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すんません 、「俺」は、記憶ないっす  作者: 志奏
三章 「果つることなき想いは再びに」
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126話 優しくすんなよぉ



百二十六話 「優しくすんなよぉ 」



言っちゃったよ…… どうしよ…… 正直、二度と関わらないように努力する予定だったのに、早速それが崩れた。


「これを、渡せばいいんだな 」


こんな薄っぺらい紙一枚を渡すのに、俺の精神エネルギー全部注ぐ必要があるとはな。


「そゆこと、まぁ頑張れよ 」

「師匠、ファイトです! 」

「もう泣かしちゃダメよ 」

「だね 」


「こっちが泣きそうになってるんで、その心配はいらないっすよ 」


もうここで泣いて、涙枯れ果てさせてから行こうかな……


「そんじゃ私が行くか? その場合、諸々の事情でモメてリアル格ゲーする可能性がある 」


「そして私の場合は、なんやかんや口論に発展する可能性があるので 」


「なんやかんや口論に発展しないかもしれないだろ? 」


なんやかんやってなんやねん…… だがたしかに、桜守が行くと生徒会の子達から嫌味的なこと言われたら、即反撃するかもしれん。


勝ったとはいえ、あの生徒会のことだ…… なんやかんや言ってくる可能性が…… なるほど、これがなんやかんやね。


「私と初絵は、最上級生と部長がいる場合は理由がないと無理だからね 」


「だいたい口論になる可能性があるのも、行きにくいのも、誰かさんが会長を泣かすから 」


「はぅ…… ちゃうもん…… ほんとはこっちが泣きたかったし、なんで泣いたのかな? 」


理由はわかるよ、でもさ…… まさか泣くとは思ってなかったんです。だけど、あの時の言葉はどれをとっても酷かったのもたしかだし…… うん、泣くね。


「よかったじゃない、一生女の子を泣かすなんてできないと思ってたけど、あんたでもそれができるって証明したんだし 」


「ふふっ…… 罪な男っすよね 」


一回は言ってみたかった…… できれば、こんな状況を期待したわけじゃないけど。


「ほんと罪だよな 」


「はぅ…… 行って…… きます 」


罪には罰を、そうか…… これが罰か。


重いぜ……





生徒会に向かう途中の階段を上る時の、一段一段がとても幅が広いように感じた。


歩幅も全然ない、何もかもかも重くなってる気がします。これが罰の力か…… 強すぎる。


生徒会室が見える、今度は苦しい…… 息をするのが辛いんだ。これが罰の意味…… 恐ろしい。


「はぁはぁ…… 着いちゃった 」


なんなら、苦しみのまま歩いてる方が良かったくらいに、このドアを開けたくない。


このドアの先には苦しみより、辛いのが待ってるんじゃないの? 開けていいのか…… このまま帰った場合を考えてみよう。


うんうん…… 明日のお昼前には、俺の灯し火が消えてるな。


「ごくっ…… 開ける…… 開けるぞ 」


手が震える…… 呼吸が速くなる…… なんていう霊○だ。もしくは、気的なやつを感じる。


俺みたいな栽培○ン…… いや、ヤムチ○の相棒のプー○ルには強すぎるぞ。


だがこれを乗り切れば、待っているのは贖罪と自由…… 耐えろ、この数分のやりとりで全て終わるんだ! 行くぞ!


俺は、ありったけの勇気を出して煉獄のドアを開ける。





「あの〜…… お忙しい中、大変恐縮なのですが…… 提出する書類を持参致しました 」


我ながら、なんで学生にここまで下に出るんだ? ってくらいに下から行ったぜ。


だって怖いんだもん、この生徒会の会長ズがさ。


「!? あなたは…… 」


会長さん…… とても驚いてますね、いきなり来てごめんなさい。そんで、他の役員の会長ズも勢ぞろいですか……


「あなたは対抗戦の時の雇われ警備員…… 」


「そ、そうです…… 雇われの身で図々しいのですが、この書類を受理してほしくて 」


好きで雇われんてじゃないのに、好きでこんなところいるわけじゃないのに、悲しみで潰れそう。


俺は…… 託された紙を…… 渡そうとしてーー


「近づくな、この下衆! 」


「はぅあ! げ、げすぅ…… な、な…… 」


なんだ、何が起きた? いや、言われた?


