38話 垣間見る片鱗 (中編)
三章 三十八話 「片鱗⓵ 中編 」
全く、これだから子供はわからん。普通は来る場面じゃない、他の生徒さん達みたいに黙って見てるのが最適解だろ…… 俺なら百点満点の回答ができますよ
「…… ぁ…… 」
ダメだ、皮肉も文句も何も言えない。そりゃこんだけ、いたぶられたのは初めてだからな……
「は? なんだお前? 」
「最低だって、マジウケる!」
「でも生徒出てきたから、いんじゃね? 」
「聞こえなかった? 最低って言ったんだけど! 」
「みーちゃん、相手をあまり刺激しないようにしよう、ね? 」
「あ? 調子乗ってんなよ、オイコラ! 」
「リクヤさーん! その女、こいつの知り合いじゃないっすか? 」
この中学生、いつまで俺の頭に足乗せてんの? まぁさっきみたいに、ぐりぐりされてるわけじゃないからいいけどさ
「マジで、そうのかお前? 」
「そうだよ、あとあんたいつまで足乗せてんのよ! そいつはあんたらより歳上だよ! 」
お嬢さん、何さらっとタダで情報流してんのよ。せっかく若く見られて嬉しかったのに
「何お前、歳上だったの? やっべ、くそダセェ! つか弱すぎだろ。」
言い訳だけど、喧嘩の仕方なんか知らないんだよ。どこで説明書買えば良かったの? 俺っていうパッケージには、付属してなかったみたいでね
「へぇ何、お前らのどっちかと付き合ってんの? 」
「はぁ!? なわけ…… ない、でしょ? な、ないから! 」
「みーちゃん、ちょっと面白いよ今の。」
「初絵、余裕あるわね…… 」
すんませんねお嬢さん、俺も会話に参加して全力で否定してあげたいですよ。もうちょい2次元寄りの子がタイプですってね
「えっ、じゃあただの知り合いかよ。」
「悪い? 早くそいつ離してよ、あとそろそろ帰った方がいいんじゃない? 」
「お前さぁ、さっきからマジで調子に乗りすぎだろ、殺すぞ? 」
「別に調子になんか乗ってない、当たり前のこと言ってるだけ、そいつを離して早く帰れ! 」
「み、みーちゃん、一旦落ち着こうよ…… 」
「チッ…… 舐めんなよ。」
「リクヤ君キレた? 」
「やば、あの子カッコいい…… でもウザいわ。」
お嬢さん、ホントにやめた方がいい。これ以上はマズイっす…… 松柴さん、隣にいるならもうちょい抑制してくれ。あと俺はいいけど、お嬢さんは生徒だろ? 学校の奴らも見てるだけじゃなくてなんとかしろ…… いや、して下さい
「なんかに使えると思ったけど、やめたわ。」
不良のリーダーみたいな奴が、お嬢さんと松柴さんの近くにまで行く
「へぇ近くで見ると可愛いじゃん、付き合わない? 俺たち。」
「は? 」
「リクヤ君の浮気もの〜 ! 」
「俺も立候補しまーす! 」
不良達 「立候補しまーす!!! あははは!!! 」
「茶化すなってお前ら、で? どうよ。」
「ふざけんな、誰があんたらみたいなのとーーーー ゔっ! 」
「みーちゃん!! 」
え、なんだこの光景は…… いつも俺にダメージを負わせてくるお嬢さんが、殴られた? 殴られたんだ
「うっぜお前! だから調子乗るなって言ったろ? 」
「リクヤ君パネェ! 」
「私も超スッキリ! その女かなりウザかったもんね〜 」
不良達 「でも殴んねぇよ俺たちなら、あははは!!」
「さすがリクヤさん、つかお前いいの? あれ、お前の知り合いだろ? マジ情けねぇな! 」
だったら足のけてくれ、お嬢さん…… ごめんなさい、俺には謝るくらいしかできないっす。ここで覚醒とか言って、とんでもパワーを発揮するほど、俺は異次元じゃないんで…… ここで這いつくばるのが精一杯です
「あーあ殴っちゃったよ、てか君も可愛いね、どう? 付き合わない? 」
「みーちゃん…… みーちゃん…… 」
「聞いてる? もしもーし! 」
「お友達やられて、壊れたんじゃない? 」
「え、なに? そういう関係? 」
不良達 「キモッ! ウケるなぁソレ! 」
「おい、シカトしてんなよ! 」
「いっ、痛! 」
今度は松柴さんの髪を引っ張ってやがる…… そこまでしないぞ、いくらキレてても。つーかよ、なんで冷静に見てられるんだよ俺は
「初絵に触んな! この最低野郎! 」
「チッまだんなこと言えんのかよ、ほんとウゼェよお前! 」
「痛っ、離せ! 触んな! 」
「みーちゃん、みーちゃん…… 謝りますから、もうやめてください…… 」
「リクヤ君〜 そのまま、その女の髪むしっちゃえ! 」
「部分的にハゲるな、はははは! 」
はぁ、はぁ、…… 動悸がおかしくなってきた。
「マジでお前、何もできねぇな! クソだなマジでよぉ! 聞こえてますぅ!? 」
…… マジでおかしい、感情的になりつつあるのか?
