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すんません 、「俺」は、記憶ないっす  作者: 志奏
三章 「果つることなき想いは再びに」
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47話 ずる賢さなら……



三章 四十七話 「ずる賢さなら…… 」



俺はーーーー


「この仕事を大事に、思ってしまっているからだと思います。」


「ほう、そんなことを思ってくれていたのかい…… 」


最初はそりゃ、肉体労働すぎだろ!? って思ってたけど…… 思ってたはずなんだよ


「口にするとは思ってなかったので、どう説明していいかわからないですが…… 」


「大事にか…… そうか…… 」


「はい。」


「なら、お願いだ…… 頼むから今回の話しを受け入れてほしい。」


「解雇って言われた方がよっぽど楽です。それなら踏ん切りがつく…… 」


解雇される理由なら、腐るほどありそうだし


「解雇? バカらしい、そんなことはあり得ないね。」


「そうですか…… それなら、この話しはこれで終わりです。一切受ける気はありません。」


「一方的すぎた、ちゃんと私からの理由も説明させてくれ。」


「何も変わらないと思いますよ? あまりにも一方的すぎて、会話じゃないと思っているので…… 」


「えらく今日は、辛辣にくるねぇ。まぁ、少し嬉しいがね…… 」


嬉しい? そのお年でドMはちょっと……


「…… はぁ、聞かせていただきます。」


「助かるよ。」




いつもの、あっけらかんとした表情ではなく…… 気のせいだろうか、少し緊張してるように見える。それは俺のする表情ですよ


「あんたが帰ってきた日の夜、ババァから電話があってね…… その時に頼まれたのさ、あんたを貸してほしいって。」


「ババァ? …… あの校長さんですか? 」


たしか、お知り合いですよね


「そうだ、もちろん二つ返事を出すほど私もバカじゃないよ。」


「さっぱりです、警備員ならネットで募集かけるなり、広告を掲載するなりして雇えばいいのに。」


よりもによって、こんな最も頼りにならない20代ベスト3に入る男を選ぶなんて


「私は最初にあんな男を雇ったら、まず後悔するよ? って言ったよ。なんせ殴られることに抵抗しない男が、警備員なんて務まるものかい。」


その通りですよ…… わかってるならなんで


「女将さんが、正解を教えてあげてるじゃないですか…… 無理ですよ絶対に。」


「そうだね、でも…… 雇いたいのは信頼に足る人間であってほしい。こう言われた瞬間に、返す言葉が出てこなくなった。」


「余計におかしいです。信頼? あの校長に信頼されることをした覚えはありません。逆に暴力沙汰を起こした、ろくでなし…… そう言われた方が自然ですよ。」


「あのババァもね、自分の孫が今あそこに通ってるんだよ…… そして私の孫もね、それに学校が学校だけにほいほいと、見知らぬ奴を雇いたくはないのさ。」


「それと俺を信頼されることに何か関係がーー 」


「私が信頼している…… これだけで充分なんだと言ってたよ。そして守れる力もあるだろう? 」


「女将さんの信頼は、素直に嬉しいです。でも…… 守れる力とは、なんのことです? "アレ"を言ってるなら、違うと言っておきます。じつは今日、原さんやお嬢さんに付き合ってもらって、色々と試しましたが何一つ変わってないんですよ。だから"アレ"は偶然と奇跡を二乗したくらいの出来事です。」


「何も暴力のことなんて言ってないよ。守ろうとしてくれるだろう? お前は…… たとえ力及ばずとも、打開しようと行動するはずだ。」


「やけに買い被りますね、そんな良い奴ならお嬢さんの顔をアザで彩ることはさせません。」


「はっはっは! それは良いんだよ、あのアザは私の孫だっていう証拠みたいなものさ。大事なのは、凛誉(りんほ)って男を私は信頼している…… これが一番なんだよ。」


「全然…… 納得も理解もできません。したくありません。その条件なら原さんや、他のもっと頼りになる人間がいると思いますが? 」


「厨房を回す二人のうち一人をだすかい! それに、あんたの方がむいてるよ。」


「向いてないですよ、どういう意味っすかほんと…… やっぱり、解雇みたいなもんすね。」


どうしよう…… 皮肉が止まらない……


「半人前未満をそのままだすほど、私は甘くないよ。しっかり帰ってきてもらう、誰が易々と手放すもんかね。」


「嫌なんです…… 俺は、俺は…… 」


やべ、少し熱くなってきた




まずいな、感情的になりつつある…… 落ち着けって、一応は認めてもらえてるんだ。はぁ…… ダメだ止まらない


「俺は…… 誇りを持っていると言えるほど、この仕事をしてからの日は長くないかもしれないです。でも、それでも…… この仕事が好きみたいなんすよ…… 接客した人から褒めてもらったり、また会いに来てくれたり、思わぬところでの縁があったり、どんどん好きになってるみたいなんですよ…… 」


「そうかい…… 」


「こんなことを言うタイプじゃないんですけどね、自分でも意外で…… もっとしていたいなって、もっと認めてもらえるようになりなって、そう思ってるみたいで…… 」


「そうかい…… 」


「俺は…… ここで働いてたいです。」


「いい日だ女将の冥利につきる…… あんたみたいなタイプの男から、そう思ってくれるなんてね。いや、あんたは本当は愛情が深い人間だろうねぇ…… 無下にするわけじゃない、あんたの気持ちを聞いて、それでも頼みたい…… お願いだ、ウチの子らを見てあげてほしい。お願いだ…… 」


やめてくれ、やめてくださいよ…… 卑怯だ

貴方に頭を下げられて、それを断ることができると? 理由に関してはまだ納得できない…… できないけど……


「俺は貴方が思っているほど勇敢でもなければ、優しくもないと思いますよ。まずは自分が第一、その次に優先順位を決めた他人…… つまり、誰でも守るとは限らない。それにそんな力もないんですよ。」


「充分だ。それから私は勇敢なんて、これっぽっちも思ってないから安心しな…… いざって時に助けてやってくれ。」


「だからそんな力は…… "アレ"はそんな便利じゃないです。もうできないと思っておいてください。」


「暴力なんてアテにしないよ、頼りにしてるのは咄嗟の機転と、ずる賢さ…… そして、凛誉っていう人間だ。」


「ずる賢さなら、少しくらい力になれるかもしれないです。」


「引き受けてくれるかい? 」


「半日でクビになると思いますよ。」

下手したら、1時間でクビだ


「そしたら、またウチで働いてもらうよ! タダメシを食わせるほど甘かないよ。」


「んじゃ、クビにしてもらえるように頑張ります。」


「クビの理由によっちゃ、この世の地獄と思えるくらいの修行をつけてやるから覚悟しな。」


「…… ほんとに敵わないですよ、貴方の系譜には。」


「半人前未満じゃ、敵わないのは当然さね。」


「いつか一人前になって、堂々と歯向かって見せてあげますよ。」


「あっはっはっは! 」


「フッ、ふふ…… 」



改めて、ちゃんと理由を聞かせてもらいます。

まだ、理解するには足りてません…… ただ貴方に負けただけです。


でもおおよその検討はつく、あの校長に相当頼まれたんだな。そして女将さん自身も今回の一件で心配になってしまったんだろう…… それくらいなら、予想はできる


それにしてもあの校長の孫か、どんなコワモテだろうな。なるべく関わらず過ごしたい…… てゆうか、行きたくないわ





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