44話 なんか出そう……
三章 四十四話 「なんか出そう…… 」
ふぅ、どれくらい対戦しただろう?
こんなに熱中してしまうとはな
「ちょっと休憩しますか、なんか飲みます? 」
「炭酸系、レモン以外。」
具体的なチョイスだな。レモン苦手だったけ?
「たしか…… おっ、グレープ炭酸でどうすか! 」
「ナイス! 」
「ぷはぁ! くぅぅぅ! くぅぅぅ! 」
新種の鳴き声が聞こえる。くぅって飲みもんかよ、あっ…… 飲みもんか
「美味しいっすか? 」
「当たり前! あんたは飲まないの? 」
「飲みますよ、もうちょいしたら。」
「今は飲まないのかよ。」
「まだ、貯水量は多いんですよね。」
「あっそ〜 …… ところでさ…… 」
「なんすか? 」
「なんでさっきからずっと、私の顔をチラチラ見てくるのよ? キモイって罵倒されたいから? 」
はっずかし〜 、気づいてたんすか…… あと俺は3次元に対してはMじゃない
「違うっすよぉ、その…… まぁ…… えっとぉ。」
「惚れても、返事はNOよ〜 」
誰が惚れるか! 2次元寄りの子がタイプなんだって
「はは、ロリコンにはなれないっすわ。」
「お前な、私のどこがロリだか少し話そうか? 」
うーん、選択肢ミスったな。
「見た目じゃなくて、年齢的な? まぁとにかく俺は、違うんですぅ! 」
「はぁ…… それなら何よ? ケンカなら買うわよ。」
だから俺のケンカなんて、アウトレットでも買い取り不可なんすよ。あと怖いんで辞めてください
「その…… 顔が…… だいぶイケメンになったなと…… 」
「うわぁ、ひどいなソレ…… ちょっと本気で落ち込んでるのに…… 」
!!!
「ご、ごめんなさい! バカなりにオブラートに包んでみたつもり…… なんすけど…… ごめんなさい。」
「ぷっ、あははは! なに本気で暗くなってんのよ? 冗談よ冗談! それと、謝るのはこっち…… ごめんね気を遣わせてさ。」
や、やめてよぉ…… その冗談はかなりキツイ
「なんでお嬢さんが謝るんすか、そのアザも、そうなるような状況を招いたのも、俺の判断ミスです。だから俺に謝らせてください。」
「違うって、私が行きたいから行った、したいからした…… 困らせてごめんね…… 」
違うんだってそれが!
「違う…… 俺がもっと慎重に考えてれば、見に行かなければ、お嬢さんや松柴さんを巻き込まずに済んだんです。」
「巻き込まれに行ったのは私…… あの不良達に悪態をついたのも私なの! ほら、悪いのは私でしょ? 」
なんでだよ!?
「ダメっす、悪いのは俺であって…… 」
「なんでよ!? 私が…… 」
「…… 不毛と悟る前に辞めますか…… んじゃ、俺が悪い寄りのおあいこで。」
「結局変わんないかい! …… はぁ、わかったわよ…… おあいこね。」
俺が悪い寄りでね
「すんません…… 」
「謝ったら、おあいこじゃなくなるわよ? 」
「そうっすね…… 」
頑固すぎる…… どこまで似てんだよ
「ところでさ…… 」
「はい? 」
「あんたが戦ってくれた理由って、やっぱり私が危ないって感じたから? 」
なんだその質問は?
