64話 眩し……
三章 六十四話 「眩し…… 」
大変ご苦労な会話だった。何が悲しくて、今から勉強とやらをしなきゃならんのよ…… 算数から教えてくれよ誰か。
「疲れた…… 」
校長室を出て数歩、歩いたら勝手に言葉が漏れる。
「お嬢さん…… まだ待ってんのかな? 待ってるよなぁ、たぶん 」
何分くらい待たせたかな、自動販売機でジュースでも買ってやるか。いや、買わせてください。
ただ廊下を歩いてるだけだが、とても不思議な感じだ。まず、学校が新鮮っていうのは本当にそう思う。それから…… 羨ましいのかな。
そう思ったって、責めないでくれよ、だって学生の時の記憶が無いんだもんね! ま、仮に女の子で学生だったとしても、この学校は嫌だ。
「うっ、眩し…… 」
歩いている時に、窓から夕陽が差し込む。
「へぇ…… 」
悪くない…… ここの生徒達は、真面目なのか誰も残っていないのだ。俺の学校に対するイメージは、放課後といえば、軽音! とかで、練習中の音が聞こえてくるのかなと思っていた。できれば、可愛い女の子達がティータイムとかしてたら満点だ。
だけど、この学校からは何も聞こえない。
ただ、夕陽を眺めながら階段を下りるだけだ。
ーーーー 階段を下り、お嬢さん達が待っているところに行く。
「すいません、待たせましたね 」
「いいわよ、あんたはモテないしデリカシーもないから、それでいいんじゃない? 」
なんだよぉ…… 女を待たせる奴は最低ってやつ? だから帰っていいですよって、言ったじゃん。
「はは…… その通りっす。んじゃ、帰りますか 」
「そうね、帰ろう初絵 」
「うん 」
「あっ、その前に待たせたんでジュースでも飲みます? 」
これでご機嫌をとる作戦。
「喉渇いてないから、大丈夫 」
「わ、私も…… 大丈夫です 」
「了解っす 」
ダメだった、全く…… この学校もアイスの自販機くらい、置いとけよな。
ーーーー 歩いて、バス停の場所まで着く
「あと何分くらいだっけ 」
「10分くらいで着くって 」
「2人共、この時間まではいないですもんね。ほんとすいません 」
「別にいいって、私が待ってるって言ったし 」
「助かります 」
「…… 」
「…… 」
「…… 」
なぜだか、沈黙が続いてる。なんで?
もしかして2人の間に何か!? って違うな…… おそらく俺がいるせいかな。ごめんね、女子トークしづらいよねきっと。
「ねぇ 」
「は、はい? 」
沈黙を破ったのはお嬢さんか…… 寂しくなっちゃった?
「凛誉…… 」
あら、呼び方が元に戻ってますね。
「はい 」
「ウチの仕事辞めたの…… 」
「みーちゃん…… 」
おぉ、それか…… マジで女将さんに聞いてほしい。その方が何も、誤解なく伝わると思う。でも、そうだなぁ…… 俺から言えるのは変わらずーー
「辞めないですよ。こっちの仕事なら、今すぐ辞めれますけどね…… 」
「でも…… 」
「詳細は女将さんから、聞いてください。一つ言っておきますけど、俺がいたいと思ってる場所は決まってるんで、変な心配はしないでください 」
「はぁ!? 別に心配はしてない! ただ…… 若い戦力が無くなるのは、旅館としてどうかと…… です 」
なんで敬語になるんすか…… 寒気がするので、今すぐやめてほしいっす。
「戦力として見てくれていたのなら、光栄です。俺が務める期間は、お嬢さんや松柴さんの卒業まで…… なんで、次期女将さん…… 一緒に卒業しましょう 」
「はぁ…… 帰る場所は、ちゃんと覚えておきなさいよ 」
「忘れないです。それに下手したら、クビになって早く卒業できるかもしれないんで、俺は 」
「それは退学じゃない? 」
「たしかに、いや…… 退職っすね 」
だいぶ素行不良をしたつもりだが、あの学校…… なんて優しいんだろう。でもその優しさはいらないし、微塵も望んでない。
「宮田さんは、これからもゲーム部に? 」
「そのつもりっす。俺の持ってる積みゲーは量が多いんで、お二人も楽しみにしててください 」
懸念するべきは、あの会長さんが直接手を出してきたらだが…… ま、バァさんにも言った通り、その時に考えるか。
第一、俺のできることが何もない。勉強勝負なんぞになっても、ただ恥を晒すしかできない…… 休日に中学生の習うやつでも、やっときゃ良かった。
ゲームやアニメの問題が出れば、ワンチャンあるけどな。
「先輩達に惚れたとか言うなよ? 」
やだぁ、女子ってこういう会話好きね。
それに人の話しを聞かない、リアルロリと人の話しを聞かないで、顔面握力測定をするやつに惚れるほど、歪んだ性癖は持ってない。それに……
「俺は二次元ーー 」
「二次元寄りの子がタイプ、でしょ 」
「さすがっす 」
「何回も聞いてるからね 」
「たしかに、何回も聞いてるね…… 実際に二次元寄りの子って、どんな子です? 」
ど、どんな子!? どんな子か…… どんな子?
「そうっすね…… 今度、好みの子がいるアニメを布教しますのでお待ちを 」
「面白いやつにしてよ…… そ、それからさ 」
「どうしました? 」
「先輩達と同じように、私と会話できない? 」
え、会話してるじゃないですか…… どういうこと?
「会話…… してません? 」
「宮田さん…… そうじゃないと思いますよ? 」
「どういうことっすか、松柴さん 」
「え、あ、あの…… えっと…… 」
「キモいから、初絵に寄るな! 私が言ってるのは…… 先輩達と話す時みたいに、もっとフランクに話せないかなって 」
ちょっと寄っただけなのに、キモいって…… これが俗に言うイジメなのか! 違うって信じてます。
さて、どう言ったものかな……
「そうですか? これはこれで、かなり親近感ある話し方だと思いますよ。お嬢さんや松柴さんは、一緒にいる期間が長いんで、簡単には変えられないっすよ 」
「親近感…… 長い…… か、そっかそっか。でも、いつかさ…… いつか慣れたら、あんな風に話してみたいかな 」
「みーちゃんって、そういう体質? 」
「お、お嬢さんって…… Mっすか 」
「初絵? あんたは知ってて言ってない? それから凛誉? そっちを、新生ドMの爆誕にしてやろうか? 」
「ご、ごめんね! 」
「お嬢さん…… 調子に乗りました。ほんとごめんなさい 」
何する気ですか…… 調教? べ、別に興奮なんかしないんだからね! 恐怖しか感じてないんだから! マジで恐怖しかないっす。
そうこうしているうちに、バスが来た。
「あっ来たよ、帰ろっか 」
「定期出さないと 」
「俺は、定期無いんすよね…… 作ろうかな 」
「これからの為にも、作れば? 」
「ですね、作っておきます 」
どこで、定期って作れたっけ? 役所? バス会社?
どちらにせよ、メンドくせぇ。
やっと帰れる…… 今日は、愚痴りたいことがいっぱいある。誰か聞いておくれ〜




