116話 本当に申し訳ない
三章 百十六話 「本当に申し訳ない 」
希望を抱く…… それも人間、さらに自分より年下で背も低くて、話しも聞かない一直線タイプの子にだ。物や宣伝に希望や期待を持つことはあるが、こんなのは初めてだよ。
お前が負ければ、たぶん俺は…… あぁやっぱり現実はこんなもんだよって、何かをまた忘れるような気がしてる。
俺は何もしない、できないのに何様だよって思うよ。それでもさ、それが人の在り方の一つなんだ。
他人に対して、勝手に希望や願望を押し付けるのは忌むべきことだろうけど、それでも…… 押し付けさせてくれ…… お前は負けないし、みんなを導くって。
「お、来たか…… 」
おそらく最後の結果になるだろうことを、報せに来る先生が見える。
「来ましたね…… ふぅ 」
「さすがに緊張だわな 」
「ふっふーん…… 緊張してます。たしかに 」
「大丈夫だ。結果は聞かずとも、勝ちは揺るぎのないものなの 」
これは自分に言い聞かせているのか? それとも、願望からの独りよがりか…… どっちも同じだな。
「師匠〜 良いじゃないですか、今のは結構かっこいいですよ 」
「ふふーん、そうだろ? 」
「緋夏緋夏! 絶対勝ってる! 間違いない! どう? 私はかっこいいか? 」
お前は嫉妬深い兄弟の片割れか! 頼むぞ〜 桜守、ちゃんと同じこと言ってやってくれ。じゃないと、ひどい目に遭うのは俺なんです。
「珠希は何もしてなくてもカッコイイですよ? 」
「そうか? そっかぁ…… んふふ〜 」
うっえ〜 桜守に対してのこいつは…… マジでうざキモいんだけど!
ま、親友なんだなって思うのと…… 愛と言動が地球を救うレベルで溢れてますね。
「さて、そんじゃ…… 結果に耳を傾けますか 」
結果はわかると言ってるが、それでも変わらずにそれを伝えにくる、天の使いなのか…… それとも地獄からの使者なのか…… 先生って怖い。
「それじゃ採点の結果が出たから、同じように口頭でするよ 」
「よろしくです 」
どこもよろしくない。前の二回は、ここからとんでもないほど緊張させる羽目になったんだ。
でも別に…… 松柴さんやお嬢さんが負けたとは思ってないよ。2人は勝ってる、身内の偏見って思われてもいいさ…… 2人とも勝者で間違いない。
「ゴクリ…… 先生、結果は? 」
「ゴクリ…… 緋夏は勝ってますよね? ね? 」
「ゴクリ…… 先輩は勝ってます! 」
「ゴクリ…… ゴクリ…… 」
もういっそ、4人でゲームじゃなくて漫才部とかしたら? そこそこ面白いよ。
俺はしない…… なぜなら、もうゴクリは何回もやって、唾液の味に飽きたよ。汚いな。
「あはは…… 焦らずともちゃんと言うよ。まずは生徒会なんだけどーー 」
「生徒会が…… 」
なんかテレビ番組の、答えを焦らしてCMの後! ってやつが、定番の理由がわかった気がします。
「84点 」
「すげ…… もう当たり前かよ 」
マジなんなの? 数学って、15分そこいらでそんな点数取れるの? 癒着でしょ? 許すから教えて。
「さすがです。なら私はもっとさすがです 」
「緋夏は満点だよ〜 」
「お前ら…… そうだな、満点だ 」
その自信はどっからくるんだ? そんなツッコミはいらないな…… 俺もそのうちの一人だから。
「それじゃ、部活側はーー 」
「こっちは? 」
心の準備をさせてくれ…… そんなの無理ですよね。
「89点 」
「…… お…… おぉ 」
勝ってる…… よね? 部活側はって、言ってたよね?
勝ってんだよね! 勝ってる!
「勝ちましたー!! 」
「最高だ! さすが緋夏! 」
「先輩! ありがとうございます! 勝ってます! 」
「先輩…… ありがとう…… ございます 」
「ありがとうございます! 勝ちましたよ、師匠! 」
「うぃ…… …… か、勝ったな…… すげぇ 」
信じてたよ? だから驚きは…… ある! さすが最強の部長さんだよ! 勝ったんだよ、お前は。
「あれれ? 師匠は勝ち確を信じてませんでしたか? 」
「超信じてたよ。さすが、師匠を軽く超えてくる弟子だよ 」
「だから超えてませんって…… 勝ちました 」
「ありがとう…… おめっとさん 」
感謝と労いの言葉…… ほんとは感謝しかない。おかげで、希望だなんだってやつを忘れずに済みそうだ。ありがとうな。
「ではでは…… どういたしましーー わぶっ!? 」
「緋夏ぁ! やっぱりかわちゅよ〜! ありがとう! 」
久野が格ゲーキャラ顔負けのダイブで、桜守に抱きつきやがった…… 少しは憚れよ。
「苦しっ…… ありがとう珠希 」
「んへへぇ…… すべすべ 」
「おい変態…… やめなちゃい 」
すべすべって…… 絶対に感触が目的ですよね?
