110話 俺かよ!
三章 百十話 「俺かよ! 」
2回目の報せを知らせに、先生がこっちに来た。
大丈夫なはずだ…… なんせ松柴さんが、頑張ってくれたんだぞ。絶対に勝ってるって。
「お待たせ。それじゃ結果が出てので、発表しますね 」
「よろしくっす 」
「来ましたね 」
「大丈夫だ。そう緊張すんな、松柴 」
「心配? 初絵 」
「う、うん…… 負けてたら…… やだなって 」
「大丈夫! 松柴さんは勝ってます! 先輩の私が保証しちゃいますよ! 」
「緋夏…… その保証はなにが見返り? 」
「ハッ! なにも考えてませんでした…… 」
「ありがとうございます。先輩 」
「大丈夫だから、初絵なら 」
「うん…… ありがとう 」
「余裕余裕っす 」
なんとなくわかってきた。きっとこの部のメンバーは実は優秀系ってやつだろ? ふふーん、俺みたいにアニメを日頃から観ているとな、そういうのがわかってくるんだぜ?
「それじゃ結果なんだけど…… 」
「はいーす 」
会場の生徒達も、さぞ驚いているだろう。なんせ初戦から生徒会に黒星をつけたんだ、こりゃ大番狂わせがあるんじゃない? って思うでしょ。
「まず生徒会側が、86点 」
「さすがの点数なことで 」
「師匠〜 褒めてどうするんです 」
「アホ、皮肉に決まってんだろ 」
「べ、勉強になります 」
「それもアホ、学ばんでいい 」
でも皮肉抜きですごい…… よくもまぁ、そんな点数をパンパカ出せるよ。
「次に、ゲーム部さんが…… 」
「が? 」
またまた90点台かな? さすが松柴さんだ。そんで点数をドヤァって生徒会に見せつけ、さらにドSなことを言ってくれるがお約束。
「74点…… 2回戦目は生徒会側の勝利です 」
「よっしゃ! 勝ち…… え、あぁ…… はい? 」
うん? 74点…… すごい高得点だろ。大学一般レベルの問題を高校2年の子が、その点数をはじき出す…… しかも15分の時間制限付きでだぞ。
それでも勝ったんじゃなくて…… 負けたのか?
「負け…… 」
どうしよう…… 松柴さん、言葉に詰まってるな。
なんとかしろ! 部長さん! いや部長様!
「…… 」
お嬢さんも唖然としてらっしゃる…… 人のこと言えないな、俺もそうなんだから。
現実を受け入れいれることは容易いが、対処することはどうにも難しい。
言葉が…… かけられない。
「す…… 」
俺がなにもできない、なにも喋れないのに、桜守は言葉をかけーー
「すごいです! 」
「は? 」
なにが? どういことでしょうか、部長さん。
「え…… 」
ほら、松柴さんも驚いてるやんけ。
「すごいですよ! 私なんて、英語は苦手分野なので2年生の時は散々な思い出しかないです。学園過去最低の20点台も記録したことが…… あったりで 」
「あったな〜 そんで先生に呼び出されて、お説教とお勉強をダブルで受けてたよな 」
「うっ、思い出すだけで頭が…… 」
20点台でも俺からしたらすごい…… そうじゃないな、桜守も久野も良い先輩だよやっぱり。
俺も便乗するしかない。年下の子が場を繋いでくれたんだ、上手く収めないと。
「そりゃひでぇな、松柴さんに先輩の称号譲ってもいいんじゃないか? 」
「いや無理ですよ、それ! だって…… 歳は…… どうしようもな…… いですぅ 」
「そうだった、お前の方が歳! はどうしても、上になっちゃうもんな 」
「歳の辺り、強調しないでくださいよ! 」
いやしかし、見た目だと絶対に松柴さんの方が歳上に見えるんだけど…… いや、桜守だけじゃない、この部で一番歳上に見えるくらいの発育なんだ。
変態ではなく、客観的に見る能力が優れてるんです。
「女に歳を意識させるなんて、やっぱりなってねぇな〜 、緋夏? 私はどんなシワくちゃになってもイケる! 」
「え、どこに行くんですか? 老人ホーム? 」
「んふふ〜 花園 」
「やめろ変態 」
マジでやめてくれませんかね? 冗談に聞こえないし、これ以上聞かないようにするのも大変だよ!
