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すんません 、「俺」は、記憶ないっす  作者: 志奏
三章 「果つることなき想いは再びに」
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118 在りし日の片鱗 前編



三章 百十八話「在りし日の片鱗 前編 」



最終戦が始まった…… 会長さんは3つの内1つから書き始める。案の定、書く速さは一定で迷いもなく解いている。勝てるわけがない。


「はぁ…… 」


俺はというと、目の前の問題が何一つ分からないので、ため息を吐きながら問題が貼ってあるボードを見つめてるだけ。


「…… …… はぁ 」


一応、ペンは持って書くような姿勢はしてるが、一切進まない姿にこの場の観戦してる、生徒と先生は何て思ってるだろう。


分かんないのかよ! かな?

ほんと…… 最悪の羞恥プレイだわ。





ーー 観戦サイド(校長視点)


2人が舞台付近を見つめながら会話をしている。1人は教頭、もう1人は学校の長。


「校長先生…… あなたがお雇いになった、あの警備員はどうやら立ち尽くしている様子ですね 」


「みたいだ…… まぁ、私も学力で判断して雇ったわけじゃない。だから期待もしてないが…… あそこまでとはね 」


「相手も悪いですよ。我が校が誇る最高の模範生です。そして…… あなたのお孫様でもある 」


「身内は関係ないさ、あの子がどれだけ出来てもそれは個人の努め次第だ 」


「それにしてもひどい…… あんなのを雇うなんて、初めてあなたの意向に異を唱えたいものだ 」


「ふっふっふ…… 頭の良さは、何も学力だけではない。機転の利く利かないは学力で推し量れないからね 」


「機転が利くようにも見えないですよ、あれじゃ 」


「それは分からないさ、だがたしかにもう少しくらいは…… 抗ってもらいたいね 」


「部活側に勝利してほしいと? 」


「いや、真正面からの否定も経験してほしいと思ってるだけだ 」


「? 」


「身内の話しだよ 」





ーー 観戦サイド(部活側)


「師匠…… 止まってますね 」


「ありゃ完全に沈黙ってやつだ 」


「まぁ…… うちで働いてる時も、勉強とは無縁な生活してたと思うので 」


「うん…… 宮田さんからそういうのって、全然想像できないよね 」


「初絵…… 結構言うわね 」


「え!? そ…… そうかな…… 」


「師匠には気負いしないでほしいですが 」


「戻って来たらテキトーに歓迎してやれば、けろっとしてそう 」


「そんな単純ですかね 」


「大丈夫だって、あいつはそんなのに潰されない 」


「それに先輩、少しは緊張するっていうのを経験させてあげればいいんですよ! 」


「みーちゃんもキツいんじゃ…… 」


「私はいつもよ 」


「師匠は…… 案外繊細な人だと思うんですけどね 」


「あいつが? 繊細どころか、押しても引いてもけろっとしてる感じがしない? 」


「珠希は押しすぎですよ 」


「手頃なサンドバッグ的な? 」


「珠希…… 師匠泣くと思うので言っちゃダメですよ 」


「はは…… かもな 」




ーー 再度、舞台下…… 試合中の2人に視点は戻し



すげ…… 一つ目のボードがそろそろ終わりそうだな向こうは。こっちは相変わらずの0点確定中…… この差はなにぞ?


