124話 そんなに良かった?
三章 百二十四話 「そんなに良かった? 」
のせられた、でもやってやるか。
どーせ、できないだろうけど、桜守しかいないんだし…… ちょっとくらいならね。
「で、なんだっけ? 」
「対抗戦の時みたいな、両手にペンを持って剣みたいにぐぅおんぐぅおん! 的な感じで! 」
「なんだそれ、はぁ…… やるぞ 」
はい、布団入って阿鼻叫喚が確定ですね。
絶対こいつには、誰にも言うなって釘を刺しておかないと。
「おぉ…… 覚醒師匠をまた見れるなんて 」
「そんなんじゃねぇ…… んじゃ、無双乱舞〜 こうか? 」
「もっとやる気出してください! 手をこう、もっと自信満々に広げて無双乱舞! こんな感じです 」
「てか、無双乱舞ってなに? どこのパクリ? もう少しネーミングセンス磨け 」
ゲームのやりすぎだぞ、ゲーム部の部長よ…… あっいいのかそれは。
「いや、これが一番です! ほんとカッコ良かったんですよ 」
「こうか? 無双乱舞〜 」
なんだろう…… 前、お嬢さんと松柴さんに見せた時と違って、今回は一応この部の為にはなったんだよな。
だからかな、桜守のカッコイイカッコイイはほんのちょっとだけ、嬉しさを与える恥ずかしさになってるんだ。
「もっと覇気を! ぐぅおんぐぅおん!です 」
「乱舞〜 どや 」
「もっとカッコ良く! あの時を思い出して! 」
「もうお前に師匠譲るよ。もう一回聞いちゃうけど、そんなに良かった? 」
個人的にはすごくカッコ悪いと思うんだよな、あの時の他人に対する認識や、言葉遣い、どれをとっても認める気はしない。
でも、誰かにここまで素直にカッコいいと言われるのは初めてだ。チョロいな〜 俺は。
「めちゃくちゃカッコイイです! 」
「ふーん…… よし、ちょっと本気出してみますか。いくぞ、必殺! 無双乱ーー 」
やるぞ! と思った瞬間、部室のドアが開いてーー
言葉通り、できないなりに少し真面目にやってやろうと思ったんですよね〜
そしたら、ドアが開くんですよね〜
入ってきたのが、見られちゃダメランキング一位と言っても過言ではない人物でして。
「…… は? 」
うゎお久野さん…… 冷めた視線をくれますねー
「あっ珠希、おはようございます! 」
「緋夏、おはよう…… で? お前はなにしてんの 」
「えっと…… 魔王を倒す訓練 」
急に登場するなよ、事前に打ち合わせしておかないと、こういうことになるのでちゃんとしてくださいね? 阿鼻叫喚じゃ済まないぞ、これ。
家帰ってから、精神崩壊の未来が見える。
「なに言ってんですか〜 しっかりしてくださいよ、二十歳超えで一応職員の宮田さん 」
「ば、場のノリ的なやつだよ。桜守も言ってやってくれ 」
なるほどな、久野にさん付けされるのはイヤだな。
敬称は大事だが、例外があるって学びました。
「だって珠希、あの時の師匠めちゃくちゃカッコイイじゃないですか? だから再現ブイをご本人にお願いしてたんです 」
「なーる、なんだてっきりその歳で幼児退行が始まったかと思ったよ 」
「なわけないでしょ 」
俺がいつバブバブ言ったよ。頭の中はたしかに、いつも幼児退行してるけど、現実ではまだやってない。
「そんで? できんの? 」
「やろうと思ったけど、無理だな。全然やり方がわかりませんね 」
「自分でやったことなのにか? やっぱり、あの時のは先生達と口裏合わせてやった芸か 」
「お前の俺に対する信用がゴミ同然っていうのがわかった。ちなみに癒着作戦は考えたけど、実行してねぇから 」
癒着作戦さえうまく実行できたら、何もかもスムーズに解決したと今も思ってるぞ。
「ゴミ程度もあるなんて思ってんの? 」
「え…… それすらもないですか 」
嘘だよね? 俺、ちょっとは頑張ったじゃんか…… 褒めてとは言わないけど、ちょっとは甘やかして。
「珠希、それは言い過ぎですよ〜 」
「ゼロじゃないから信用はしてるじゃんか、これは評価してるってことさ 」
「お前はあれか、俺を雇ってるなにかですか? 一応、信用してくれてるっぽいですが 」
あれか、ツンデレ? キモいからやめてくれよ。
まず、デレがないんだよ。
…… あっても俺の体が拒絶反応起こす危険あるな。
「してるしてる。信用するから、お小遣いくれ 」
