43話 もうちょいゆっくりでも……
三章 四十三話 「もうちょいゆっくりでも…… 」
仕事が終わり、ようやく寮に帰って来た。
「つ、疲れた…… も、無理…… 」
布団も敷かず、そのまま床に転がってしまう。たまには、布団無しでもいいよな…… てか、敷く体力がないんだわ
明かりを消して、暗くなった天井を見上げる。
「あぁぁぁ…… 一日ってこんなに、凝縮して濃密だったけ? 」
仕事の方は女将さんが気を使ってくれて、掃除と少しの雑用だけだったが、今日のことを高井さんをはじめ色んな人に聞かれて、それに答えてたらもの凄い疲れた……
「はぁ…… 俺にもさっぱりなんだけどな…… 」
ほんとうにあれは、なんだったのだろう?
もしかして、隠された力的な! って、そんな上手い話しがあってたまるか。
そもそも、キッカケってなんだ? お嬢さんが殴られて、怒りによるもの? そんな感じじゃなかった。それはそれでひどいな…… あの時、たしかに怒り以外の感情があった。
「すんませんお嬢さん…… でも殴られたのを見て、ふざけんなって思ったのも本当っす。」
…… あの感情は、例えるなら…… 見下す…… 象に…… に…… 下され…… てる…… ことに……
あ…… 寝落ちだ…… ーーーー
ーーーー おそらく人生で、一度あるか無いかの経験をした、次の朝とは思えないほどに普通だ
「ふぁ〜あ…… ん〜…… 眠い。」
まだ、疲れが取れてない気がする
「女将さんに休めって言われたけど、何するか…… 積みゲーの消化ですね。」
そうそう。昨日は何もできなかったからな、今日は思う存分にやってやる!
やることを決めた! と思った瞬間、扉を叩く音が聞こえた
「誰だ…… まさか、パンダの使者(警察)? 」
なに、やっぱり捕まるの?
「起きてる? 」
あ、違った…… 小規模台風か。扉を開けて顔の確認もしよう、じゃないと台風の影響でさらに疲れる
「おはようございます。どうしたんすか、お嬢さん? 」
「おはよう…… 元気か? 」
猪○?
「若干疲れ気味の元気です。」
「なんだよそれ…… まぁ元気ならいいけど。」
惜しい、だから元気ではないんだなぁ
「学校は休みっすか? 」
「なんであんたは、土曜日に学校行かせたがるのよ! 」
「あ、今日って土曜日でしたか…… 」
ダメだ、曜日の感覚が薄れてる
「休み貰ったんでしょ、何してるの? 」
「俺が過ごす休日は、ゲームかゴロゴロしながらアニメ見てるくらいっすよ。」
悲しくはない。むしろ完成された休日の過ごし方だと思う
「はぁ…… ま、そうよね。よし! 対戦しよう! 」
なんで? 俺はこれから、女の子たちオンリーのRPGをプレイする予定だったんだけど……
「いやぁ、お嬢さんも女の子らしい休日を過ごし…… 」
「あ? 」
「ちょうど、マリ○カートを対人でスキルアップしたいと思ってたところなんすよ。お手合わせお願いしていいっすか? 」
なるほど、これが絶対的な圧力なんすね。女将さんの系譜こえー
「おお! 先輩達と少しやったことがある。ワイワイしてるゲームだよねあれ。」
甘いな、欲しいアイテムが出ない時に台パンする人もいるんですよ? 俺はしない、貧乏ゆすりくらいはする
あれ、このゲームってこんなに勝てないもんなの?
「やった! 7連勝! 」
「…… 俺のコントローラのボタン正常かな? 」
「ぷぷっ、負けをコントローラのせいにするなんて、情けな〜い。」
「いや、最近やってなかったから…… 」
「私は最近まで、ゲーム自体やってなかったけど? 」
くっ…… たしかに…… これは認めてるしか
「レース系じゃ、マジで勝てないっす。」
「先輩達にも言われてる、なら次はあんたの得意ジャンルで勝負しようよ! 」
得意ってほどのはないんだよな。だって得意と思ったら、それで負けた時すんごい落ち込みそう俺は
「なら、ガンダ○で勝負っす! 」
「どういうジャンル? 」
「対戦格闘系っす。」
「格闘ゲームか…… 私も練習したいと思ってたところなんだよね。格闘ゲームの大会に、部員全員で参加するみたいでさ。」
「その格ゲーは、少し違うかもしれないっすよ? 」
たぶん、ストリー○系かな?
「大丈夫! とにかく色んなジャンルで上手くなりたいから! 」
元気というか、熱いというか、子供はハマると止まらなくなるって本当だな
「ういっす、負けないっすよ。」
「格闘ゲームでも圧勝してやる! 」
ーーーー 何戦かした。ヤバ、気持ちいい!
「また…… 負け? 」
「いやぁ、すんません。この機体が強いんすかね? なんか勝てちゃいますぅ! 」
「もう一回! 」
「オッケーっす! 」
煽りみたいなことをやりつつも勝ててしまう。ホントはダメだよ? でもイタズラ心が
「接戦でしたねぇ! 」
「嘘でしょ? なんかフラダンスみたいなことしてた…… 」
「あれはコントローラが〜〜 」
「撃つぞ…… 」
「調子に乗ってすいませんでした…… 」
撃つぞって怖いよ…… 影響されたの? 今のお嬢さんなら、ビームの一つくらい余裕で撃てそうなんだけど
「やっぱりまだまだかぁ…… 」
「いきなりあれもこれも上手くなったら、たまりませんよ。これくらいで丁度いいんす。」
そうそう、もしこのゲームでも負けたら俺は当分、ギャルゲーしかやらないぞ
「でも、初絵はどれも上手いよ? 」
「松柴さんは、普段からネットや電子系に強かったんじゃないですか? それに、レース系なら負けないでしょ? 」
「うーん、それでももう少し練習して、先輩達と大会に参加したいよ…… 」
「あの先輩さんなら、一緒にゲームしてるだけで楽しい! とか言いそうっすけどね。」
「たしかに…… って、やけに理解してるじゃない? やっぱりナンパ…… 」
「いやいや、同士の匂いと言うか、なんと言うか…… 」
「匂い? そんなに至近距離に…… 」
「いやいやいやいや、同士の雰囲気を感じたんすよ! 話しただけですが、良い先輩さんだったなと! 」
はぁはぁ、なんでこんな弁解してるんだ俺は…… そうだ、選択肢間違えるとまた、恐怖ランキングが更新される
「そんなに慌てるな…… 知ってるわよそれくらい。まだ知り合って、すこしだけど優しい先輩だと思うよ。」
「ならもうちょい、ゆっくりでも…… 」
「でも、勝ちたいじゃん? 」
「お嬢さんなら、そうっすよねぇ。」
負けず嫌い? 目立ちたがり? 違うな、正直過ぎて走りに加減ができないんだ
「そうそう。」
「なら別の格ゲーで、再戦っすね。」
慣れてきたから別にいいけどさ、もう少し速度を落としてくれると助かる。転んだ時のダメージが心配だわ…… 俺は大丈夫、速度も何も基本立ち止まってるから、転ぶとはない
「次は負けない! …… 予定よ! 」
「まだ負けない予定っすよ〜〜 」
対人はあまりしない方だけど、たまにやると楽しいな。うんうん、これで後はお嬢さんに俺のやってるギャルゲーを…… は、さすがに無理だな。
昨日のことを考えることもなく、ゲームしてるのは自分でも驚きだ。いい休日かもな…… たぶん