この動悸の理由がわからん。
「もう…… 離してください…… 」
「この女が、土下座して詫びないと無理だわ! 」
「誰…… が、するかよ…… 女を殴るヘタレなんかに。」
「お前さぁ頭おかしいだろ、まぁ今のでさらにテンション上がってきたわ。」
「ゔゔ! 痛っ…… 」
「ほん…… とに…… もう、離し…… 」
「あらら、お友達泣いてる〜 キモっ! 」
「泣いてるとか、たしかにキモッ! てかウザ。」
「あらら、知り合いが泣いてるぞ? ほらっ少し足の力を抜いてやるから、助けに行けって! その後ぶっ殺してやるからさぁ! 」
何も出来やしない。ここでこの場を収めることができるのは警察くらいだ…… もうそろそろ来てくれてもいんじゃない? もう大遅刻だよ市民のヒーロー
「あんなのを助けに来て、お前らもバカだろ。あそこで中坊に踏んづけられて何もできないとか、ゴミすぎだろ。」
「そ、そう? 私…… からしたら、あんたらより…… 頼りになるし、カッコ良く見えるけど? 」
「っとによぉ! マジでイカレてんのかよ! 」
「ゔっ! 」
「ぐすっ…… ぐすっ…… なさい…… 」
「お前の知り合いも相当だな、リクヤさんマジでキレてるぞあの感じ。お前もキレれば? ははは! 」
…… お嬢さん、松柴さん、ごめんなさい。ほんとに何も出来ないんだよ。女将さんもごめんなさい、この状況を作ってお嬢さんを傷付けてしまった。
でも最低だけど、最悪だけど、これでお嬢さんも学ぶことができる。状況に流されず冷静に行動する、そうしないと今後の人生が生きづらいですよ。
ーーーー "お誕生日おめでとう!!! "
おいおい、なんでまた変なタイミングで思い出すんだ俺の脳さんよ。あれだけじゃないだろ、お嬢さんには旅館に来てからの数年、なんだかんだよくしてもらったよな。もちろん疲れる、怖い、面倒いも結構あるけどさ、それでも……
誕生日を祝ってもらう嬉しさ、楽しさ、優しさ、めんどくささはどうしたって、記憶に焼き付いちゃうよね。めんどくささもあるのは、俺なんでしょうがないよな、さてと……
{"いい加減に足をどけろ、劣化種風情が"}
??? 劣化種? なんだっけこの言葉、使った覚えがない、言った覚えがない、それなのになんでこの言葉が脳裏をよぎる。それだけじゃない、味わったことのない感情が身体を、脳を、全て支配していく。
刹那…… 意識が飛んだかと思ったら、意識だけが部屋の中に閉じ込められてような感覚に陥った。
「まぁ、キレたところでゴミにーーーー ぶべっ! …… ガッ! 」
「あ? どうしーーーー !! 」
「え、何? なんで後輩ちゃんが倒れたの? 」
「たまたま見てたけど、いきなり立ち上がって…… 顎に一発入れて、その後…… 足持って地面に叩きつけやがった…… 」
「は? 何それ…… 」
「うぅ、なんで離して…… !? …… え? 」
「みーちゃん! 大丈夫? ごめんなさい、何も…… 何も出来なかったよ…… 」
「ううん、そんなことないよ初絵。それより…… 」
「うん、でも私もわからないよ…… 」
「凛誉…… 」
「…… …… 。」
あれ? 何してんの俺は…… 何してんだ……




