19話 やっぱり小さいよね
三章 十九話 「泣きそうに…… 」
うひゃー、美味そうだな。鯛の炊き込みご飯に煮付け、野菜の天ぷら、サラダ、ここまで豪勢なのは久しぶりだな。もしかして、俺が若干サボったのがバレてお別れ会的なやつなのか? …… ホントに泣きそう、だとしたら。
「き、今日はなんでこんな豪華なんでしょ。もしかして訳ありっすか? 」
聞いてしまった……
「なんだボウズ、素直に喜べなかったのか? 鯛だぞ鯛! 健大なんて、嫁さんに持ってくって喜んでたぞ。」
「やっぱり原さんは嫁さんに会いに帰りましたか、羨ましいっすね〜。たまには一緒に食べたいもんすよ。」
「ボウズと違ってあいつは女の扱い方が上手いからな。それにこの料理だって、作るの手伝ってから上がったからな。仕事もぬかりねぇよ、なぁ?ボウズ? 」
「ぐっ、俺だって魔法を教えたりするのは上手いんすからね! 仕事だって今日はすこし油断しただけで、普段はバリバリっすね。」
そう、今日だってホントなら仕事をスムーズにこなし、帰宅してから電源オンにしてモンスターから守りながら、あの子やあの子と強くなる予定だったんだ。
「魔法? ケータイの女の話しなんかしてどうすんだボウズ! 」
「全然違うんすけど!? ケータイじゃなくて、ちゃんと家庭用の高いパッケージ版です! 大好きなやつなんて限定版を未開封、通常版をやり込む用で買うくらいは嗜んでるですから。」
ここで信仰勢の方々なら保存用、鑑賞用等々4つくらい買っているに違いない。マジ尊敬するっす!
「よくわからんが、とにかく変わってんだよお前は! たまには浮いた話しの一つでも頼むよ、酒の肴にしてぇから。」
このオッチャンめ、いつか布教して2次元は最高ってまで言わせてやる
「浮いた話しなんて期待しないでください。俺のなんて肴になるどころか、下剤になりかねないんで。」
「それはあるな! 面白いこと言ったなぁ。 アッハハ〜! 」
はぁ、鯛料理に免じて許してやるんだからね! それにマジで3次元で恋愛絡みなんて、クソめんどくさそうで考えるだけでも俺には下剤になり得るしな。ま、経験ないけど…… 。
「いや〜 、でもホント美味しいそうっすね。早く食べましょうよ。」
「美味いなんて当たり前だろうが、俺達の料理が不味かったことなんてねぇよ。」
「言うようになったねぇ、ここに来てすぐの料理なんて、そこいらの奴が作った方がよっぽど美味かったじゃないかい。」
おお、さすが女将さん! 絶対言えないぜそんなこと。そうか、高井さんにもそんな時期があったんだなぁ
「そん時の料理、食べてみたいですよ。」
「女将〜 、そいつは内緒にしててくださいよぉ。俺のガキん時の料理なんて食べれたもんじゃない。」
「そうかい? 私は、単純だけど丁寧に丁寧に作ろうとして出てきた、不器用な料理を不味いと思ったことはないよ。」
「照れますよ…… もう勘弁。」
すげー、これがボスか…… 付いて行こう。
「照れてる高井さんなんて、今後10年くらいは見れないですよね。」
「うるせぇ! いいから惚け魔は黙って食え。」
「惚け魔でも、食べていいでしょうか。」
それ言われると箸が持てないよ。どうしてくれんねん照れ魔。
「凛誉だって今日は惚けていたみたいだけど、仕事はよくしてくれてると思うよ。3年前なんて生まれたての子鹿みたな奴だったけどね。でもお客様からの評判は良いし、優しい子だからねあんたは、根性は半分腐ってるけど、皆んななんだかんだ認めてるよ。」
お、お、お、女将ざぅぁぁん! 一生付いて行くっす!
