65話 ぺこぺこです
三章 六十五話 「ぺこぺこです 」
バスで旅館までの道中、ゲームでのお嬢さんのこと、松柴さんの人見知りが少し改善されたこと、色々と聞いた。やっぱり、楽しそうにやってるじゃないか…… 女将さんも、喜びそうだ。
あと感じたのが、バスから見る夕陽も…… 中々良いものだ。
ーーーー 旅館に着く
「ただいま〜 」
「ただいまです…… 」
「初絵、ただいまでよくない? 」
「これが慣れたんだよね 」
「ただいま、戻りましたっす 」
「おや、お帰り。色々と大変だったって顔してるねぇ、あんたら 」
出向かえ一番が女将さんか、そうなんすよぉ! めちゃくちゃ大変でした〜
「ただいま! ほんとに、大変? 焦った? のかな、とにかく聞きたいことが、いっぱいあるよ 」
「そうだろうね、まぁ後でゆっくり話そう 。初絵は、何か聞きたいことないかい? 」
「わ、私は…… みーちゃんから改めて聞ければ、大丈夫です 」
「そうか…… それで? あんたは、聞きたいじゃないたくて、言いたいことがありそうなツラだ 」
「さすがっすね、でも…… 子供に対しての愚痴なんて、みっともないんで言わないです 」
「ふぅん…… 凛誉、私に何か言いたいの? 」
しまった! ちょっと誤解を招く言い方だった、お嬢さん…… 相変わらず睨みがハンパないです。
「違いますよ! お嬢さんにじゃなくて…… 別の子ですよ 」
「ごめんなさい…… 私、何か…… しま…… した? 」
ごめんねぇ! 君でもないんだよ、松柴さん〜
「全然違いますよ! なんか、こっちこそごめんなさいっす。お二人と、ゲーム部の子達でもないです…… とにかく違うっす! 」
名前を言わないのは、知らないと…… 陰口みたいで、なんかね。あっ、苗字は聞いたっけ。
「なんだい、仕事の愚痴じゃないのかい? 」
「仕事なんて呼べるほどのこと、してないんで何も言えるわけないですよ 」
マジでなんもしてないんすよ。困ったくらい。
「ダラけてたら、しょうちしないよ? 」
「ならぶっ飛ばされちゃいますよ。でも、言い訳としては、校長が公認したんすよね 」
「あの頭でっかちが? アッハッハ! そうか、それは予想外だ…… 変わるもんだ。その辺りも、ゆっくり聞かせておくれ 」
「私、今から支度して配膳は手伝うよ! 」
「私も行きます 」
「助かる、夜食の時にまた 」
「うん! 」
「はい 」
「俺は…… 掃除でもやりますか 」
「フン、そんなに働きたくなったか? 」
「あんな内容の仕事だと、こっちが鈍りそうなんで復帰した時に、支障がでると厄介になるかと 」
厄介どころか、サボりすぎて…… 学校から出たくない引きこもりになっちゃうかもしれない。
「熱心になったねぇ、こりゃ行かせて正解か? 」
「元々…… ではないですけど、行かせたことは不正解だと思いますよ 」
「なら正解に変えるまでだよ。掃除も助かる、しっかりとやっておくれ 」
「了解です 」
それを正解には変えさせないです。変わったら、俺があそこの仕事に愛着がわいたことになる。死んでもごめんだ。
ーーーー 掃除もひと段落して、夜食をご馳走になりに行く。
「お疲れ様っす、今日はなんのご馳走でしょうか? 」
「おぉ! ボウズ、帰ってたのか! 」
「帰ってきて、掃除だけやらさせてもらいました 」
「おいおい、惚け魔がそんなに仕事して大丈夫か? 今日は、向こうの初仕事だったんだろ? 」
「惚け魔はこっちで卒業して、またあっちで入学したみたいなんすよ。学校じゃ、ロクに仕事してないです 」
あっちだと惚け魔は卒業しないで、永遠にお世話になりそうだから、怖い。
「なにぃ!? そんな奴に、上手いもんは食わせらんねぇな〜 」
「マジっすか…… なら、次から本気だせたら出します。」
「まぁ何事もなかったなら、いいけどよ 」
いやん、良い人。だが俺はノンケだ。
「なさすぎて、することがないからサボってたんです。挙句に、今日買ったカップ麺を食わずして持ち帰ってきたんで、お腹ぺこぺこです 」
食えなかった〜 せっかく、200円もだしたのに。
ま、カップ麺だから別の日でも大丈夫だけどさ。
「カップ麺? そんなんで、警備なんて務まるのか? 結構体力を使うんだろ 」
