69話 知ってるから言うな〜
三章 六十九話 「 知ってるから言うな〜 」
マンガを読んで、1時間半くらい経っただろうか…… 何も起きません。仕事って何だ? って思うレベルで、何もしてない。
こんな姿を見たら、女将さんは落胆するのか…… それとも、それも仕事だって言うのか…… どっちかな。
「順調か? 」
「まだ1ステージ目です。もう10回は、リトライしてます…… 」
まぁ、死にゲーだからねそれ。
「強いよな、初心者を完全に折りに来てるからそれ 、俺も最初はそうだったよ 」
「まさか…… クリアしたんですか? 」
「そのシリーズは、1から3まで全部クリア済み。もちろん、追加コンテンツ込みで 」
懐かしいな、最初は15回死んだ辺りで舌打ちで国家斉唱したよ。そのゲームは、折れなければ実はちゃんとクリアできるようになってる。
やってくうちに成長を感じる…… 俺も、成長したと実家できたし。途中脱落も結構いると思うが。
「やりますね、たしか1の裏ボスと3の裏ボスはヤバイって、聞きました 」
「そこまで行けたらむしろ、必ずクリアするまで諦めない精神になってるから大丈夫だ 」
「おぉ…… すごい説得力です 」
「だろ? 」
話しの途中で部室のドアが開く
「おー っす、終わったから来たぞ 」
この子にも、うぇって反応したいけど肉体的ダメージが怖いんでやめとこう。
だって、初顔面握力測定されたから。
「よっ、お世話になってます 」
「なんだ、来たのか 」
「居る場所がないんだよ、お見苦しいかもしれないですがお世話になります 」
「マジで場所ないのかよ…… まぁいいけど。馴染んでるじゃん 」
「高校生よりはコミュニケーション能力が高いんだよ 」
ほんとはね同士だからです、これに尽きる。
キャピキャピの女子高生に、近づけるほど俺は耐性がない。情けないとは思わない、だって世の中大半は同じだと思ってるから。
「なら、それ活かして別の場所を見つけることはできないかよ 」
「お兄さん、賢い子は嫌いよ。活かせない場所もあるってことです 」
「情けねー 」
「知ってるから言うな〜 」
俺が情けないのなんてな、俺が一番よく知ってるんですぅ!
「でも珠希、そのおかげで我らがゲーム部に大量の資料が来たんです! 来てくれて、大感謝ですよ 」
「さっきも言ったが、やらんぞ 」
「そこにあるの全部貸してくれんの? 」
「俺が退職するまでな…… 少なくとも、君らが在学してる間はあるから好きにやってくれ 」
「おー 、そりゃありがとう…… でもこの量は捌ききれないかも 」
「弱気なこと言わないくださいよ、このくらい私達なら余裕余裕! 」
「ほぅ、余裕ねぇ…… 良かったよ、まだまだたくさんあるから、よろしくね 」
自分じゃもう無理だと思ってるから、なのになぜ買うか? 決まってるだろ…… 発売されるからさ。
それに、中にはクリア済みもいくつかある。この子達がやってるのを見て、懐かしくなりたいのと、面白いなって共感してくれることに若干の期待を込めて。
「お兄さん…… どれだけ買ってるんですか 」
「緋夏、きっとお金を使ってあげる相手がいないんだよ…… 察してやれ 」
「あぁ…… なるほど 」
「ちげー から勝手に納得するのやめて。普通に趣味なのと、仕事で疲れて寝るを繰り返してくうちに、溜まっただけだ 」
「え…… 仕事してるんですか? 」
「仕事って…… 何のことだよ 」
この子達も、だいぶ言うじゃないか。
もしかして、松柴さんのSが開花したのってこの部に原因が。
「ひどいこと言うな、ここに来る前の話しだ。聞いたろ? 俺の本職は仲居だ 」
「そう言えば、言ってましたね 」
「そこでは、ちゃんと疲れてたんだな 」
「そうだよ、仕事してたの…… まぁいいや、とにかくその死にゲーは達成感があるから頑張れ 」
そう…… ちゃんと疲れる仕事だった、こっちは何もしてないのに疲れる…… なんでだろ。
「が、頑張ります! 」
「わたしは、このRPGやりたいな 」
ーーーー そしてまた、1時間半くらい経った
「やったぁ! 2ステージ目もクリアです! 」
「やるじゃんか、どうよ? 成長してる感すごくない? 」
「なんか…… 生きてるって感じがします 」