それにしても、なんつー緩んだ顔だよ。
「うるせ! これは私に許される特権なのら〜 」
「お嬢さんと松柴さんも、嫌ですよね? こんな先輩の姿を見るのは 」
後輩から言われたらやめるだろ。
「いんじゃない? よく見てるし 」
「先輩達…… 仲良いもんね 」
「さいですか…… 」
よく見てるんすね…… 頻繁に発生してるんですね。
仲良いのレベル超えてるよ。
もう少し、この余韻と茶番に付き合いたいが…… 残された不安が、頭をよぎる。
4回戦の勝ち…… すなわち最終戦もとり行う。俺まで番を回してしまった。
せっかく勝ってくれたのに、せっかく繋いでくれたのに、何もできない事実は変わらない。
「次は…… 師匠ですね 」
「そうだな。その前に一ついいかな 」
「? 」
「どうした? 会長の弱点なんかは知らんぞ 」
「なによ 」
「どう…… か、したんですか 」
「みんな…… 本当に申し訳ない 」
ふざけたまま通してもよかったが…… なんでだろ、桜守にも他の子にも謝っておきたくなった。
「師匠? 」
「生きてて? それなら私達はそんなに不快に思ってないから、大丈夫だ 」
「また何かしたの…… 今度はなによ 」
「宮田…… さん? 」
「せっかく…… 繋いでくれたのに、俺には何もできない。これは本当なんだよ。だから…… この対抗戦は負ける。ごめんなさい 」
そう…… ずっと言ってきたことだけど、それでも改めて言うのは…… 頑張りに報いることができないことに対する謝罪がしたかった。
「師匠…… 私達は、仮に師匠が何もしないで立っているだけでも感謝してますよ 」
「お前も言ってたじゃん、俺に番を回したら負けってさ、でもスマン…… やっぱり負担に感じさせてたっぽいな 」
「あんたが勉強なんてできないのとっくに知ってる。それでも、桜守先輩が感謝してるってのは本当よ? いなければ、ただ廃部するしかなかったから 」
「宮田さんはいつも…… 通りに…… してる方が、とてもらしいです。対抗できた、それだけでも…… 価値のあることです 」
たしかに言ってきたけどさ、いっそめちゃくちゃ罵ってもらった方が楽だよ。でも気を使ってる様子はない…… どんだけ良い子なんだか。
「…… …… ま! たしかに言ってきたよね! 俺に期待した方が悪いってな 」
「その意気を待ってました! それに…… もしかしたら、師匠の凍てつくギャグで会長をノックダウンする可能性もありますよね! 」
「その作戦はありだと思うぞ、緋夏。というわけで、お前はどんな手を使っても会長に一泡吹かせてこいよ 」
「あんたの絶対零度なら、一撃で仕留められるわ 」
「凍死…… 上手くいけばミイラ化も 」
え! そんなに凍てつくだと!? 勘弁してくださいよ。俺のユーモアセンスじゃ、この館内をサマーバケーションに変えることだって可能なのに。
「了解…… かましてきますわ 」
「師匠…… 」
「なんだよ 」
「行ってらっしゃい! 」
「もうちょい、2次元寄りならな〜 」
「ひどっ! 台無しですよ! 」
「台無し? 俺だぞ、そんなのは固定スキルだよ 」
行ってきてやるよ…… 恥をかいてきてやるっていったしな。
恥、それは…… この館内の生徒は少なからず、俺にも何かできると思ってるはずだ。それなのに何もしないで立っているだけで終わる…… 恥だろ?
だからここまで緊張するのさ、いくら恥に慣れてるって言っても、こんな大勢のでは経験がない。
ここはやっぱり、みんなの言う通りギャグでもかますか! 下ネタで行くか…… 捕まるかもしれんぞ。
すいません!
今朝投稿したやつと、こっちが逆なんです!
もし、先に読んでくださった方がいたら、本当にごめんなさい!




