128話 服か……
三章 百二十八話 「服か…… 」
結局、あの後もいつも通り時間が過ぎて、大会までの日にちが近づく。俺は何もしてないのだが…… まぁゲームの大会なら、練習しなくても少しは役に立てるはずだから大丈夫。
そして、相も変わらず部室で仕事もせずにサボってる。ほんと俺がここに勤めてる意味なくね? いらないだろ、こんなのただの給料泥棒ですよ。
「今日も今日で、全然やることねー 」
自分でやることを探す…… なんてことはしない。
そんなことしてたら、良い警備員さんになっちゃうだろ? 俺は仲居さん以外、真面目に仕事するのはイヤだ。早く解雇してくれよ校長。
「何言ってんだお前…… さすがサボらせたら、右に出るものがいない最低の社会人さん 」
良いツッコミだ久野。今いるのが久野でよかった〜 お嬢さんだったら、女将さんに告げ口されて俺は仕事する選択肢を与えられただろうからな。
「社会人なんていいことないから、どうにか楽する方法を模索するもんなの。いいことと言えば、18禁ソフトを手に取れるくらいしかない 」
ここで俺の言っている18禁はエロ方面じゃないぞ、あれは俺には早すぎる…… 鼻血出ちゃうからな。
グロ系とか、ホラー系にも多いから。
「セクハラするなら時間考えろ、緋夏に変態行為してみろ? バラバラになる覚悟しておけよ 」
「お前らにセクハラするくらいなら、あの校長にするわ。それから、あんなお子ちゃまに何かしても全然萌えないから安心しろ 」
ぺったんこにするセクハラはない! ぺったんこに需要があるだと? それは2Dに限るのさ。
3Dでもお好きな人は…… 専門店でしか、やっちゃダメだよ?
「お前に緋夏の可愛いさは理解できるわけないか 」
「一生…… 来世…… 転生…… しても理解できるかどうか 」
「最低の社会人で、最低の師匠だな 」
「なら、可愛い可愛い、大好き大好きって言ったらどうするよ? 」
「もちろん、去勢と矯正じゃね? 」
「ほら、俺は正しいだろ 」
お前みたいに、ライクを越してラッブにはならないが、ちゃんと可愛い? とは思ってるような、ないような…… どっちだよ。
ただ、ここで直球なことを言えば俺に待ってるのは痛みだけでしょ。
肉体的なね……
ーー 放課後になってしまった…… 時間が経つの早いわ〜 最高です。
放課後には、部員全員が集まっている。
「師匠も練習してくださいよ! FPSをナメたら、死にますよ? 」
「してるしてる、帰った後にいつも頑張ってるよ 」
もちろんオフラインの平和なストーリーモードで。
「オンラインですよね? 」
「俺はソロプレイヤーだから 」
「オフですか…… 郷橋さんも松柴さんも、ちゃんと立ち回りの練習してるのに、師匠がしてくれないと当日になって連携が取れません 」
「はいはい〜 ちゃんと当日までには、できるようにしておくって、そう心配すんなよ 」
大丈夫だろ、どうせテキトーに撃ってれば勝てるでしょ? なんせこっちには、世界ランカーの部長さんがいるんですから。
「う〜…… 心配です 」
「負けたら、宮田に色々奢ってもらうでファイナルアンサーだな 」
「俺が敗因に限るって付け足しておけ。それに大会って言っても、そんな大規模なやつじゃないだろ? 」
たしかそうだよね? だってそんな大きな大会だったら、こんな地方じゃなくて東京とかでやるだろ。
「規模は小さいかもですが、参加する人は有名勢多いですよ 」
「そうそう、ちなみに緋夏もそこに入ってる 」
「いいね、なら勝ったも同然だ 」
もう俺いらないだろ、4人で出れるように主催側に申請しろよ…… そりゃ無理か。
「私1人で勝てるほど、大会って甘くないんです。こういう集団戦ルールのやつは、連携がうまくいかないと、どんなガチソロプレイヤーでも即死が待ってます 」
「へぇ…… そりゃ難儀なことで 」
