123話 なに…… してんの?
三章 百二十三話 「なに…… してんの? 」
結局、旅館の方には行かないで寝てしまった。
また夢を見るかなと思ったけど、残念なことになんも見ることなく目が覚める。ほんと夢が、選択可能ならこの世界平和なのに。
「さて、行くかな…… はぁ 」
正直なところ、行きたくねぇ。
昨日、あそこまで盛大に目立ってしまったからな…… 噂とかあったら、どうしよう…… 自意識過剰? いいや、絶対にある!
最近、思うようにゲームできてないな〜
これもそれもあれも、全部学校に行くように仕向けた社会が悪い。
ゲーム部でやろうにも、大会に向けてFPS系ばっかりだろから期待するのもちょっと……
まぁ最悪は、黙って部室借りてやるけどね。
いつも通りに階段を降りて、いつも通り? にお嬢さんと会う。
「おはようっす 」
「おはよ…… 今日は休みかと思ってた 」
「そうしてもいいんすけど、別に体はなんともないので大丈夫かなと 」
そりゃ休みたいっすよ、でも休んでると女将さんに何か言われるし、怒られそうだし、プラスなことがないと判断しました。
「へぇ…… 殊勝ね 」
「いつでも有給はウェルカムなんですけど、まだ有給貰えるほど働いてないんで 」
有給取れればもちろん大義名分で休む!
しかし、あの学校に勤めだしてまだ半月も経ってないのに出るわけねー
「なら死ぬ寸前まで働いて、それから有給貰うことね 」
「ブラックすぎますね、それ 」
将来俺の…… いや、旅館の従業員全員の上に立つんですから、もうすこしホワイトになってください。
「え、貰えるだけよくない? 」
「え、深淵すぎますよ 」
深淵つーか、闇だわ。
その後はいつも通り、バスに乗り、学校へ行く。
その間…… 普段より、会話が少ない気がした。俺と喋るのがつまらないなら分かる、でも今日はたぶん違う。昨日のことを考えてるのかしれん。
それを聞いてどうなるわけでもないので聞かない。
なぜなら俺も知らないし、興味も…… 興味はあるか…… 自分のことだもんな。
ただ、今はそんな気にしないかな〜
人様に迷惑かけるようになってしまったら考える。
あっと言う間に学校に着いた気がする。
「それじゃ、行ってらっしゃいっす 」
「はいはい、行ってきます 」
お嬢さんと別れたが、ちょっと気になることがある。
なんか…… また視線を感じる…… ゴ○ゴか!?
ゴ○ゴには会いたいが、どうやら違うみたい、行き交う生徒に注目されてる。
察しはつく…… 昨日の対抗戦だろ? 気持ちはわかるよ、でもやめてくれよ〜 俺みたいな人間に、それは毒だよ〜 見られるのが辛いんだよ〜
何も知らないし、第一に。
警備員室に向かい、田嶋さんに挨拶しに行くと……
「あ、おはようございます! 昨日は勝ったんだって? おめでとうだよ 」
「え? あぁ…… ありがとうございます。部員の子達が努力した成果ですね 」
この反応、たぶん田嶋さんは俺が何をしたのか知らないな…… よし、このままいきましょう。
べつに、自慢するようなことじゃないし。
「宮田さんの貢献だってあるから、自信もちなって 」
「ですかね、まぁ俺なんて見てるくらいしか出来ない奴なんで、あの子達には申し訳ないですよ 」
「それでも宮田さんがいなかったら、対抗戦の人数も足りないんだよ? だから感謝してると思うな 」
「そう言ってもらえると、すんっごい億劫でしたけど行って良かったです 」
億劫なんてもんじゃないけどね。
でもそっか…… そんな考え方もあるのか、俺は都合良く理由されてるもんだとばかり思ってたわ。
「それに、すごいね! あの生徒会長に勝つなんてね〜 …… そこが一番驚きだよ 」
「…… はは、勝負なんて時の運も絡みますし、きっと会長さんのコンディションも万全の状態ではなかったかもしれないので、なんとも 」
思い出したくねー、あの子が泣いてる顔が頭のほんの一部を完全に支配してるんだよぉ……
泣いた原因が…… まぁ…… ねぇ……
「そんな謙虚な人だったの? 人間として、好感が持てるよ。なんにせよ、おめでとう! そして今日も仕事よろしくね 」
