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すんません 、「俺」は、記憶ないっす  作者: 志奏
三章 「果つることなき想いは再びに」
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66話 尊敬しています



三章 六十六話 「尊敬しています 」



夕食を済ませて、寮へと戻る。


「うはぁ…… サボってたけど、お疲れさんだよ俺 」


夕食中に散々と愚痴っぽいことを、言った。お嬢さん達は愚痴を言うほど、働いてないだろって言ってたが、そんなことはないよ? 一応は気を配って見てたし。


「女将さん、後で電話するって言ってたけど…… 何も話せることがないんだよなぁ 」


どうしてもって言うなら、俺のトイレに隠れる際の早技を教えてあげようかな。


「…… 少し寝るか 」


もし、かかってきても折り返しかけ直すから大丈夫。



ーーーー 着信がかかってきて、目が覚めた


くっそぉ、自分の目覚まし体質が憎い。あんまり寝てない気がする。


「は、はい…… 」


「私だ。美羽と話しが終わってね、次はアンタと話したいんだが、来れるかい? 」


行く以外の選択肢がないと思うのは、内緒だよね。


「全然大丈夫っす。今から伺えばいいでしょうか 」


「そっちが来れるなら、頼む 」


「伺います 」


「待ってるよ 」


通話終了っと。


「2、3時間寝たのか…… どうしよ、全然疲れが取れないわ。何もしてないはずなんだけどな 」


さて、今から行くって言ったし、支度して出るかな。夜のお話し会は、これで二度目か。




ーーーー 若干の申し訳なさを、感じつつ女将さんの待っている居間まで、向かう。申し訳なさとは、たぶん…… サボってたことに対する、罪悪かな。


「お待たせしました、入ってもよろしいでしょうか? 」


「開いてるんだから、入りな 」


「はい…… あっ、一応閉めておきますか? 」


盗み聞きをするような輩はいないが、念のためを忘れないのが臆病者の特権だ。とてもいいことだからね。聞いても、面白い話しはないが。


「さて、サボってた感想はどうだい? 」


いきなりかぁ…… お嬢さんかな? それとも、俺の言葉を真に受けてのことかな。


「正確には、サボってた風に見えるけど…… 実は、しっかりと仕事はしていたパターンです 」


嘘は言ってないよね。


「あぁ、聞いたよ。アンタは機械を眺めてるだけでいいそうじゃないか、それで立派な給料をくれるなんて、いい天職を見つけたか? 」


「天職とは程遠い…… もしそうでも、この天職とやらには興味がないので、すぐ転職しますよ 」


「仲居は天職だってのかい? 」


「少なくとも、興味と未練がまだまだ、たっぷりあります 」


「そうか、なら卒業したらすぐに再就職だ 」


「そのつもりです。聞きたかったのは、天職かどうかってことですか 」


もし、お許しを頂けるなら明日にでも退学届け、退職届けを出します。


「そりゃ、無理に行かせたからね…… やっていけるかどうかは、気になるよ 」


「無理になんて…… 最後は、自分で決めたんで 」


そーそ結局、チョロインだったってことっす。


「一日で漢らしくなったんじゃないか? 」


「ご冗談を、漢らしさどころかすぐ逃げる女々しさに磨きがかかりました 」


「そんなのは、前からだろう 」


「たしかにっす 」


てことは女々しさ通り越して、そのものになっちゃったかな。




「さて…… 一番聞きたいことを聞く 」


なんだ? 結構話したと思うけど。


「はい…… なんでしょうか 」


「上手くやっていけそうかい? 」


なんだろう…… 似たような、ことをさっきの会話でしたつもりだけど、とても優しく聞こえる。


「え、あ、はい…… ご心配をおかけすることは、ないかと 」


「最高の一歩手前だ、その返事の仕方は…… だが、まぁ良かったよ 」


不安…… いや、懸念してることはある。お嬢さんや松柴さんが、紆余曲折はあったが結果として、良い変化もたらしたあの部活…… それに暗雲が少し、立ち込めていること。


でも、これを女将さんに言ってどうなる? あの校長と知り合いなら、口添えを頼んでみる…… そう思ってたのかもな。


だから、そこまで心配することなく、機会が来たらなんとかなると思ったんだ…… 言うくらいなら、言ってみるか。