「初出勤の感想としては、体力より精神を使いますよ。女子が通るのを感知して、トイレに逃げるんで、俺は 」
「宮君…… マジで言ってんの? 」
お、今日は一緒に食うのか。ていうか、いきなり出てくんなビックリしちゃうよ。
「竹やん、前も言ったが…… 極度のヘタレをナメるなよ 」
「乙です…… 」
「ま、ゆっくり聞かせてやるよ 」
「ボウズの情けねぇ話しを、聞かなきゃダメか? 」
「女の園っすよ? 聞きたいことありません? 」
どうしよう…… 考えてみたら、何も話せるようなことがない。
「オッチャン…… 熟れた女が好きだからなぁ 」
「ぼ、僕は…… ちょい気になる 」
「とりあえず、まずは並べるのを手伝え! 」
「うぃーす 」
「え、僕も? 」
「俺だけにやらせるのは、無しだろ常考 」
「宮君…… 死語だお 」
「え、そなの? 」
うそん、いつの間にか…… 死語になってたのか。でも使おう、好きだし。
配膳を並べてるうちに、女将さん、お嬢さん、松柴さんが来た。
「さて揃ったね、それじゃいただくか 」
「「「「「いただきます! (まーす) 」」」」」
「宮君、それで感想は? 」
「ん? 美味しいけど 」
「違うよ! 女子校って…… 匂った? 」
竹やん…… その質問の仕方は、ひどいわ。
「竹河さん、何言ってんの? 」
「ち、違いますよ! 宮君がぁ教えてくれるって…… 言ってたんですぅ 」
「どういうことかしら…… あんた、やっぱり変態することが目的? 」
竹やん…… お前いつか、覚えてろよ。
「竹やんは妄想力が逞しいから、誤解したんすよ。俺は、女子校の感想を教えるって言って…… 」
今気づいた…… それもそれでアウトでは? と。
「感想? 何それ…… どの子を食べるかってこと? だとしたら、去せ…… 教育が必要だわ、女将。」
お嬢さん? 今、去勢って言いかけませんでした? そんな言葉忘れなさい。
「初耳だ、アンタ…… 修行し直すかい? それとも、美羽の言う通り…… 病院かねぇ 」
こえぇ…… 女将さん、こえぇ……
「宮田さん…… やっぱりク…… いや、ゲス…… ダメだと思います 」
松柴さん…… クズとゲスって、言おうとしてませんでした? ゲスは聞こえたよ。 明るく? なってきたのは、嬉しいけど…… 反面、悲しさもあるよ。
「ボウズも男ってことか! 」
え、俺は男ですよ? なんだと思ってたんです?
「ま、宮君のはデフォだからオケ 」
こいつ、マジでぶっとばしたい。
「全然違うんで、安心してください。俺が言ってるのは、普通の学校との違いですよ。」
「それなら先に言いなさいよ 」
えぇ…… 先走って皆さんで誤解しただけでは?
「それで宮君、感想は? 」
「何も、特に何も無し。竹やんの知りたくてしょうがない、匂い? とやらも別にしない。強いて言うなら、静かな学校だったよ 」
匂いに関しては、前行った時に感じた。
「そんな…… アニメじゃ匂いがするって言ってたのに 」
「他の女子校はするんじゃない? 」
「そんなに静かだった? 」
「静かだったと思います。もっと、学校って騒がしいと思ってたんですよね 」
「そりゃうちは、厳しいからね 」
「うん、特に最近は生徒会長が…… ね 」
「お嬢たちの会長さんは、さぞ立派なんだな! 」
「…… 」
「…… 」
「…… 」
やべ、俺まで言葉が出ない。
「え、オッチャン…… なんかまずった? 」
「い、いや…… ま、まぁとにかく新鮮な一日でしたよ。頑張ったせいか、ご飯もガツガツ食べちゃいます! 」
立派どころか、独裁者コース進みそうで心配なんですよ、あの子。社会に出てから、ぼっちじゃ可哀想じゃん? いや、あの子なら進んでぼっち歓迎とか言うな。
「そんな頑張ってないでしょ…… 」
「それは秘密で、お嬢さん 」
「あとでじっくり、聞かせておくれよ? 」
「は…… はい 」
怒らないでくださいね、俺だってそれなりに頑張ったんすから…… 何を頑張ったけ?
こうしてると、何かの間違いだったような気がしてくるよ、警備員なんて。
女将さんには、愚痴りたくねぇ。それは女将さんに、不安を与えそうで嫌なんだよ…… 考えすぎかな。




