71話 覚めたよ
三章 七十一話 「覚めたよ 」
お嬢さんや松柴さん、この2人だけでも一緒にお昼を食べるなんて珍しいのに、今は部活の先輩である、久野と桜守も一緒だ…… 多いな。
「この後はみんな授業あるの? 」
「私はあります…… だから、少しお別れです 」
「私もある 」
「初絵と私もある 」
「宮田さん…… 1人? 」
「そりゃいい、お嬢さんと松柴さんは2年生ですもんね、頑張ってくださいっす。久野と桜守…… ゲームしすぎだろ、少し学生らしくしとけって 」
桜守に至っては、今日の来て今まで部室で遊んでた。3年生って、めちゃくちゃ暇なの? って思ってしまったくらい。
「私や珠希だって、ちゃんと勉強してますよ!? 」
「そーそ、私らだって3年になる前は授業ばっかりだったさ 」
「へ〜…… お嬢さんと松柴さん、気をつけてくださいね、授業に出てると反動でこうなるみたいなんで 」
「お兄さん!? まるで私達が、怠け者みたいな言い方ですよ! 訂正を求めます。帰ったら、ちゃんと勉強してるんですから 」
「そうだよな、それが無かったらただのサボり魔だぞ。勉強ってあれか、受験ってやつ? 」
昔…… お嬢さんがここを受けるのに、必死にやってたような気がする。俺は受験とかしてたのかな。
「う〜ん…… 一応は四年制大学の受験を考慮してやってます 」
「私も大学基準でやってる 」
「先輩って、四年制行くんですか? 」
「まだ確定はしてないですけどね 」
「私、緋夏が決めたところと同じところに行きたいな〜 」
「そしたらまた、親友してくださいね! 」
「もち! 」
「まだ悩んでいい時期なのか? よくは知らんけど、3年ってもう決める頃なんじゃないの 」
よくアニメで言ってるし、それに先生も色々と対策とか練ってくれるもんだろ。
「だから勉強して、どんな選択でも後悔しないようにしてるんです 」
「だな、一応やっておけば、よっぽど偏差値の高いところじゃなければ受かるもんだし 」
「なるほど、よく考えてんのな 」
「見直しました? 」
「見直したよ、これから中学受験って聞こうかと思ってたのに、まさかの大学受験とはな 」
「中学!? お兄さん…… そのボケは今更すぎます! 」
「一応やっておきたかった、その見た目をいじらないと失礼だろって気づいた 」
桜守の外見は、とにかく小さい。初めて会った時だって、制服を着てなかったら、多分中学か…… 下手したら小学生? って誤解したレベル。
だからこそ、今このネタでボケをかまさないと後悔するかなってな。
「いらないことに気づかなでください! 私は、立派なレディなんでよ? 」
「はいはい、レデーなレデー 」
「絶対数年後に、驚きますよ! 未知数ですので 」
「緋夏…… 数年じゃ…… 」
「先輩…… 数年は…… 」
「不変の数年…… 」
「ひどい! 」
「ぷっ…… くふっ…… そうだな、あと数年な 」
「お兄さん…… 初めて見せた笑いですが、なんか複雑です! 」
結構…… 楽しめてんのかな? 冗談言い合える場所は中々どうして、見つからないもんだから。
全員、お昼を食べ終え…… 午後の授業に向かう
「それじゃお兄さん、部室の留守は任せました! 」
「ここくらいは警備できるだろ? 」
「ていうか、あんたいるなら役に立ちなさい 」
「なんの役なの、みーちゃん 」
「侵入者防止のオブジェクト? 」
「役に立たない…… かも 」
「わかりましたよ、授業頑張ってください。ちなみに俺も、何かあったらここを出ないといけないから、その時は許せ 」
「何かって…… 何もなくない? 」
「お嬢さん…… 一応、警備員なんで 」
「あっ、そっか 」
「ふっ、身内にも忘れられてるなんてな 」
「うるへぇ、いいから行ってら〜 」
みんな、各々の教室へと向かって部室を出て行った。
「…… あらま、静かになったな 」
騒がしい子達がいない、人がいない、それだけでこんなに静かなのか…… まぁ、多少廊下は生徒達の声で溢れてるが、ここは静かになった。
「ゲームするか、マンガの続きを読むか…… 」
仕事? をしながら、こんな素晴らしい選択肢を選べるなんて…… 数週間前なら、考えもしなかった。
「マンガ読むか 」
結局マンガにした。理由としては、単純にマンガ版の続きが気になったのと…… 1人でゲームをする気になれなかった。別に、アイツらに感化されたとかではなく、今はする気がないだけ…… だよな。そもそもゲームは、1人でするもんだし。
「…… 」
面白い…… 心の中は、マンガの展開でとてもテンションが高いが、それとは反対で現実の世界はとても静かに、とても遅く感じる。