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致します 」
謙虚? いやいや、そんな美しい思考タイプではないですよ〜 自分がやった感覚がないだけなんで。
あの考え方、それに言動、どれをとっても不快だったからな。
あれ…… これって、自分が嫌いってことになるのか? それはないな、自分だけは大好きだし。
挨拶して、いつものように、いつものように、なんも悪びれることなくサボりに来た。
だが、ドアの前で立ち止まってしまった…… なに緊張してんだよ? 入ればいいだろ。
最後に倒れたことを気にしてるのか、それとも…… ええい! 変に考える無駄だ。俺もわからないって言えば終わりだろう、よし入ろう。
「おは〜 今日もサボらしてちょうだーー 」
最低の挨拶と共に目に入ってきた光景に、俺は戸惑ってしまう…… いや、ひいてしまう。
「覚醒! 必殺無双乱舞〜 !! 」
それは一応高校3年生で、一応この部の部長である桜守の高校生というか保育園、幼稚園がやるお遊戯会に来てしまった? って感じの光景だ。
両手に筆記用具を持って、ブンブン振り回してる。
危ないからやめなさい。
「なに…… してんの 」
素直な感想、理解すること叶わず口に出してしまった。いくら師匠と呼ばれてても、わからないものはわからないんだよ。
「師匠! おはようございます! ふふーん、これは昨日の師匠の真似ですよ。カッコイイのでパクリました 」
「なんのことやねん 」
なに言ってんだ、こいつ……
今までカッコイイなんて言われたことないから、ちょっと困惑…… それに真似られたこともない。
真似しちゃダメ! って言われことならある。
「めちゃくちゃカッコ良かったじゃないですか、昨日の! だから私も、師匠の必殺無双を会得しよかと 」
「そゆことね…… とうとう見た目だけじゃなくて、頭の中までその見た目と同レベルになったのかと、心配したじゃんか 」
ほら、急に始まるって言うじゃん?
「それ私の見た目、どう見えてるんです!? 」
「どうって…… まんまだろ 」
小学校高学年くらいだね。
「どう見えてるんですか…… まぁいいです。それよりも、師匠もやってください! というか、教えてくださいよ 」
「いや〜…… さすがにできませんね 」
誰がやるか、そもそも俺がやったと言えないと思うほど自覚ないのに。あったとしても、やらんと思うが……
「やってくださいよ〜 めちゃくちゃカッコ良かったんです〜 」
「いやです〜 できません〜 記憶にございません 」
それから恥ずかしいですぅ! 恥ずかしくなってきましたぁ!やめてくれよぉ
「あ! わかりましたよ? 能ある"鳩"は爪を隠すってやつですね? 」
「鳩じゃなくて鷹な、そんな大層なもんじゃない。あれは…… なんか知らんけど、できちゃった感じだから無理 」
鳩って…… そこいらにわんさかいますよ。俺の隠してる爪がその程度って言いたいなら、その新しいことわざを受け入れるがね。
「なるほど、無意識の覚醒…… カッコイイ 」
「なんで中二病リスペクトしてんの、とにかくカッコ良くもないし、もうできねぇよ 」
「う〜…… わかりましたよ。ならせめて、ご本人の再現を見せてください! 師匠ができないってことは理解したんですけど、あのカッコ良さ…… どうしてももう一度見てみたいです! 」
「そんなに…… カッコ良かった? 」
あら、そんなに?
カッコイイ連呼されたことなんてないから、かなり嬉しいぞ。やってやってもいいかな〜
できるかな? いや、ここでできれば俺はかなり上のステージの人間になれる! あの時と同じことができたら、金儲けとか楽勝じゃないか。
「めっちゃカッコイイです! 」
「よ、よーし…… やってやるべ! 」
ほんと場の雰囲気に流されやすいな〜
絶対後悔するぞ? きっと、思い出して布団の中で阿鼻叫喚するよ? 知らないよ。
ま、今いるのは桜守だけだし、ちょっと試す感覚でやってみますか。
覚醒、必殺…… カッコイイな。




