50話 厳しいっすね
三章 五十話 「厳しいっすね…… 」
色んな愚痴を聞いた。くだらないことから、割と真面目に悩んでいること、様々だ。俺も少し、酒を飲んでみても良かったかも、と思う。
二時間くらい騒いで、話して寮に帰っていた
「ただま…… やっぱりいないのに、言うのはおかしいな。」
でも、言っちゃうんだよね〜
「…… 」
何もせず横になり、明日のことを考えてしまう。
「どんな扱いかな、休職? 転職? 無職? どれでもいいから、さっさと偉い人を怒らせてクビになってやる。」
あたり前の結論だな、今も変わらないよ。何を言ったって、誰が言ったって、やる気なんておきない
「寝るか…… また、あの夢見れるかな? 」
無理だな、夢の内容は選べないって昔から決まってる。そんなことができれば、世の中ニッコリで溢れてる
でも…… 見たいな、今度は声を聞きたいよ
ーーーー 望んだものは見られず、朝を迎える
「まさか、何も見ないとは…… 不安や願望を抱きながら、寝たつもりなんだけどな。」
夢を見せてくれる機能の、不便さよ全く。さっさとアップデート来てください
「行きたくねぇ…… 出たくねぇ…… 」
言葉とは裏腹に、外に出る。
晴れてるなぁ
「山、空、どこを見ても素晴らしい。」
なんでこんなことを言っているのか、自分でもよくわからん
「バカなの? いつも見てるじゃない。」
仕事じゃないのに、朝から外に出るとそりゃ会うよな。でも、バカはなくない?
「おはようございます、お嬢さん。今日から学校っすね、頑張ってください。」
「あんたも仕事サボるなよ? 今日から復帰でしょ? 」
仕事って、どっちの? 旅館のならサボるわけがない、新しい方はサボるも何も辞めるつもりなんで…… そもそもお嬢さんは、知ってる…… のか?
「まぁ、その…… 頑張りますよ。」
適当な返事をしてしまった
「もう少しシャキッとしろよ、それから…… 一昨日はちょっと痛かったかもね! ごめんね! 行ってきます! 」
「あ、ああ、はい…… 行ってらっしゃいっす。」
謝ったのか? なんで? 怖いからやめてください。
そもそもだいぶ、ラグがありません?
「お嬢さんと一緒に行けば良かったかな? …… いや、ないな。」
一緒に登校とか、どんなだよ…… 登校? 俺の場合は出勤になるのか? どちらにせよ、ないわ
!?
あの姿は何度見ても、恐れを抱くな……
何か用があるのか? 女将さん
「おはよう…… ございます。」
「おはよう。なんだい、美羽と一緒に行かなかったのかい? 」
「いや、さすがに一緒に行く理由が…… 第一に何時頃行けばいいのかな〜 って…… 」
聞くのを忘れてたんですよね
「一応、向こうは9時くらいに来てくれればいいらしいよ。でも、バスが来ないからもう間に合わないね。」
えぇ…… マジかよ、でも初日に遅刻か、これで印象は最悪だな。クビになる可能性が高いな、やったぜ!
「参りました、先鋒も苛立つかもしれないですね。」
怒れ怒れ、そんで来なくて結構ってなってくんねーかな
「だから一緒に行けば良かったのに、仕方ない…… 私が連絡しておいてやるから、ちゃんと行きな! 」
「お手数…… おかけします…… 」
「ふふっ、まだ嫌そうだねぇ。」
しまった、少しあからさま過ぎたか?