1人でいることには、慣れてるはず…… というか1人で今までの人生やってきたんだ。何でこんなに…… いやいや! 違うぞ、絶対違う! 騒がしい子供がいなくなると急に公園が寂しく見える、きっとそれに近い何かだな。
あっ…… 1人でやってきたは違うか…… 旅館だと、色々と支えてもらってたもんな。
「はぁ…… 」
どうしよ、眠くなってきた…… 寝るか? いやいや、いくらあの校長でもそれは許せないよな。でも本当に眠くなってきた……
「少しだけ…… 」
何かあったら、田嶋さんがタブレットの映像を見て、起こしに来てくれるだろう。だから、ごめんなさい…… 少しだけ仮眠を……
ーーーー 何分寝てたのかな、目が覚める…… と、同時に髪を触る、人間の手の感触がある。
「あ…… え? 」
「あっ、ごめんなさい! 起こしました? 」
その手の主は、俺が目を閉じる前にこの部屋で数年後は期待しろって、無理ゲーを言った子だ。
「なんで…… ふぁ〜 …… 小学生が? 」
「お兄さん…… このまま永眠とか、どうですか 」
「まだ、その睡眠方法は先でいい 」
「まだ、小学ネタを引っ張ったのが死因ですかね 」
「だから、もうちょい先で頼むよ、その睡眠は 」
「冗談ですよ!? 」
「いやいや、いつかは人間そうなる…… ただ、もうちょい先がいいってだけ 」
「それなら頑張って起きてもらいます! 」
「へいへい、おかげで目は覚めたよ 」
さて、それじゃ聞くか…… このガキんちょ、一体何してたの!?
「聞きたいんだけどさ 」
「はい? 」
「何してたの? 」
「授業が、5分くらい早く終わったので部室に来たら、お兄さんが寝てました 」
「寝てたな 」
「サボってやがる! って思いました 」
「サボってごめんなさいって、寝る前に思いました 」
「あまりにも無防備だったので、つい髪を触りたくなりました 」
「君は、無防備だと髪を触りたくなるのか…… なら将来は、立派な変質者になることだろう。今のうちに警備員として、捕まえておくか 」
「好奇心に勝てませんでしたぁ! 」
「なんの好奇心だよ…… 」
まさか、現実で女子に髪を触られることがあるなんてな…… 昨日、ちゃんと洗ったよね。
「恥ずかしいから、触る時はことわってね 」
まぁ言われたら言われたで、絶対触らせないけど。触られることに慣れてないとは、言えないが。
「すいません…… 同年代の、男の人ってどんな髪なのかなぁって 」
どういう意味だよ、髪に違いなんてねぇだろ。よっぽど汚く見えたの? ショックで、永眠しちゃうぞ。
「髪は髪だ…… あと、同年代じゃない。俺の方がだいぶ上ですぅ 」
「でもほら! 男の人と女の人って、髪質違うじゃないですか 」
なんとなくわかる、男と女の匂いって違うよねって感じ? ホント違うよね、めちゃくちゃいい匂いする…… 女の人って。
「なら、お父さんに頼め 」
「お父さんのは、何回も触ってます。もう飽きました 」
お父さん…… 禿げないように、ケアはしっかりとしてくださいね。ていうか、いくらお父さんでもそんなに髪って触るもんなの? どんだけ、家族大好きなんだよ。
「そうかよ…… 特に違いは、ないだろう? お父さんとさ 」
「…… ちょっと違いました 」
「フサフサ? 」
お父さん…… まさか既に。
「お父さんもフサフサです! …… 気持ちの問題とかですかね 」
「気持ち悪い見た目で、ごめんなさいね。だから二度と触らせないように気をつける 」
「どんな解釈ですか!? そうじゃなくて…… とにかく新鮮でしたよ 」
俺は魚か…… いや、この場所は海草? かな。
「鮮度が落ちるから、二度とするなよ 」
「私の手って、そんなに汚いですか! 」
「違う…… 不意にやられると、対象がどんなお子ちゃまでも、意識するからやめろってこと 」
言っておくが異性としてではなく、俺は神経質…… なような男だからだ。
「トキメキ…… ですね 」
「うん、絶対違うから安心して 」
「本当ですか? 」
「俺は2次元寄りが…… ん? 」
廊下から…… お嬢さん達らしき声が聞こえてくる。
「珠希達も終わったみたいですね。お兄さん、このことは秘密ですか? 」
髪をペタペタ触られたって、言う方がおかしいよな…… 内緒にする一択。
「信頼してるぞ 」
「もちろんです! 」
放課後は何するんだろうな…… いや、決まってるよな、ここはゲーム部のだもな。
それから…… 少し照れたのは、絶対にバレないようにしないと。
そりゃそうだろ、いくらガキんちょでも女の子は女の子だ、照れるのは仕様だ。
あと…… 二度と寝ないぞ、この学校じゃ!




