63話 前代未聞だと思いますよ?
三章 六十三話 「前代未聞だと思いますよ? 」
いよっし! その報告書をしかと見よ!
書いてあることは、たった一つ…… ゲームして遊んでました、だ。これなら、アンタでもさすがに許せないだろう?
「…… 」
「わかったでしょう? 俺には、こういうの向いてーー 」
「よくやってくれた。仕事の内容は、把握してくれたようだね 」
「そうでしょう? …… って、え? 」
またか、またこのパターンなのか?
普通に考えたら、お前はもうクビねって言う場面なはずなに…… なんで、言われない?
「なぜ、不思議がる? 何もおかしなことはない 」
いやいや、おかしなことだらけですよ。
「え…… だって、ゲームしてただけですよ? 」
「そうか、だが…… 何も校内で異常は無かったのだろう? なら、それ以上に私の求めてる結果はない 」
「それでもーー 」
「君は忘れたのか? 私は何かあった時に、迅速に対処してくれれば、どこで何をしてようと構わないと言ったばすだ 」
たしかに言ってた…… でも、マジで許すかよ。
こりゃ…… そっクビは、諦めるか。
「そうですか…… ならこれからも、このスタンスでやらせていただきますよ? 」
「好きにすればいい。今日はご苦労だった、明日からもよろしく頼むよ 」
「…… よろしくお願いします 」
しかしここで俺は、あることを思い出した。
それは、ゲーム部についてのことだ。
桜守と久野が言うには、生徒会長さんに目の敵にされてるって言ってたな…… 下手したら、廃部になるんじゃないないか? それは困る、そんなことになったら俺のサボる場所がないし、積みゲーは片付かないしで良いことが一つもない。
今ここで、俺がこの校長に頼めば多少は融通を利かせてくれるのでは? と思った。上手くいけば、あの部活の部員やお嬢さん達が、俺に感謝して年上を敬う態度に出てくれ…… るわけないな。
でも、一応は言っておいてやるかな。
「そうだ、一つだけお願いがあるんですけど…… 良いですか? 」
「お願い? 常識的な範囲なら、聞こう 」
「たぶん範囲内です。ここの生徒会が最近、目を付けてる部活があるんですけど、考えを改めるように言っていただけませんか? 」
「その部活とは、君が入り浸ったというゲーム部とやらのことか? なら、諦めなさい。私が口を挟む道理がない 」
「道理がない…… っか、ならせめて妨害まがいの行為は謹んでもらうように、言ってください 」
「妨害行為? 」
「入部希望者に対する脅しや、部活紹介の張り紙の撤去、これらは妨害行為でしょう? おかげで、空気が重かったですよ、その話題になった時 」
「それは、何か証拠があって言っているのか? ただ部員達が被害妄想しているだけではないのか? 」
お、なんか政治的な言い回しだな。
さて、なんて返したものか……
「なるほど、たしかに証拠をポンって出すことはできないです。それなら…… 俺からのお願いです。あなたから、生徒会に口添えしていただけませんか? 普通に活動してるだけだから、あまりちょっかい出すなって 」
「すまないが、それはしない 」
「フッ、しない…… か、できないじゃなくて? 」
「そうだ。特定の部に校長が肩入れするなんて、前代未聞だと思うが? 」
「こんな男を、こんな敷居の高い学校に招くのも、充分に前代未聞だと思いますよ? 」
「それは、私個人の要望だ。校長としてではない 」
「そうでしたね、ならこっちの要望も一つくらい聞いてくださいよ。あなたの言うこと聞いて、これからもほどほどにだったら…… 働くんで 」
ほどほどにな…… 聞き違えるなよ? 最低限のことしか、しないから。
「何をそこまで、ムキになる? 今日初めて行って、会って、それでそこまでになるのか? 」
「別にムキになってはないですよ。単に居やすいだけってことです 」
「なら他に探せばいい、いくらでもあると思うが? 」
「それがないんですよ。ゲームできるってだけで、俺は選んでるので 」
「探してないだけだ、ゲームなんぞはやらなくても別にいいだろう? そんな内容の部活だから、あの子が潰したがるんだ 」
はぁ、やっぱり似てるよ…… あんたら、孫とバァさんで、言ってることがほぼ同じだ。
「なら何故…… 認可されてるんです? あの部活。そういうなら、初めから認めなければ良かった 」
「私が全て把握していると思わないでおくれ。それに、部活の申請自体に抜け道があって、それをその子らが利用してたら、私はわからないよ 」