整理するんだ、たしか……下衆と言った、下衆…… 言われ慣れてるはずなのに、とてもとても心に突き刺さるのですが。


「喋るな! この鬼畜! 」


「おべばっ!! (※悲鳴です ) 」


き、鬼畜!? なんでだ? なぜ会長じゃなく、役員の子達に言われんだ…… どの道、ダメージ半端ねぇ。


落ち着け、耐えろ…… 耐えろ……


「あなた達…… 少し落ちつーー 」


「会長は下がって! この変態鬼畜に、指一本触れてはいけません! 」


「あばば…… (※力尽きる寸前です) 」


くっ…… ダメージ量が多すぎる…… 体勢を保てない、ダメだ…… 足元から崩れる。


俺は床に手をつき、なんとか意識を保ってる。


「「「「会長に近づくな下衆!」」」」


「ふぉっべば!! (※断末魔です) 」


もう無理…… 現実でここまで敵意を向けられるとは、これは慣れてないから耐え…… られん……





「はぁ…… 私は大丈夫です。あなた達も役員として、与えられた職務を全うしなくては 」


「会長…… しかし 」


「大丈夫です…… おそらく、部活の申請書類を提出しに来たのでしょうから 」


「部活の…… ですか? 」


「ええ…… 違いますか? 」


「あ…… あ…… あ…… 」


その通りです。なんの間違いもございません。間違っているのは、俺という存在なんです。


それにしてもダメージが凄すぎて、呂律が回らないよ。目だけはキョロキョロ動くのに。


「今のはこちらが失礼でした。要件を伺います 」


「うぇ? …… あぁ…… はい…… えっと 」


そうだ、俺にはこの書類を提出するという役目がある。これさえ終われば俺は自由にーー


書類を渡そうと会長さんに近ずくと


「ひっ …… ご、ごめんなさい 」


おい〜 なんだその可愛い反応はよ〜 やめてくれよ〜 もう完全に俺が悪役だろうがよぉ……


「会長!? やっぱりこの男…… 下衆が! すぐ離れろ! 」


「すみません、少し取り乱し…… !? 」


「あ…… うぅ…… うぐっ…… 」


ダメだ…… 耐えられん。


「なんで泣いて…… 」


「「「「泣いてますね 」」」」


「ご、ごめん…… うぅ…… なさい…… ぐすっ 」


涙が止まらねぇ…… 悲しさが俺を支配するよぉ、でもそれよりも…… 誰かを恐怖させた自分が、途轍もなく嫌になったよぉ。


そんなことで泣くほど、良い男じゃないのにぃ…… どうしてこうなったの?


「あの…… 泣かれては困るので、中に入ってください 」


「いえ…… ぐすっ…… この書類を…… うぅ…… うぅ 」


情け無いどころじゃないよね? ドン引きだよね? ごめんね。でも許してください…… 慣れてないんです、こういうの…… というか初です。


役員の子達は、まさか警備員が泣くとは思ってなかったのか、一歩引いた距離で様子を見てる。


泣かせたのはそっちだぞぅ……


「受け取ります、受け取りますので泣くのは…… 」


「ごめんなさい…… うぐっ、ぐすっ…… それじゃ…… ぐすっ…… 失礼しました 」


もう帰る…… おうちに帰りたい。


「あの…… よかったら使ってください 」


ハンカチティッシュをくださいました…… 優しくすんなよぉ…… ですます口調の面倒な奴でいてよぉ。


「あり…… うぅ…… ありがとうごじゃいます 」




頂いたティッシュを早速使って鼻水を出し、目から出てる液体を拭き取って、その場を離れる。


会長さんは気のせいだろか、心配そうに見送ってくれた。優しくすんなよぉ……


役員の子達も、最後の方は申し訳なさそうな顔で伺ってた。やめろよぉ、完膚なきまで叩き壊してくれた方が楽だよぉ……


宮田凛誉史上、類を見ない黒歴史が刻まれた。


月○蝶でも消せないな……








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