ならやっぱり…… アウトで 」
「よく作戦なんて言えたな 」
「えらい酷評だ…… 」
星一つのレビューより、酷い…… 俺の言い方が悪いのか? それとも見てくれが悪いの? 後者なら修正不可能なんで、ごめんな。
「だってさ普通に考えて、俺を一番強い相手に当てるのが、勝つ為に最善だと思うんだけど 」
「それって、私や先輩達じゃ生徒会長に勝てないって言ってるのと同じよ? 」
「それもですけど、お兄さんはそれだと…… 勉強や勝つ為の努力をしないですよね? 」
「勝てないって、思ってるわけじゃないですよ? ただ、部活の存続に繋げるには最善だと、思ってるだけっす 」
すいませんお嬢さん…… 実は勝てないと思ってます。だって、あの会長さん…… 偏差値80オーバーのモンスターっすよ。
「まぁたしかに、勝つって意味では最善じゃないか? 緋夏 」
「珠希…… でも、違うと思います 」
「桜守、言いことはなんとなくわかる…… 君は直向きなタイプだと思う。でも勝つ為なんよ、折れてくれ 」
つーかよ、最善って思ってくれてんなら…… あんな顔しないくれよ、久野さん?
「宮田さんを…… 会長に当てるってことですよね 」
「そうっすね、でも捨ての大将に来る前に、決着をつければいいんすよ 」
「会長の前に、3勝すればいい…… 」
「その通りっす、お嬢さん 」
聞けば、その対抗戦は5回戦中3回先に勝った方が、勝利という単純はルールだったよな。だからこの案を、出したんだ。
「お兄さんは…… ただ出るだけですか? 」
「だよ、恥かいてるやるから、応援してるぞみんな 」
感謝してくれよ? 出された問題を全問スルーの予定なんだから…… つまり、相手に嘲笑されることを受け入れるんだからな。
でも君らが勝てば、俺に出番こないから恥をかくことなく、円満に解決できる。
「だったら…… お兄さんも勉強してください 」
「え、やなんすけど…… 」
「私達はこれから、少しの間…… ゲームを我慢するのに、お兄さんだけ遊んでるのはズルい! 」
「なんじゃそりゃ 」
その理論だと、夏休み満喫してる在学生と試験勉強に必死になってる受験生で、大戦が始まるぞ。
「お兄さんも一緒に勉強します! 」
「いやでーす 」
「おい部長命令だぞ、従えって…… どうせ聞かないぞ緋夏は 」
「邪魔になるから、君らの為に言ってんの 」
「まぁ別にぃ、いいですよ? どうせ私達が勉強する場所は、郷橋さんのお家なので、お兄さんに直撃訪問すればいいんですから 」
「…… は? 」
桜守の言ってることを理解したくない…… それって、旅館で合宿的なことする気か。
「ですよね! 郷橋さん 」
「は、はい! 大丈夫ですよ 」
「お、お嬢…… お嬢さん? 来るんすか、これら 」
「これらって、お前な…… 」
「お兄さん、私達の扱いをもっとよくしてください! 」
「なら今後、俺の扱いも丁寧にしてほしいでっす! 」
まずは、大人に対する敬称を付けるところから、始めろ。でも、なんか今更感すごい気がする。
「無理! 」
「無理です! 」
「もう定着してしてるわよ 」
「宮田さんは、どこでも宮田さんなんですよ 」
「ですよねぇ…… 」
俺…… 俺は、馴染みやすいだけですぅ! 決して弱腰ってわけじゃないですぅ。
「一緒に道連れを楽しみましょう。お兄さん? 」
「道連れは…… 楽しくねぇだろ 」
「みんなで、目的の為に勉強するのって、楽しくないですか? 」
「若ければ楽しいのかもな…… 俺は違うぞ、もう若くないし、勉強とかしたくない 」
あの校長にも言ったが、何が悲しくて今から勉強なんてしなきゃならんのよ。
「お兄さん、充分若いですって…… 」
「お兄さんって、呼ばれるうちに勉強してかっこいいところ、見せてくれ 」
「その呼び方は、頼んだ覚えがないけど? それに、勉強したって、もう手遅れなレベルでカッコ悪い 」
「たしかに 」
「お兄さん…… 大丈…… 夫ですよ…… 」
「よくわかってるじゃない 」
「どの道…… 勉強できな…… 頑張りましょう 」
「はっはっは…… 辛っ 」
てゆうか…… 本当に旅館来んの? すげぇ嫌なんすけど、接客とかしたくない…… その場合は、警備員なんでってことで、俺は寮に籠る。
でも…… お嬢さんが、松柴さん以外を連れて来るのって、初めて見るかもな。だからって、賛成するわけじゃない。かと言って、反対する意味も権利もないしなぁ。
勉強…… しなきゃダメなのかな。




