33話 嬉しいな……
三章 三十三話 「嬉しいな…… 」
気になる…… 旅館の人達の態度というか、不穏な空気というか、そのせいでさっきから何回もゲームで操作ミスを連発してる…… 俺が下手なの?
「はぁ、何やらかしたっけ…… 」
休憩のはずが全然休憩じゃない、HPはほぼ満タンなのにMPが自動消費してく
「もう時間か…… 引きこもりてぇ。」
そんなことしたら、HPもゲージ突破して無くなりそうだ……
「行こう…… 何やらかしたっけなぁ…… 」
ネガティブ思考全開で旅館に戻る
「おう、休憩は終わりかい! 」
「高井さん、そうっすよ今戻ったところです。」
「そうか、今日は覚悟しておけよ? その為にまずは仕事をこなさなきゃな! 」
高井さんまで何か企んでるのか?
「なんか今日、皆さんの態度が変っていうか…… 教えてくれませんかね? 何かしちゃったんですか俺って…… 」
「は? いや、俺もお嬢から聞い…… なるほどな! いいやダメだ、こういうのは内緒なんだよボウズ。」
なになに、やっぱり除け者大作戦なの? それならそうって言われた方が何倍も楽なんですけど
「あとで一番高いビールをダースでプレゼントするんで、こっそり教えてくださいよぉ。」
「おお! そりゃいい…… ってダメだ! 、とにかく悪いことじゃないと思うぞ。だからいつも通りにしてろ。」
なら、皆さんもいつも通りにしてくださいよぉぉ
「は、はぁ…… わかりましたよ…… 」
「そんな辛気臭い顔すんなって、ほんとに悪いことじゃないんだからよ! 」
教えてくれれば元のダメツラに戻るのに、何故教えてくださらないのですか!?
「はは、なら身構えないで審判の時を待ちますよ。」
「審判? 野球の話か? まぁ、とにかくいつも通り仕事してろよな! じゃあな。」
ビールを餌にしてもダメだったか…… てことはやっぱり、なんかロクでもないことか、俺を説教するかだな…… 一気にモチベが消えてくな
「疲れるわけないのに、なんか疲れたよ…… 」
なに言ってるのか自分でもよくわからん
お出迎え(宿泊客の来館)の為に外で待機中
「なんだい、まだそんな腐ったミカンみたいな顔してるのかい。」
え、そんな顔してるのか俺…… 顔芸なんてできないんだけど、それとも初期ステータスからなの?
「どんな顔ですか、浜路さん。いつも通りってことならその通りなんすけど…… 」
「いつもより日が経って腐ってる感じよ、これから来るお客様にそんな顔で迎えるの? 」
「そうだね、仲居長の言う通りだよ。そんな顔で仕事しろって教えた覚えはないよ? 」
女将さんまでかよ…… そんなひどいのか?
「おかしいな、別に何もないんですけどね…… 」
「なら、無理してでも笑っておきな! 元々大して良い面じゃないんだから、余計に今のあんたは変に見えるんだよ。」
ひでぇ…… でもその通りだから困る。
「ははは、ニコッ! どうですか? 」
「気色悪いねぇ…… 」
「私もそう思いますよ、女将さん。」
鬼面達め! せめてもう少し、気を遣ってぇ。あなた達二人に俺のうまい棒メンタル粉々にされてますよ
「ひどいっすよ、泣き面に変わりそうです。」
「フッ、少しらしい顔に戻ったよ。」
「あんたが泣いたって、絵にならないからやめな。」
ったく、なんでこんな一方的にディスられた会話なのに、落ち着くんだよ…… お年寄りパワーか
「絵にならないどころじゃないですよ、苦情もんです。それこそ、自分が一番気色悪いと思っちゃいますね。」
そうこうしてる内に送迎のバスが来た
一同 「ようこそお越し下さいました。」
「今日はよろしくお願いします。」
「あなた、久々にゆっくりしましょうねぇ。」
そういえば今日は夫婦と個人客の三人か、この老夫婦…… 仲睦まじい感がすごいな。俺だっていつかは…… 無理な気がする。
「へへへ、ようお兄ちゃん! ほんとに仲居さんやってるんだな。」
あっ、バスの運転手さん!
