20話 大丈夫でしょ、いなくても
三章 二十話 「友達の在り方は…… 」
もっと重い内容かと思ったから安心した。いや、お嬢さんや松柴さんにとっては大事なことだからな…… 誰か〜 なんか切り出して。
「別にやりたきゃ、入りゃあいいじゃんか! なぁボウズ? 」
一番乗りは高井さんか、たしかにその通りだと思うんすよね。でも……
「たしかに、簡単に考えればそうかもしれないですけど、松柴さんの性格やお嬢さんの立場から考えるとちょっと複雑かもっすよ。」
「どこが複雑なんだよ、お嬢ちゃん達がやりたいならやる! やりたくないなら無視すりゃいい。」
「わ、私はやらないわよ! 初絵にもそう言ってるし…… でも初絵はやってみるべきだと思って、今お節介してるの。」
「お嬢さんの立場をそれなりに理解した上で、言うんすけど入部くらいならしてもいいんじゃないですか? その後は行ける時は行く、みたいな感じでやってみては。」
なんとも俺らしい考え方だけど、2人の望むものを満たしてると思うんだよなこれなら。
「ダメ、私はやるならちゃんとしたい! …… それにあの学校は部活に入ってるメンバーは基本的には参加しないといけないの。バイトを禁止してる分、部活には力を注げってこと。」
なんて融通のきかない学校だ…… ん、バイト禁止ならお嬢さん達は?
「お嬢さんや松柴さんは働いてますよね、大丈夫なんすか? 今更感すごいっすけど。」
「女将と学校長が昔からの知り合いだからね、私と初絵は例外。」
おお、なんていう説得力
「なるほど、なら余計にさっきの案が一番ですよ。」
「どうゆうことよ? 」
「だって禁止してる分、部活に精を出せならお嬢さんと松柴さんは、その例外とやらで通せるのでは? それに松柴さんはちゃんと参加するんですし。」
「全然一番じゃない! 私はやるならちゃんとしたいの! それに…… やっぱり仕事を優先させたいんだ。」
うーん、お嬢さんはあんまし乗り気じゃないな。そもそもゲームしてるところ見ないもんな。それにこの話しは松柴さんに対するお節介だったはずだ……
「全然ニブイんで失礼かもっすけど、松柴さん…… 一人で行くのってそんなにハードルが高いですか?」
「…… あ、…… そ、それは…… はい。」
相変わらずかわええなぁ…… じゃなくて!
「す、すいません失礼っすね。たしかに入部しまーす! ってキャラじゃないですもんね。」
「絶対に入るべきだと思うの私は。 初絵が部活の張り紙を見てる時、良いなって感じの顔してた。幼馴染なんだからわかるの! すごいお節介で強引に勧めてるけど…… それでも。」
「わかってるよ、みーちゃんが私の為に言ってくれてるってこと。でもね…… やっぱり…… 。」
「なんで!? 旅館のことだって心配しないでいいって言ってるんだし。それとも私が一緒じゃないから? そうなら少し腹立つ。」
「お嬢、美味い飯食って落ち着きな。」
「高井さんは黙っててよ! 」
「お、おう。」
情けねー! どうしたオッチャン、いつものようにあっけらかんとしてろよ。やばい、この空気は重い…… なんでこんな急に重くなるの? ま○マギ?