単純にそういうのと、無縁なままで良しとして来た俺が一番の理由だと思うけど。


「ふぅ…… 」


どうしよ…… あと何分で終わるんだ? 足が疲れたよ。こんなことを考えてる、とてもあの子達には口が裂けても言えないか。


「フッ…… まさかその程度も一つたりとて、解くことができないとは…… 呆れ、失望でしょうか 」


「なにか期待してくれたの? そいつは光栄ですよ。でも残念ながら、この通りでしてね 」


まさか君に期待? されてるなんて思ってなかったよ。俺に期待できるのは、上手なサボり作法くらいだよ。


「時間の無駄…… この対抗戦に応じることなく、早急に廃部を認めれば良かったのにと思いますよ 」


「そりゃ無理だ。なんせあの子らにとっては、とても大切な場所らしいので、君の声一つで頷くわけない 」


「結果が見えてるのに、こんなことをする必要はないと言ってるんです。しかし、敗北者の在り方や末路を知らしめるには…… 良い見世物ですが 」


「また敗北者か…… それは決め台詞かな? 」


なんとも悪役らしい台詞ですよ。ま、君は悪役じゃないんだろうけどね…… この学校からしたら、さぞ立派に映るんだろうな。


「敗北者の集まりじゃないですか 」


「前と同じことを言うよ。俺は敗北と友達だけどさ、あの子達や他の人は違う 」


「いいえ、全く同じです。桜守緋夏…… 彼女は入学からの数日間、登校拒否を犯しています。その後はあの部活に入って登校はするようになりましたが 」


「…… …… 別に、数日くらいなら問題ないよ。俺だったら、3年間丸々引き籠ると思うし 」


実は少し驚いた。あの聞かん坊が? そっか…… 登校拒否か…… でも、お前の先輩とやらが誘ったの? 全く、良い部活に入ってラッキーだな。


「くだらない。久野珠希…… 彼女はこの学園に通うには、いささか分不相応です。彼女の家計では、学費を納めるので手一杯…… いつ滞るか、分からないレベルの低い家系に生まれてます 」


「そんなこと言ってたら誰も入学できないな。君は久野だけだと思ってるのか? 他にもいると思うけどね…… それに、あまり感心できる言動じゃない 」


貧乏なんて世の中の大多数を占めてるぞ? 俺なんて、趣味に全力投球してるから、いつもスカンピンだし。


それに久野だぞ? あいつにお淑やかな生徒とか…… キモいわ〜


「それならば、それに見合うように学園生活に従ずるべきです。松柴初絵も久野珠希と同じです。1人親家庭で姉妹がいる…… 低い層の家計ですね 」


「それも同じさ…… 松柴さんだけじゃない。1人親なんて、見渡せばどこにでもいる…… そんなことで敗北者と決め付けるなら、君はどこまで…… それを言い続けるのかな 」


松柴さんが1人親なのは知ってる。でも本人曰く、とても今は楽しく生活してるって、お嬢さんが言ってたらしいから大丈夫。お嬢さんに言ったってことは…… 本心だろうからね。


俺なんて0親だぜ? すごいだろ。


「害と判断するものは全てです。そして、郷橋未羽…… 彼女は親を亡くし、祖母に育ててもらっているーー 」


「…… 」


そうだよ。お嬢さんは女将さんに育ててもらったんだ…… なるへそ、だから怖く逞しくなってしまわれたのか!


「その祖母が旅館の経営者…… 以前も言いましたが、すなわち敗北している。他の職に就くことを拒み、他人に迎合する人生を選んだ…… 全てが敗北者として、出来上がってるんです 」


「はぁ…… 言ったはずだ…… それは違う。女将さんは何よりも、来る方全てに対して心地安らかに帰ってもらいたい…… それを喜びとしてるだけだ。お嬢さんも、それに憧れて…… 日々努力なさってる。君が言ってることは根本から違うよ 」


やべーな…… ちょいと熱が入ったか…… 最近ほんと狂うわ〜 直さなきゃ。


「ならあなたは根本から理解していない。何を言おうと、抗おうと、これに負ければ全て無駄です。負ければあなた達が否定されて終わり、こちら側が是としてことを成す。そもそも…… 私は違っているとは思いませんが 」


「残念だ。理解してとは思わないけど、まさかここまで絶対の自信があるなんて…… 君はガキンチョじゃなくて…… 餓鬼だ 」


間違ってる自信を持つことは、あまり良くないよ。そのまま進むなら、君の横には誰も立たないで終わる。今、横にいる役員の子達もいつかは離れる…… そして、何もなくなるぞ…… たぶんな。


「皮肉のつもりですか? それならば結構…… しかし、あなたは目の前の問題を一つたりとて解けていない。私は会話しながらでも、着実に進めている…… これが結果です 」


「…… …… 」


「残り15分前後…… もう私は一つ、ボードを解き終えています。3つ全ては難しいですが、それでもあなたが逆転不可能なくらいには差を広げる 」


「…… …… 」


やっぱり…… 結構お喋りさんだ。無口キャラよりは、わかりやすいから楽だけど。でもこのタイプは難しいな〜


「言葉すら出ませんか、それも仕方ないでしょう。早々に教授されて、今後の人生を送ることをお勧めします。敗北者は改めることを知りなさい 」


「…… …… 」



負け…… か…… 廃部…… 嫌だなぁ。


でもごめん、桜守…… もっと嫌なことがある。旅館の人全てを否定されたのは、ちょっとキツイな。


負けて戻っても、お前らは笑って迎えるんだろ? そんで、内心はボロ泣き…… それも嫌だなぁ。




ん? 違う…… 俺(僕)が気に入らないのがーー




《劣化種風情が勝ち負けにこだわるな、畜生以下の貴様らが…… 勝ち負けを論ずるなど、なんと滑稽で浅ましいことか 》




あれ…… また…… 俺の考えとは違う、知らない、言葉が脳裏をよぎる。




あの時と一緒だ。





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