「これはこれは、その説は見事な運転捌きにお世話になりました。」
「相変わらずうまいなぁ、約束した通り来たぞ! 今日はよろしくな。」
約束したって…… あーあ、こういうのがあるからこの仕事憎めないし、やり甲斐感じちゃうんだよ
「ほんとうによくお越し下さいました、本日はごゆっくりお疲れを落としていかれるように、勤めさせていただきます。」
「お、そっちも腕の良い仕事をする感じだな。」
「お知り合いですか? うちの若いのと…… 」
「はい、以前お嬢さんに忘れ物を届けに行く時に乗ったバスの運転手さんです。」
「あんときゃ、ナンパしに行く悪ガキだと思ったんだよな! アッハッハ! 」
おいおい…… でもあの後、お嬢さんにナンパ疑惑かけられたんだよな…… 嫌な思い出
「その時、少し会話したくらいなんですけどね。」
「そんでも、やけに面白いお兄ちゃんだと思ってな! だから来たんだよ。」
「左様でございましたか、ならまだ未熟な若輩ですが今後ともよろしくお願い致します。」
女将さん……
「それではお荷物をお預かりします。」
「はいよ、よろしくな。」
夕餉の配膳まで終わった、あとは掃除して上がりだけど…… このままなわけないよな
「さて、さっさと済ませて帰ろう。」
「嬉しそうな面になったり、似合わない考えてる面になったり、大変だねぇ。」
「女将さん…… まぁ、ちょっとは嬉しいことがあったんで。」
「あのお客様かい? あんたは、昔からいろんな層のお客様に好かれるところがあるからね。」
全く、流石の魔眼ですね
「好かれるほど良い奴じゃないですけどね。」
「自分で良い奴って言うのは、大抵の場合嘘だからね、その点自分がダメだと思ってる辺りは好感が持てるよ。」
ダメとは言ってない…… ダメダメの間違いです
「そんなもんすかね…… 」
「これからわかってくるよ、あんたは側から見てると良い男…… になる予定の男だ。」
そんな予定聞いてないっす…… ちょい嬉しいけど
「でもまずは半人前からですね目指すは。」
「はははは! そうかいそうかい、そうだねあんたはそこからだね。今日はもう掃除して終わりかい? 」
「そうですね後は賄いにたかろうかと思ってました。」
「ちょうど良かった、誘う手間が省けたよ。終わったら夜食、食べに行きな。」
来たか…… せっかく良い気分になったのになぁ。まぁ、どの道なんかあるだろうからしょうがない
「はは、やっとこの空気の理由が知れるかもなんですね…… 」
「あんた、まだわかんないのか…… まぁいい、ちゃんと行きなね。」
だから何をだよぅ
「了解です。」
掃除を終え、夜食に向かう
「はぁ…… どうしよう、タダ飯だけど有料でいいからどっか行きたい。」
「おう、お兄ちゃん! うまい飯と最高の風呂だったぞ! 」
びっくりしたよ、元気な声ですな
「それは板前が聞いたらさぞ喜びことでしょう、ご満足いただけたなら…… 」
「もうちょいくだけろ、仲居のお兄ちゃんも良かったが乗客のお兄ちゃんとも話したい。」
そっちのほうがよっぽど面白い人だろ
「いいんすか金払って来てるなら、接客された方が良くないですか? 」
「これも接客だろうよ、オッさんの話し相手も。」
「それだとそっちが接客になりますよ? こんな、美人とは縁遠い男相手だと。」
「たくよぉ、なんでそんなに面白い舌持ってんだよ!悪いな引き止めてまだ仕事あんだろ? 」
「それも仕事ですからね、今度また惚れさせて下さいねその運転の腕に。」
「おうおう、ちゃんと酔わせてやるよ。」
「そりゃ酔い止めじゃ、効きそうにないですね。」
「当たり前だ、アッハッハ! じゃあな。」
「おやすみなさいっす。」
偶然の出会いにしゃ、そこそこ良い出会いかも
「これで、女の子だったらなぁ…… 考えるだけ虚しくなるな…… 」
この気分のまま帰りたいけど、行くか死地に
さぁ、どんなロン○ヌスの槍を突き刺すんだ?