「たぶん違うっすよ。」
「そっか、ありが…… って、なんだって? 」
「だから、たぶん怒りとかじゃないーー ふっぶぁ! 」
この痛みは!? ひたすらに凄まじい…… 肘パンチを腹に食らった
「お、お嬢…… さん? うぷっ 」
何も食ってないのに、なんか出そう。
「じゃあなんでよ? 私が危ない目に遭ってるのは、理由には入らないと? 」
どう言やいいんだよ
「いやまぁ、そりゃ多少はね…… 入ってますけどね…… 」
「入ってるけど? 」
「入ってるけど、それが一番の理由じゃなくて…… 一番の理由が自分でもよくわかってないんす。」
「なんなのよそれ…… でも、入ってるのね? 」
「いやそれは…… 」
「入って、るのね? 」
「入ってますね、間違いないです! 」
なるほど、暴君とやらはこんな感じなのね。そりゃ反乱されますよ
「素直じゃないのは許してあげる。」
「ありがとう…… ございます…… 」
どういう理屈!? 高校生ってみんなこんななの? いや、お嬢さんが一際異色だろうな
「少しはマシになったわね。」
「? 」
どういう意味? こんなちょっとの時間でマシになれるなら世の中、正社員で溢れてるよ
「だってあんた、遊んでる最中も楽しそうにみえて、その裏で気まずそうにしてるんだもん。せっかく遊びに来てやったのにさ。」
…… その鋭さも異色だ。ただ…… 遊びに来てやったって、なんだ? 頼んでないんだからね!プンプン
「ほんと年上として情けないっす…… 」
「気にするなって、そんなのは生まれた時からでしょ? デフォルトよデフォルト! 」
「そのとお…… って、どう意味っすか!? 」
生まれた時!? 俺より俺の記憶を持ってるのかい! 俺なんて、ここ3、4年の記憶しかないんすよ?
「意味は、そんなのは当たり前ってこと! 」
「それなら納得。」
「納得するんかい!? 」
「しますね、これ以上ないくらいっす。」
だって、その通りすぎて何もないんすよぉ
「全く…… そういえばあんたの"アレ"って、もう無理なの? あの時だけ? 」
アレ? アレってあれ? あれだよね?
「無理っすね、できない云々というより…… 何かの間違いだったんすよ。」
「試してみない? 」
「た、試すってどういう…… もうガン黒、耳ピアス、おいコラあぁん!! は勘弁なんすけど…… 」
怖くて直視できないんだよ、あの手の連中。それに見ると、何見てんだあぁん!! だろ?
「違うわよ、私にそんな知り合いはいない。ほら、原さんって、ボクシング経験あるって言ってたじゃん? ちょっと付き合ってもらったら? 」
無理無理! 絶対に痛いが確定してるのはイヤ!
「それは原さんに申し訳ないので、遠慮しておきますよ。」
「大丈夫よ、原さんだって久々に肩慣らししたいなぁって、言ってたよ! 」
そんなキラキラした目で見ないでっす。完全にお嬢さんの興味に火をつけたな……
「絶対にむーー 」
「あんただって、これでわかるでしょ? 本当にわからないのか、それとも身体に残ってた何かなのかを…… 」
たしかに、興味がないといえば嘘になる。いや、それよりもまた…… 歯止めが効かなくなる方が怖い
「また…… 万が一、あの時みたいになったら困るんで…… 」
「大丈夫よ、今度は旅館の人がだからあんたも止まる! 確証は…… まぁ…… でも止まる! 」
どぅええ!? なにそれ? 今度は納得できねぇ。でも…… もし使いこなせたら、便利じゃね? 女将さんもお嬢さんも怖くなくなる! …… なわけないな、たぶん怖いまんまだな
「 頼んでみます…… 」
「大丈夫! もう頼んである! 」
なんで頼んであるんすか…… ダメだこの子、早くなんとかしないと
「いつっすか? 」
「もちろん今から! そろそろ休憩時間入るからね。」
…… 将来の旦那さんであり、番頭候補の方…… お気の毒です
「せっかくの休日に、また痛みが…… 」
「若いうちに無理をしないと! 」
もう理屈じゃダメですね
「うぅ…… もうほんと勝てないっすよ、お嬢さんには…… 」
もしできなかったら、原さんのパンチとか痛い超えて死ぬんじゃない? あの時のガン黒中学生の比じゃないっすよきっと。
はぁ…… でもできたら、かなり便利だよなぁ。布団の上げ下げとか、超楽そう…… 考えることが、しょぼくて泣けてくるな