「誰もいなかったら、半泣きしてました。」
「半泣きかい、あんたらしいね。さ! 早く食べるよ。」
危なかった…… マジで泣くところだった。今日はいじられすぎてちょっとのことでもコロッと落ちちゃいそう。あれ、竹やんか? あそこにいるの。
「お、竹やん! 竹やんも一緒に食べる? 」
「食べる食べる、そろそろ交代だから今起きたんだ。にしても今日は豪華だね。」
そうかこれから巡回の仕事か。夜の見回りとか怖そうなんだよなぁ
「俺もなんでこんな豪華なのかは知らないけど、仕事に向けてありがたく頂戴しとけって。」
「今日はたまたま、こないだキャンセルがあって来なかった宿泊客の分の材料が余ってるから、ダメにならない内に捌いてもらいたかっただけよ。」
「なるほど、だそうだ竹やん。キャンセル客にありがとうございますだ。」
「キャンセル客にありがとうなんて、あんたはバカか! やっぱり謀反を企むだけあるわ。」
やっぱりそのネタ引きずるのね。
「お嬢さん、謀反ネタはもう勘弁してください。女将さんの前ですよ。」
「おばぁ…… 女将の前だからこそ、洗いざらい白状して身を清めるんでしょ! 」
「大丈夫ですよ、ボクノカラダはとても清いですし、何よりこの旅館のためなら一日中温泉に浸かってもいいと思ってます! 」
「おお、結構覚悟あるんだな。」
「宮君、それって別に苦じゃなくない? むしろ温泉に入れてラッキーなんじゃ…… 」
竹やん、それは秘密だろう
「かなりの苦行だろ、温泉だぞ! 熱いぞ! それを一日中浸かるんだから相当な覚悟が必要。」
「たしかに一日中はキツイかも。」
甘いな、俺なら内緒で冷水も入れるから適温で過ごす気満々です
「それでも俺はやる、それだけ旅館が大事ということだ。」
「珍しくカッコいいこと言うわね、そんなに思ってくれてるなんて。」
チョロいな。でも旅館が大切なのは本心だからな決して嘘はついていない
「マジでそろそろ食べま…… 女将さん、もう食い始めてる。俺達もいただきましょうよ。」
「「「いただきます(まーす)!」」」
美味い! なんだこのご飯…… マジでご飯なの? ちょっと魚混ぜただけでこんなに違うのか!? すごいな料理の世界って
「マジうんめぇっす! 料理スキルが高いとモテるってわかる気がします。」
「そうか! まぁこの俺が作ったからな、不味いもんは出さねぇよ。」
「ホント美味しいわ、高井さんが若かったら婿入りをお願いしてかも。」
「うれしいねぇお嬢、でもオッチャンは胸のデッカい娘がタイプだからお嬢はあと10年欲しいな。」
「なっ!? 私の…… む、胸はた、たしかに他と比べたら少し、少〜しないけど、ちゃんと成長してるし! あと一年もあればきっと…… 」
「くっくっ…… ぶふっ!」
やばい…… 耐えられず笑いが……
でもさすがに一年じゃそのお淑やかな胸は、そのままではないかと
「コロス」
「勘違いしな…… いでくださいお嬢…… さん…… ぶふっ! 」
耐えて〜 俺の本音耐えて〜
「殺す」
やば…… 目が覚醒してる
「誤解も誤解ですよ! 喉に詰まったんですよ。危なかった〜 せっかくの料理を吹きだすところでした。それにセクハラっすよ。」
「お嬢も松柴の嬢ちゃんみたいに、立派に育ってくれたら婿入り考えますよ。」
「ぶふっ!…… ホントにセクハラで訴えられますよ高井さん。」
たしかに松柴さんのはすごい。高校生ってこんなに!? って思ったくらいだからな最初見た時。
「セクハラの前にあんたを八つ裂きにして、私も出廷するから大丈夫。」
「どこが大丈夫なんです!? それに女将になる前にそんなことしないでくださいよ。」
「そ、それもそうかも。」
「みーちゃん…… ご、ごめんね。」
「なんで初絵が謝るの!? やめて謝らないで! ホント惨めになるから。」
松柴さん、 グッジョブ! その大きなむ…… じゃなくて器を少しはお嬢さんも見習ってほしい。
あれ? そういえば相談云々の話ってどうなったけ?
「お嬢さん、さっき言ってた相談って…… 食事の時にするって言ってたので。」
「あー、あれねそんな大したことじゃないよ? 初絵と部活の話をしててさーー 」
それからお嬢さんの学校で起きたことの説明を受け、 一通りのことはわかった。
でもそれって俺達に相談して何か解決するのか? ま、少しは真剣に考えてみるか…… ゲーム部ってマジであんだな。