「ずいぶんとぬるいですね。だから、この前みたいなことが起こるわけだ…… 学習をしてない 」
「面白いよ、やっぱり…… 君は辛辣な態度をとると決めた相手には、とことん貫こうとする。だが、君がいくら吠えても…… 何もしないよ。すまないが 」
クソバ…… いや、使いたくなかったけど、一つカマをかけてみるか。
「俺が…… 今すぐ辞めると言っても? 」
この校長の言う通りだ、何をムキになってんだか。
「それこそ脅しでは? まぁいい…… その問いに対しての答えは、変わらずノーだ。だが、もしそれが理由で辞めるなら、君を送り出した女将はさぞ落胆するだろう 」
痛い…… 痛いところをつかないでちょうだい。
「その女将さんの孫がいる部活ですよ? 」
「そうか…… それでもだ 。君がやけにこだわるのも、それが理由か? 」
「それだけじゃない。まだ、一日ですけど…… 居心地が良かった…… かな 」
なんて言っても、積みゲーを片付けられる! しかも、それで仕事も片手間にできる! なんて素晴らしい。
「居心地…… か。なら一つ、この問題に対してのアドバイスを上げよう 」
「なんです? 仕事を熱心にやれとかなら、マジで今すぐ辞めます 」
「そんなんじゃない…… 勉学で、相手の異議を押さえつけてみせなさい 」
どこがアドバイス? そんなのは、アドバイスとは言わない。死刑宣告だろ。
「学力対抗勝負とやらですか? 」
「ほう、知っていたか…… なら話しは早い 」
そりゃ、さっき聞いたからな…… 血の気の多い学校だなって思いましよ。あなたソックリ。
「それって遠回しに自慢してます? 自分の孫が、優秀であることを 」
「邪推だ、そんな意図はない。この学校特有のルールみたいなものさ、学力をもってすれば、大抵のことには融通を利かせようって 」
「ハハ…… 82の偏差値って、モンスターをどう相手どるんです? 聞いたことがないですよ、82とか…… 」
だいたい…… 俺はいくつなの?
「よく知ってるね、孫の偏差値。なら、孫を相手にする前にカタをつければいい 」
「それも無茶だ。だって、学年のエリートを集める…… それを理解できないほど、バカじゃない 」
「それなら、勉強すればいい。どうしても、自分達の意思を通したいのなら…… だが 」
「だいたい4人しかいないんすよ、その部活…… その時点で詰んでません? 」
「君が5人目を勤めればいい 」
何言ってんの? マジでドン引きだよ。
「はっはー …… 面白いボケだ。ならツッコミを入れます、生徒でもない人間が参加するのはおかしい 」
「いや、この対抗勝負は顧問も参加可能だ。大抵の場合、顧問同士の対戦になるか、一番厄介なのに顧問をあてるかが鍵になる 」
「それでもおかしい、俺は先生じゃない 」
「今見たが…… この部活、顧問がいないね。去年退職されてる…… 後任がいないか、これは益々もってあの子に理由を与えそうだ 」
この人って俺のこと嫌い? 俺は苦手だ。
「俺が…… 反抗的な態度を改めれば、どうにかーー 」
「君の言葉を借りよう、論点が違う。私は、特定の部活に肩入れはしない…… だが、君の心意気は後押しできる。もし対抗戦に参加するなら、それはなんとかしよう 」
この人、力を入れる場所がおかしい。
「それができるなら…… なぜ…… 」
「これならば、君を顧問代理としての参加を教師含め生徒に、認めさせることができるが…… 部活を生徒会から、守るは…… 違うだろ? 」
これは俺の負けだ。たしかに…… 多少強引だが、違和感はない。逆に生徒会から守ってもらうと、生徒達からの疑心を買う。
「諦めます。まだ…… 別に、生徒会が直接潰しに来てるわけじゃないんで 」
「いいのかい? 近いうちに、何かあると思うがね 。つい最近も、全校集会でどこかの部について非難していた 」
「なってから考えます。」
「なってから後悔しないように、勉強を頑張りなさい 」
「冗談はその性格だけにしてください。この歳で、勉強って…… しかも、理由が部活の存続とか 」
そもそも勉強ってどうするの? 先生がいないよ。
「真っ当な理由だと思うが? まぁいい、話しは終わったね…… 改めて今日は、ご苦労だった 」
「最後が一番、ご苦労でしたよ 」
「ふっふ、そうかそうか 」
クッソ! 俺の偏差値とやらが、80あれば…… 夢を通り越して、どっかに転生しなきゃダメだ。
すまんな…… 君らの、力になれそうにないわ。
てことは、相変わらずの扱いを受けるな。