「いや、もう諦めましたよ…… ほどほどに頑張ってきます。」
諦めませぇん! 絶対にすぐ戻ってきま〜す
「なんにしても、そんな格好で行くなよ? スーツ貸してやるから、着て行きな。」
「いやいや! 大丈夫っすよ、ジャージの方が動きやすいんですよ。それにそんなとこまで面倒見てもらうのも、ちょっと…… 」
誰がスーツなんて着るか、めんどくさい。ていうか、着たことないし
「ダメだ、みっともない姿で行かせたらウチの恥になるよ。」
「ほんとにこれがいいんすよ、何かあった時にすぐ動けるんで…… この格好の方が役に立つと思いますよ? 」
「そういうもんなのかい? しょうがない、折れてやるよ。その代わりに…… 頼んだよ。」
スーツは回避できた、良かったぁ。でも、代償に頼られた…… 割に合わねぇ
「了解です。はぁ…… 」
「行く前にため息か、どれだけ嫌なんだい全く…… 気をつけて行ってきな。」
「行ってくるっす。」
ため息じゃ足りないっすよ、大気圏外より槍が戻ってくるレベルで発狂したいですね。
ーーーー バスが来る時間になった
「い…… く…… か〜 」
ものっすごい、重い腰を上げてバス停に向かう
「今日は運転手が全員風邪で運休…… なんてことにはならないですよね〜 」
バスが来る
「なんだ、やっぱり通常運転か…… 」
「あれ!? 仲居のお兄さんか、今日はどこに行くんだい? 」
あ、旅館にまで来てくれた運転手さんだ
「おはようございます。また、あの学校まで…… 」
「今度はナンパかい? 」
「まさか、難波っていう意味なら合ってますけどね。 」
ほんとに難波中なんですよ
「よくわからんが、まぁ任せな! 」
「よろしくっす。」
バスの中は涼しいな、やっぱり時期になると冷房を入れるんだな
「運転手さん、運転中に申し訳ないんですけど聞いてくださいよ。」
「どした? 」
「俺、もしかしたらあの学校で少し働くかもしれないんですよ。」
なんでこんなことを話すんだろ? それだけ不安を感じてるのかな
「そりゃまたなんでだ? 良い仲居さんじゃないか。」
「ありがとうございます。なんでですかねぇ…… 流れに逆らえないと言うか、自分から撒いたと言うか、ほんとなんでなんしょ。」
「…… 何かあったんだろうな、でも仲居を辞めるわけじゃないんだろう? 」
「絶対に辞めないっす! 」
辞めるわけない、むしろ今から行くところはすぐ辞めたい、今辞めたい
「お、良い返事だ! そんな返事ができるなら、答えは簡単だ。」
「わからないっす…… 」
「いたい場所に戻るまでの、辛抱って考えたらどうだ? 一時的なんだろ、その仕事は。」
「 1・2年って約束です。」
「少し長いな…… でも戻れるんだろ? 」
「はい。」
「なら、それまで頑張ってみろ! 戻ってから愚痴をいっぱいこぼせ! 」
「厳しいっすね…… 」
「ははは! そんなもんだよ。」
「そんなもんすか。」
これまた不思議と、少し楽になった。
バスが進むにつれて、どんどん憂鬱になっていったのに…… 今はそうでもない
ーーーー 目的地まで着いた
「お疲れさん、またお兄さんに会いに行ってやるから、頼むぞ仲居さん! 」
「お待ちしております。その時は、お手伝いとしての可能性が高いですが…… 」
「そんでも仲居さんだろ? 」
「間違いなく! 」
「よっしゃ! 頑張れよ。」
「ありがとうございます。」
バスが行ってしまった…… 一緒に回送してくれ〜
ここに来ると大抵ロクなことにならない。
良かったことは、さっきの運転手さんと縁を持てたことだけだ。
他は面倒だらけ…… 道に迷うわ、お嬢さんにナンパ疑惑かけられるわ、不良に絡まれるわ、頭をグリグリされるわ、警察に連れてかれそうになるわ…… 思い返すとほんとロクなことがねぇ
「引き返したい…… 帰りてぇ。」
なんかこればっか言ってるな、ここに来ると
帰るためにできること、それはーー
さて…… そんじゃ悪態つきまくってやるか!




