111話 殺るぞ、な
三章 百十一話 「殺るぞ、な 」
お嬢さんは左右されることなく…… そんなわけないか、松柴さんのことを考え、これからのことを考えて今向かってくれてるんだ。
きっと、俺以上に緊張してるだろうな。この試合で対抗戦の勝者が決まるんだから…… 俺のせいで最後をカウントできないから、この3回戦目が要となる。
まぁ…… それを抜きにしても、勝ってほしいかな。
「師匠、郷橋さんは勝ちますよ 」
おいおい、お前はエスパーかよ……
桜守は察してなのか、ただ口をついて出ただけなのか知らないが、そう言葉をかけてくれる。
「余裕さ、なんせ負けるのを想像できない 」
「うっ…… ぐすっ…… 負けてしまって…… ごめんなさい 」
あ、やべ…… 松柴さんにも聞こえたよね!
すいません! 空気読めないクズで!
「うわぁ…… せっかく立ち直れそうだったのに、また傷を抉るなんてな 」
「久野…… 覚えてろよ…… 」
絶対、復讐してやるからな。そうだな、桜守が他の女の子とベタベタしてる写真でも合成してやろうか? あっ…… 俺にそんな技術ねぇや。
「負け…… ぐすっ…… ちゃいました 」
「いやいや…… いやいや! 実質、あの勝負は松柴さんの勝ちですって! 向こうは1年上っていう、超が付くほどのアドバンテージがありましたからね 」
この学校内においての平均を出題するなら、まだ勝負になるが…… 大学レベルとなると、そりゃ3年でしかも生徒会の優秀生徒のステータスをお持ちのあいつらとじゃ、分が悪いわ。
「宮田の言う通りだぞ、松柴。付け加えるなら、科目が英語っていうのも3年有利な科目だし 」
「私は羨ましいんですよ? だって、いまだに英語苦手で50点台ウロチョロしてます 」
「ぐすっ…… 」
「向こうも勝ち誇ってはないっすよ。そんなことしてたら言ってやりますって、いいでぇすくわぁ? おたくらは、試合に勝って勝負には負けてますよ? ってね 」
そんなことしたら、あの会長さんも出張ってきて、終わりのない口論になる予感…… めんどくせ。
「私らも加勢してやる。だけど、その前に郷橋のことを見ててやろう 」
「ぐすっ…… はい 」
「余裕なんですよね、師匠! 」
「もちのろん…… 勝つよ 」
そう信じるしかない…… 負ければ、桜守が戦う必要がなくなる…… 次に繋げないからだ。
もし、もしもこれが俺じゃなく他の生徒さんが参加してくれてたら、最後に希望を託すってことができるんだろう……
でも俺だとそうはならない…… 改めて思い知った。
ーー 舞台下、3回戦目の2人にて
また教師が、科目を確認してるようだ。
「3回戦目は古典で間違いないかな? 」
「は、はい! 」
「選択したのはそちらなので 」
「なら用意するので、少し待っていて 」
「はい 」
「はい 」
緊張するな〜 初絵の為にも負けられないし。
ううん違う…… 私が部活を続ける為に負けられない。
あっ、一応先輩だし挨拶しておこうかな。
「あの、よろしくお願いします 」
「よろしくお願いします。もう始まったのであれですが、できれば廃部を享受してくれてたら良かったのに、と思っています 」
「無理ですよ。理不尽な理由で廃部なんて、認めるわけありませんから 」
それも入って、まだ全然まもないんだよ。
これからもっと、先輩や初絵達と一緒に部活しようと思ってた矢先に。
「正当な理由だと思いますが…… どの道、この3回戦目も私達が勝つので変わらないですけど 」
「そうだといいですね。先輩って、楽しいですか? 生徒会 」
あはは…… 聞いてた通りの会長ズって感じ…… 口調まで全員同じなの?
「楽しさを必要とする活動ではありません。そう言った考えを持っているから、このように粛正の憂き目に遭うのです 」
「そんな考えだと、友達できませんよ? それに社会に出てからも大変そう 」
少なくとも、旅館ではやっていけないですよ。
あのバカほど、下に出る必要はないけど。
「これはこれは、劣等組みから御指南を受けるとは…… 恥です。それから、口の利き方には気をつけて今後の学校生活を送りなさい 」
「どうも。勝った後にまた、口を利きに行きます 」
元々負けるつもりなんて、なかったけど…… 絶っ対に負かしてやるから!
ーー お嬢さんと相手の生徒が、それぞれの位置に着こうとする
「うぉ…… お嬢さん…… 苦虫噛み潰した顔をされてるわ 」
あらら、絶対何かありましたね。何回も見て、何回も恐怖してるからわかる…… これは相手が悪い。
「おぉ、郷橋さんから勝つぞオーラが出てます 」
「勝つぞっていうか、殺るぞオーラな気がする 」
「勝つぞより、強いですね! 勝ちましたね! 」
「おうよ、ありゃ勝つわ 」
負けてみろ…… その怒りは俺に来る可能性があるので、絶対に勝ってください!
「郷橋も会長ズに喧嘩売られたかな? 」
「売られのか、お前は 」
「さぁ? でも、会長ズだぞ? 」
「そりゃ…… あの顔になるな 」
たしか、ですます口調のめんどくせぇ奴らなんだろ? ほんと会長ズだわ。
「みーちゃん…… 大丈夫かな 」
「大丈夫っすよ。松柴さんなら1番わかってるでしょ、あの子は負けない 」
「私は…… 負けました…… 」
「えぇ!? いや違うっすよ! 松柴さんの仇を討つって意味もあるんすよ、きっと 」
どれが地雷になるか、わからないよ〜…… いっそ喋らない方が正解ですか?
「郷橋さんなら討ってくれますよ! 」
「そ、それに松柴は負けてないって! 」
ナイス援護! 今のだけでも、ジュース奢る価値はあるぞ!高いエナドリでもオッケー
「ごめんなさい…… 暗くして…… しまって 」
「超楽しいっす! お嬢さんの圧勝劇を見ましょ! な、みんな! 」
頼む! 伝わってくれ! 桜守、久野。
「で、ですね! 勝った後みんなで、打ち上げでもしましょう! 」
「い、いいね! パーティ系のゲーム持ってこいよ! 」
「了解! パーティ系もいっぱい持ってるぜ! 」
伝わって良かったけど、嫌なこと思い出した…… 複数人推奨のゲームを、ソロプレイでしかやったことがなかったわ。
「勝ち…… ます。みーちゃんなら 」
「間違いないっすよ 」
「やるぞぉ! オーラですもんね! 」
「殺るぞ、な 」
そして、試合が始まる。
お嬢さんは勝ってくれる…… そう信じている。
押し付けるのは申し訳ないけど、希望っていうのはあった方がいいからさ。
ここに、希望を託すことが許されない本物のアホがいるのでね。
希望を託すことができるお嬢さんは、俺から見たら…… 羨望の対象になるかもしれないな。