鯛ごはんだよ、めっちゃ美味いのに…… 箸が進まない
「お二人の話しを聞いてるかぎり、その部活の先輩はいい人だと思うんすよね。だから松柴さんもあまり考えすぎずに軽〜く行ってみたらどうですか? 」
「そうだよ、あの先輩なら優しく迎えてくれると思う私も。それに二人しか部員がいないなら、余計入りやすいじゃん。」
「そう…… だよ…… 二人しかいない。だから入りづらい、入っても後輩が私一人だと結局、先輩達で会話とか盛り上がって居づらくなると思う。」
なるほど、それはたしかにあり得る話しだ。だからお嬢さんと一緒の方がいいのか。
「それは少し入りづらいかもですね。松柴さんでなくてもハードル高いかもっすよ。」
「わからない、入るくらいなら別にいいじゃん! その後に嫌なら退部するとかあるんだし。」
「それって個人の評価を下げますよ。お二人の通ってるところは一応お嬢様学校なんすから、入部して即退部じゃウケが悪くなる。松柴さんはそこまで考えてるんじゃないっすか? 」
「…… は、はい…… たしかに…… それもあるんです。」
「そんなんでいいの!? 初絵! 友達できないまま卒業だよ、入る前からそんなこと言ったってしょうがないでしょ。二人しかいないなら、話しやすいだろうしそこから仲良くなるのよ! 」
「みーちゃん…… そんな簡単に言わないでよ。それができないから私は…… 。」
おいおい、マジでやばいぞ。これあれじゃん喧嘩するパターンだよね。どうしよう…… つか竹やん! お前さっきから全然喋らないな、よし足でどうにかしろって合図を送ろう。 お、気づいたな……
え? なぜ立ち上がるんだ
「どした? 竹やん。」
「ご、ごめん。そろそろ仕事に行くよ。」
テンメェ、今日は俺を惚け魔にした挙句この状況もポイかよ! どんだけ苦手やねん会話すんの
「そ、そうか頑張れよ〜 。」
おい、アイツ…… ジェスチャーで後はよろしくってサイン出して行きやがった。頼りならないパーティーだわホント
「そ、そもそも…… なんでこんな会話になるの? みーちゃんが見学に付いてきてくれるで、終わりだと思ってたのに。」
「やっぱり私は初絵にはしたいことしてほしいって思ったんだよ。それにどうせ見学行って、それきりにする気だったでしょ? 」
「…… ずるいよ。」
箸が…… いや、指が動かないんですけど。食いたい、3口くらいで止まってるんですが俺の鯛達。
でもちょいと言いことがあるな…… はぁ、こんなキャラじゃねぇんだけどなぁ
「そんなに友達作らないとダメっすか? 」
言っちゃった〜
「はぁ!? なに言ってんのアンタは! 友達作らないと初絵は誰も喋る相手いないんだよ。そんなの私はいやだ。」
「そんなの大きなお世話だよ。私だって変えたいけどできないよ…… できないんだもん。」
「大きなお世話か…… その通りだよ、でも私は引かない。初絵は優しくて気もきくんだ、友達できないのがおかしいくらいなの! 陰口だって言われてるんだよ…… 聞きたくないよそんなの。」
「ホントにずるいよ…… そんな話し今関係ない。それに無視すればいいのに。」
「…… 。」
「…… 。」
「友達…… 友達がいてなんか変わります? 話す相手ができる、いいっすね…… でもそんなの大抵はその学校生活で終わりですよ。いなくても生活に困る訳じゃない、むしろ変なやつだったら余計な問題に関わる羽目になることだってある。ま、俺が言ってもあんまし説得力ないですけど。」
「わかんないよ…… いた方がいいに決まってる。卒業後だって仲良いままかもしれない。アンタのはひがみでしょ。」
「かもしれないっすね。でも問題は解決しました。にしても羨ましいな、ホント羨ましいっすよお二人が。」
「? 」 「? 」
「わかんないっすか、お二人とも既に友達も友達じゃないですか。何を二人して変な空気なってんのかなぁと思ってたんでずっと。互いのことでこれだけ真剣に考えて、それを言えるのはそうそうあることじゃないです。有象無象の友達とやらはただ話して、時間を空費してそれで終いだ。相手に合わせるだけじゃキャバクラかホストクラブ行けばいい。こんな絵に書いたような友達、そうはいないですよ。」
「あ、アンタ…… それはずるいよ。」
「みーちゃんが言う? 」
「私は…… まぁずるいかも。」
「私もずるいね。」
「見学は行こっか、約束だしね。」
「うん、行こう。」
「…… うやむやかな? 」
「いいと思う、みーちゃんと友達だって改めてわかったから。」
とても良い空気を感じたのに、台無しにするような声が響いた
「んで、グチグチ言ってないで二人は行くのか? さっぱりわからないな今時の子は。」
「高井さんは黙ってるの! 」
「高井さん…… 空気を読ん…… で、ください。」
よーし、俺からも一言言ってやるか
「シェフ高井…… シャット、アップ、プリーズ、サー 」
「オッチャン…… 今日は悲しいからもう帰って酒飲むわ、バカヤロー。」
なんつー断末魔だよ。でも……
「ゲームか…… 何するんだろ?」
「みーちゃんなら、アクションとかじゃない? 」
「どういう意味!? たしかにやってみたいけど。」
これでやっと箸が進む。鯛〜 ただいま! 俺の口と胃袋が待ってるぜ。
そういえば…… 割と真面目な話しだったのに女将さんが一言も喋ってないような……
「んぎっ! 」
思わず、声が出るほどの形相だ。怖すぎて…… なんで?