「唐突になに言ってやがる…… よし、いいこと教えてやろう。どっかのおじさまに可愛い子ぶって近づけ、そしたらお小遣いくれるよ 」
やれば援交になるかもしれないから、俺にそそのかされたって言うのはなしね。
「すげー警備員ですねー、女子高生に援交を勧めるなんてー、逮捕されますよ? されてください 」
「え!? 師匠、そうなんですか!? 」
「いや、違…… そういう意味で言ったんじゃ…… 」
ごめん、まんまその解釈で合ってます。
「とにかく! 俺は、いたって健康ってことでこの話しは終わり。さて久野、昨日頼んでおいたことは成果あり? 」
そう、これが今日のメインだ。ここでの仕事? そんなのはメインじゃない、下手したらサブにもならない。
昨日、帰る前に久野に少し頼み事をしてた。
他の子よりも、こういったことは久野を頼るのがいいかなって直感で判断してな…… 松柴さんとかでもよかったけど、万一お嬢さんに知られると厄介? のような気がして。
「師匠、珠希に何か頼んでたんですか? 」
「ちょっとな 」
「怪しぃ 」
「怪しいのは元々の素質だから許して。それとも、師匠にあらぬ疑いをかける……のか? 」
どや! お前らに大根役者って言われたから、少し仕返ししてやるよ。ちょっとうるうるの感じを出してみたぞ。
「はい、かけます 」
「即答!? お前もお前で信用ないな…… 」
師匠泣いちゃうよ? 弟子の前で情け無い姿を永遠と晒し続けますよ?
「信用はしてますよ、そうじゃないんですよね 」
「難しいな、んで久野…… どんな感じだ 」
「お前のことが、ネットに載ってないかってやつだろ? 」
「そーそ 」
ナルシスト? そんなことはない。だが、あれだけの芸当を見ちゃったら、少し疑いを持つだろ。
自分に疑いなんてかけるなんて思ってなかったが、意識が俺に戻るまでの間のこと…… 何一つ良かったと思えることがなかった。
ひどい認識、最低な言葉使い、だが畏怖を覚える知識もあった……
有名だったりした? って、思ってね。
「自分で調べればいいのに 」
「やったよ昔、ただ上手い調べ方がわからんから、名前を検索するくらいしかしてない 」
「で? その結果は 」
「姓名判断、星座占い、そんくらいしか 」
世界の大多数の人間はこんな感じのはずだ。
「私のも大して変わらないよ、お前の名前からネットで検索する、親にそれとなく聞いてみる、どれも反応無しが成果だ 」
「そうか…… 手間かけさせた 」
「その歳でボケるのは苦労するな 」
「はいはい、介護していただきありがとうございます 」
そうなんだよ最近、体が勝手に動くわ喋るわで病院の世話になる日も近いと思ってる。
「お前の介護とか絶対お断りですね、足も手も頭も顔も腐ってるだろ 」
「すげぇ全部じゃん、でも心は腐ってない辺り救いようはあるから安心した 」
実際、一番腐ってるのは心だと思ってたんだけどな。
「心は大丈夫、汚れてるだけ 」
「珠希は師匠に容赦なさすぎ 」
「ほんとだよ、これ俺じゃなかったら先生にイジメられてるって密告されるね 」
イジメだもんだって、俺は無抵抗なのに四六時中攻撃をやめないんですぅ。そろそろグレて世界を憎むかもしれないよ。
「冗談のやりとりだよ。8割しか本気じゃないもん 」
「もんって、可愛いく言ったつもりだろうけど…… 8割本気の発言は殺傷力高いわ 」
そこはせめて半々くらいにしてほしい……
「んで、残り2割がちょい本気 」
「全部じゃん!? 100パーセントじゃん! 」
刀で斬りつけた後に、小刀で止めを刺しに来たか。
「それじゃ珠希も来ましたし、そろそろ何かやりますか 」
「今日からは堂々とできるな 」
「これで心置きなく、サボりに浸れる 」
「サボりじゃなくて、大会の為に頑張ってくださいね! 」
「ポケ○ンの大会なら活躍できるんだけど 」
FPSは苦手…… なわけじゃけど、オフラインのストーリーしかしてないから、オンライン対戦のルールとか全然知らないよ。
たまに動画で見たことあるが、あれは動きが別次元だから即負けそうだなって思いました。
なんにせよ…… これで当面は何もないな、あったとしても警備員の仕事関係は、最終手段で校長に全責任をなすりつけることができるから安心だ。
やっと積みゲーの消化ができる。




