117話 どんだけ〜
三章 百十七話 「どんだけ〜 」
さてと…… それじゃ今度は俺が、みんなの立っていた場所に行くか。できれば行きたくなかったけどね。もうここまできたら、ヤケだよ。
舞台下のテストを受ける場所には、すでに生徒会さんがいらしてますね。
あの時以来だな…… 覚えてる?
「どうも、今日はよろしくね 」
よし、かなりラフにいけたぞ。
「よろしくお願いします。しかしあなたも災難ですね 」
「災難? 」
災難か…… でもそれね、この学園に来た時点で既に災難なんだよなぁって、言うと君は怒るかな?
「あんな娯楽紛いの部の為に、こんな場所に立つ羽目になるとは…… 仕事の邪魔では? 」
「どうかな? むしろ、あの部がある方が仕事的には助かるんだよ? 」
もちろん仕事をしない為に助かるってこと。サボってゲームして、マンガ読めるんだぞ? そんな簡単に手放せるかよ。
「それは初耳です。あんな敗者の集まりのどこに、そんな価値があるのでしょうか 」
「敗者ねぇ…… 君はその言葉が好きなの? 前会った時も言ってたよね 」
そのせいで少し会話に熱が入っちゃったんですぅ!
「勝負と同じです。勝ちか負け、その意味で敗者を使っています。彼女たちは等しく敗者です。だからこそ、あの部は傷の舐め合いをしてるように映るんですよ 」
「傷の舐め合い…… すごいね、そこまで一方的な解釈はそうそういないよ 」
何が見えているのでしょうか? とても深刻なので、今すぐかかりつけ医に相談しましょう。
「そう言えば、あなたも敗者の側でしたね。なるほど…… 余計に必要のない部です 」
「あの子達には必要な場所だと思うよ。たしかに側から見れば、遊んでるように映るかもしれないけどね 」
まぁ…… そこはゲーム部なんで許して。でも、桜守と久野はガチ勢だし、大会上位陣だから、競技性の面でも評価してやってくれ。
「映るのではなく、遊んでいるのです。学校の部活としての役割を果たしていません。それに、そもそも顧問不在の規則違反は許すわけにはいかない 」
「そこはグゥの音も出ない…… ならさ、会長さんの鶴の一声で助けてやってよ 」
「ふふ…… なかなか洒落たジョークですね。今から潰そうとしてる人間に、それを取りやめるように促してほしいと? あり得ないでしょう 」
「だよね 」
凍てつくギャグじゃなくて、洒落たジョークって言われぞ? ほら、やっぱりユーモアに富んでる。
談笑とはいえないが、会話してる途中に先生がやって来る。
「2人共、準備は整っていますか? 」
「まぁ…… たぶん 」
準備? なんもしてねぇよ、勉強しろと? こんな歳で勉強なんてゴメンですわ。
「問題ありません 」
「それでは最終戦は3科目、国、数、英で大丈夫ですか? 」
「え、あぁ…… まぁ 」
何も大丈夫じゃないです。どれもわからないんですけど。
「そちら(部活側)がよろしければ、その内容で私は問題ありません 」
「それでは両者共、位置に移動してください 」
そう言われて、ボードの置いてある方に行ってみるが…… 生徒会側と距離が近いんだけど!?
さっきまでの試合は、かなり離れてたよね? なんで? 最終戦だし、3科目だからなの?
「こりゃまた、迫力がある 」
3科目、3つのボードが真正面、左手側、右手側の側面に置いてある。3つとも手を伸ばして届く距離だ。なかなか競技らしいじゃん。
「勝てそうな科目はありますか? 」
「残念ながら1つも…… だからみんなには、謝ってある 」
君が実は俺と同じ学力とか? 出される問題が、小学生レベルだったら勝ち目がある。あっ…… 科目次第では小学生レベルも怪しいか。
「良い心がけです。敗者としての自覚がある分、あなたはマシですよ。あの部活紛いの部員もどきは、その自覚がない 」
「顧問不在は最近起きた問題でしょ? 部活紛いはおかしな話だ。部活として認可を受けたはずだよ 」
「おそらく、小賢しい策を練って通したのでしょう。あんな内容の部活を我が校が、認可するわけありませんので 」
「推測でものを言うのは良くないな〜 認めるに値すると、判断したから存在してたんだよ 」
でも久野なら、桜守の為に色々と考えると思うな。
たしか…… 部を創ったのは、桜守達の先輩って言ってたっけか。
「ならば…… その過ちを私が正す。その為に今日は、この場を設けたのですから 」
「過ちと言うほどかな? 俺の目には、あの子らが君に対して、学校に対して、何かしでかしたとは思えないんだけどな 」
「そこが違う…… あの部みたいのがある、それだけで我が校にとっての恥、害を及ぼしていると思いますが? 」
「ほんとに暴論じみたことがお好きですね 」
そこまで主観的な判断で、全てを実行できるとはね…… 独裁者の素質があるから気をつけて。
「暴論? 前も言った覚えがありますが、これは至極正論だと思いますよ 」
「恐ろしい正論だ。それが正論なら 」
「あなたにも分かるように、本当に意味のある部活と言うものを見せてあげましょう 」
「? 」
そう言うと会長さんは、舞台の上に行き、誰かと話してる…… サプライズ? 嬉しいな〜 絶対違う。
すると、20〜30人ほどの生徒達が出てくる。マジで何をするのですか? みんなでお歌でも披露するのか? 音痴だぞ俺は。
「許可は得ています。後ほど、タイミングはお任せするので合唱をお願いします 」
「マジで歌うのかよ…… 」
それって必要? 何を歌うの? アニソンですか。
そして会長はまた俺と同じ、ボードの置いてあるところまで降りてくる。
「今日はコーラス部に頼んで、第九の合唱を披露してもらいます。これは、部活とは何かを鮮明に覚えてもらうのと、私の勝利に対する賛美歌です 」
「第九? 良い趣味だけど、季節が違うな〜 もうちょい寒い日にお願いしたいよ 」
第九って…… 君はいくつですか、それにこの選曲なら大晦日あたりに、こたつ入って聞けって。
「季節? これは歓喜の歌と言うのです。学園に害を及ぼしている輩を、一斉に粛正できる…… 歓喜せずしてなんと言うので? 」
「はっはっは…… どんだけ〜 」
口調が、iK○KOになるくらいやべぇ。
自分の目論見に合うなら、どんなものでも活用するんですね。まさかコーラス部を引っ張って来るなんてさ。
どうやら、本当に事前に知らせてあるのか…… さっきの先生含めて誰も驚いていない。そこは俺みたいにどん引きしてくださいよ。
「それじゃはじめてもらいます。用意はいいですか? 」
「大丈夫…… です 」
用意ってなんのだよ…… パンツ一丁になっても、何もないてですが?
「いつでも 」
「それでは、最終戦…… スタートしてください 」
始まった…… 公開処刑が。
ひと通り目を通したが、やっぱりどれもわからない。大学一般だっけか? 出題されるレベルがさ、問題の意味が理解できない。
これをみんな受けてたのか…… 科目は違うのもあるが、ちゃんと勉強してないと一点も取れないな。
だから俺は一点も取れないで終わる。
あの会長を肯定してしまうのは、嫌だな……