「あ、あの…… 一つだけ、お願いがあるのですが…… 」


「うん? なんだい頼みって、ロクな願いは聞きたくないよ 」


「それは、受け取り方次第でロクでもないか…… または価値あるものか…… 分かれると思います 」


「…… 言ってみな 」


あ〜 …… なんでこんなことを、言う気になってんのよ俺は…… 積みゲーがそんなに、大事かな。大事だな。


「お嬢さんの部活が、ちょっと厄介なことになるかもなんです。でもそれは、あの校長から一言もらえるだけで、事なきをえます。」


「それで? 」


「だから…… その…… 女将さんから一言、あの校長にーー 」


「それはしない 」


あぁ…… 俺もバカだ。元々だけど、よりひどくなった。


「…… なぜですか 」


「アンタなら、わかると思うが? 」


はい…… よく知ってます。


「なぜ…… でしょうか 」


「はぁ…… 孫がいる部活だからって、学校さんに文句を言うアホがどこにいる 」


そうだ…… あなたの妥協を良しとせず、公平に決めることのできる判断力、その思考、若輩ながらも尊敬しています。


「せっかく、お嬢さんと松柴さんがやると決めた部活ですよ 」


もうやめろ、自分で憧れを汚すな…… 穢すな…… 貶めるな。


「なら聞く、アンタから見て…… その厄介なことには、何か悪事でも関係してるのか? そうなら、大人は手を貸す 」


「悪事…… は、ないです 」


たしかに悪事はない。あのツンドラ娘が、言っていること自体には進学校として、名誉ある学校としての立場を考えてのことだと言われたら肯定するしかない。


あの部活は、ほんとにゲームしてるだけだった。初対面なのに話しは聞かないわ、年上に敬称も使わないわ、失礼極まるガキンチョ達だ。


だけどなぁ…… 今日、初めて行ったのになんでか安らいでいる自分がいたんだよ。ま、俺も好きだからな…… ゲーム。それにサボれるし。


「なら、私が口聞きをするのはズルだ。それに…… アンタも学んだろう? あのババァは、聞かないよ 」


へへ、たしかに…… 聞きそうにないな。


「一日で分からせてくれましたよ。黙って見る他に、何か御助言を頂きたいです 」


「助言? 相手が真っ当なら、こっちも真っ当で対抗する。それができないなら、次を考えるしかない 」


「それが一番の、問題なんです。あの学校…… どうやら、お勉強対決を制すれば多少のことに融通をきかせるって、言ってたんすよ 」


「勉強対決? アッハッハ! 変わってないね、あそこは…… そうか、なら勉強して勝てばいいんだ 」


? 変わってない…… なんのことだろう。


「無茶っすよ、あの校長のお孫さん…… とんでもないお利口さんなんです 」


「なるほど…… アレの孫が関係してるのか、ならやっぱり負けじと、努力してみな。アンタは頭いい方だろう 」


「買い被りじゃなく、妄想になってますよ。今の今まで、お勉強なんかしたことないです 」


昔は知らん、だけど俺のことだ、どうせ深夜までゲームして次の日、どう病欠するかを考えてた学生だったはずだ。


「結果が出るまで努力しな、ダメならその結果を見て、どうするかを考えるしかない 」


ここまで真っ直ぐな言葉を受けると、俺みたいなねじ曲がってる奴は、何も言い返せないし…… 言うのが悪にすら感じる。


「女将さんは、未来永劫そのままでいてください。一生付いていけます 」


「気持ち悪いねぇ、頼みを断られたのにそれを言うかい 」


「自分自身の浅はかさと、愚かさを知るには不変の最高と交わる必要があるんですよ 」


「何言ってんだか…… まぁ、アンタがどうにかしたいってんなら、邪魔はしないで見守ってやる 」


「貴方に見守ってもらう、これ以上ないくらいのお言葉です 」


「口達者め、明日も仕事だろう? 呼んで悪かったね、もうお行き 」


「はい…… おやすみなさいっす 」


「おやすみ…… 凛誉 」


「はい? 」


「頑張りな 」


「ほどほどに、頑張ってみます 」


「頼りない返事だ 」


「初志貫徹っす 」



おいおい、俺の初志貫徹ってこれだった?

まぁ、何事もほどほどにが大事だと思うけどさ。


女将さんと話せて良かった、断られただけだがとても良い時間だったような気がしてる…… お嬢さんの言う通り、ドM爆誕かな?


明日も仕事ね…… 早く、こっちに戻ってきたくなっちゃったよ。

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