そこまで言ってほしいわけじゃない、それだと君は今までよっぽど鬱屈していると、勘ぐってしまうぞ。
「そりゃ良かった、慣れてくると死ぬのに耐性がついてくるだろ 」
「わかります、なんか…… 快感になってきてるんですよね 」
うー ん…… それもそこまで言ってほしいわけじゃない。それだと、今度はMに開花してるともとれるよ。
「緋夏〜 そろそろ交代してくれ 」
「あっ、ごめんなさい! いいですよ、何やるんですか? 」
「ネ○テューヌ 」
「私も気になってました…… でも、シリーズが多くて買えてなかったんです 」
「お、良いのに触れるじゃないか! それはとにかく、キャラが可愛い! ゲーム性も難しくないし、何よりテンポが良いんだ 」
「なるほどな、でもこれって過激なシーンとかはない? あるなら、緋夏にはまだ早い 」
「同い年ですよー 珠希。ちなみに私の方が、誕生日早いです 」
愚問だぜ、その質問は。その手のパッケージを見て、判断するのはよくない…… 見た目だけでエロいって思うなよ。
「心配ご無用、逆に俺は思う…… そのゲームは女子高生にこそススメられる! と。女の子達で友情を育んで、敵に挑む…… その敵もなんだかんだいい奴ってパターンがある。つまり、女の子版ジ○ンプだ…… たぶんな 」
うん…… 全然違うかもしれん。
「女の子達で友情を育むか…… 悪くないな! 」
なぜそこだけ反応した? 俺は、過去の君の発言に少しだが疑いを持っている。
だけど、今回も聞かなかったことにする。
「ま、楽しいと思うし…… それに時間のかかるゲームじゃないから、わりとすぐにクリアできるはずだ。やり込まなければな 」
やり込むと大抵のゲームは、しんどくなる作業がいくつもあって、終わりが見えない。
「お兄さん、そのマンガは面白いですか? 私が持って来てる…… おススメなんですけど 」
「ん? ああ、面白いぞ。だってこのマンガ、一応原作持ってるし、アニメも見た 」
「そうだったんですか!? 嬉しいです、それ知ってるのいないんですよ、うちの部 」
そういえば…… 原作持ってけど、読むのに時間がかかるから読めてなかったな。なんてファンだよ、全く。
マンガ版は、あるの知ってたけど買っていなかった。だからこの部室にあった時は、読んでる同士がいる! と、同時に読めてラッキー って感じだ。
「そりゃ良くないな、この面白しさを学校中に伝えるのが部長としての務めだろ? 」
「え〜 全然違うと思いますが…… 」
「なら、まずはこの部に面白さを伝えるか…… その前に8巻取ってくれ 」
「了解です! 」
部長さん…… たしか桜守さんだっけかが、俺に本を渡し、それを手に取る瞬間…… またドアが開く。
「こんにちは先輩、今日はお昼こっちでーー 」
「こんにちは先輩…… ん? 」
「2人とも、こんにちは! 」
「おじょ…… おじょさぁん…… 」
おいおい、おじょさぁんってなんだよ……おじさんって聞こえてもおかしくないぞ。
「…… 馴染むの早っ 」
「先輩を…… アゴで使ってる? 」
「馴染むの早いは、そこでゲームしてる久野さん? だっけ? にもう言われました。それから、アゴで使ってないっすよ 」
「はい! 同士がさらに同士になったんです! 」
「久野さんじゃない、久野でいい…… さん付けはやめろって 」
「えっ、あぁ…… うん 」
「何、お邪魔しちゃいました? ごめんねなんか 」
「いや…… なんで謝るんすか? 部活来るのは、普通なんじゃ 」
「たぶん、みーちゃんの意図を読めてないですよ 」
「い、いいって初絵! 解説はなしで 」
わかるわけないっすよ…… 攻略本出してください。
「そういえば、もうお昼ですね…… 珠希はどうします? 」
「私は、パンあるから 」
「私もお弁当持って来てます 」
「私もお弁当です 」
「俺は…… 昨日食えなかったカップ麺…… お湯ありますか? 」
食堂は行かない、聞くところによると値段が高いらしい、そんな美味いもん食うほど働いてないのと、人が多そうで嫌だ。
良かった、昨日のカップ麺…… 食べれなかったから今日こそはと思って、持って来たんだ。
あとは、お湯を沸かす場所を教えてください。