ガチソロプレイヤー? お前は、ガチ世界ランカーでしょ? そこいらのとは次元が違うと信じてる。
弟子頼み…… なっさけねー
でもな〜 練習って…… ゲームは楽しくやりたいんだよ。そんな甘えを許してほしい。
「先輩、それにいくら言っても聞きませんよ。旅館でも、なんとか楽しようと模索してるやつなんで 」
「お嬢さん〜 旅館ではクソ真面目じゃないですか〜 楽しようじゃなくて、もっと効率良く回せないかと模索してるんです 」
さすがお嬢さんだ、よく知ってますねー 俺は効率良く回せばと思ってはいるが、常に最善の選択をするから、これ以上改善のしようがない。
それくらいに自信持ってやらないと、仕事はストレスを溜めるだけになってしまうからさ。
それでバレて、いつもお説教なんだけどね。
「なるほど…… てことは、師匠はそうやって眺めてるだけではなく、立ち回りの改善するべきところを見てるってことですね! 」
「え…… あぁ、そう…… ね 」
良い子だ…… 悪い子の俺の心に、聖剣ぶっ刺してきやがる。そんな考えてませんでした、ごめんなさい。
「あっ、大会当日は朝早いですよ。師匠は起きれますか? 」
「そこは大丈夫、旅館の仕事なんて朝5時からやってるんだ。早起きくらい日常の生活なんよ 」
これもごめん…… 最近はこっちの仕事の時間に、慣れてきて8時起きくらいになってる。
これは俺のせいじゃない、学校が悪い。
「なら安心です 」
「まさかとは思うけど、当日もそんな格好で来るつもりか? 」
「格好? 」
俺の顔じゃなくて、格好? ジャージだな。
「たしかに、師匠っていつもそれですよね 」
「あぁ…… これな、通販で買ってさ、1着かなって思ってたら、なんと3着セットだったんだ。そんでラッキーって感じで、洗い回して着てる 」
あの時は喜んだな〜 安くて、3着ともサイズバッチリだったし、文句なし!
「まさかとは思うけど…… それしかないのか? 」
「え、うん 」
ないよ? ダメなの?
「まじですか師匠…… 」
「ダメか? ダメなのか? 」
なんでそんな目で見るの!? 今まで、気にしたことなかったけど、もしかしてアウト?
「私もあんたに言おう言おうと思ってた。旅館でも言われてるわよ? いつも同じ服しか着てこないって 」
「まじ…… ですか 」
同じ、じゃない! ちゃんと3着あって…… 洗って…… あれ? 同じ服だ……
「宮田さん…… 気づいてなかったん…… ですか? 」
「全然知らなかったです 」
知りたくなかったです、できれば永遠に。
「あんなにたくさんゲーム持ってるのに、なんで服は買わないんですか 」
「いらないと思ってました。どうせ何着ても、似合わないだろうと思ってました 」
「似合わないのはわかる。だけど、少しくらいはファッションにも金使えよ 」
「服に金なんて、もったいないと信じて生きてきました。そんなのに使うくらいなら、ちょっとお高いランチを食べたほうが良いと信じてました 」
「でも師匠…… その格好でずっといるのって、恥ずかしくないですか? 」
「おかしいな…… 全然気にならないんです 」
もうやめて、わかったから、俺が狂ってるのね。
「これは…… 更生のさせ甲斐がありますね 」
「いいね、いつやる? 」
「大会が終わってからとか、どうでしょう 」
「先輩、付き合います 」
「宮田さんの…… 更生プログラム 」
「あの…… なんの話しをしているのですか? 」
仲間はずれ? 悲しいぞ? あと、更生ってなに? もう遅いよ、とっくに更生期限が切れてるから何やっても手遅れ。
「師匠! 」
「は、はい 」
「今度、服を見に行きますよ 」
「いや、いらなーー 」
「行きます! 」
「お手数おかけ致します…… 」
服を見に行く…… だと!? そんなことより、大会のことだけ考えてろよ。俺にそんな時間使うだけ、もったいないぞ。
服か…… 考えたことなかった。