「想像してる方が変態だ。花園って言ったら、お花畑でしょ 」
「変態じゃねぇ…… ならお花畑でお幸せに 」
「サンキュー 」
「なに言ってるんですか、2人とも 」
「いつか…… わからなくてもいいけど、わかるといいな 」
どっちかというと、わからない方がいいと思う。分かれば…… 久野は危険って、脳が判断するかもしれんぞ。しない場合は…… 末永くお幸せに。
「うっ…… ごめん…… うっう…… なさい 」
「「「!!!??? 」」」
え、泣いてる! どうして? どうしよ…… 松柴さん泣いてるんですが!? え、えぇ……
「ま、松柴さん? え、どうしよ…… 師匠〜 」
「俺かよ! えっと…… 久野さん、よろしくお願いします 」
スマン桜守…… 俺もどうしたらいいかわからん。だってこんな場面遭遇したことない。
俺の周りにいる女の人って…… 女将さん含め、泣くのを想像させてくれない人ばかりなんだよ。
ちなみに最近、お前と久野もそこに入った。
「私にフルのかよ…… さすがのクオリティだ 」
「なんとでもどうぞ。とにかくお願いします 」
俺のクオリティなんて、とっくに知ってるよ。
「松柴、言ったろ? そんな気負わなくてもいいってさ、だから泣くなって 」
「ごめん…… なさい…… ぐすっ、うっ、でも…… ぐすっ 」
「初絵…… 」
「お嬢さん? 」
やけに静かだったけどお嬢さんなら、なんて言ってくれるんだろか…… 他力本願すぎて笑えないな。
でも、他人任せにするしかないんだ。俺にこれは、どうにもできない。
「頑張ってくれて、ありがとう! 大丈夫! 次は私の番、私と先輩で2勝してくるから待ってて 」
「みー…… ちゃん…… ぐすっ 」
「なんで泣くの〜 すごいよ、74点だよ? どう見ても自慢できるレベル! 」
「私…… ぐすっ…… 生徒会の人に…… ぐすっ…… 負けたくなかった…… のに 」
松柴さん…… そこまで対抗意識を持つってことは、何かあったか言われたか…… まぁ会長ズなら、あり得るな。
「なら私が勝って、また勝負できる機会を作る! 私を信じてくれる? 」
「いつも…… うっ、ぐすっ…… 信じてる 」
「ありがとう! じゃ、行ってくるね 」
「さすが幼馴染みの友情…… 先輩として情け無いです 」
「そうか? 緋夏は、良い先輩だと思うぞ 」
「それは珠希もでしょ 」
「私はそんなガラじゃないよ 」
「社会人として、ほんと情け無い限りです 」
ほんとごめんね、全部お嬢さんとお前達に任せてしまった…… 許しておくれ。貶してくれてもいいよ。むしろお願いします。Mではないよ?
「たしかに情け無かったです 」
「まぁ知ってる 」
「ぐすっ…… 知って…… ます 」
「俺も…… 泣いていいっすか…… 」
言っておくが、俺の泣きを甘く見るなよ。不細工、支離滅裂、罵詈雑言、など様々なものを同時に展開するくらいレベル高いよ…… いや低いよ?
「あんたが泣いても、ちっとも絵にならないから放置するわよ。それじゃ行ってくるね 」
「もう行くんすか 」
「向こうより早く行って、待ってるくらいの意気で行くから 」
「なんと心強いことっすかね 」
心強すぎます。どこまで女将さんの血を引いてらっしゃるんですか。
「でしょ? 」
「郷橋さん、頑張れ! 」
「楽勝だ、郷橋 」
「みーちゃん…… 頑張って…… 」
「ありがとうございます! 行ってきます 」
「応援してるっす 」
「どうせ、ほどほどにでしょ? 」
「いや…… かなり本気かもです 」
本気にもなる…… 俺にこんなことを考える資格はないが、不安があるんです。
松柴さんの負け…… 意味するのは、もう負けられないってことだ。俺と会長の5回戦は負けとカウントするから、実質4回の中で3勝するしかない。
まぁでも、松柴さんはすごいよ。高得点だ、ほんとに…… それに向こうは3年、アドバンテージもないのによく頑張ったなって思う。
はぁ…… 今してる緊張は…… 本物かもしれないな。
実に気分が悪いし、勝ちと負けのことしか考えられないから。
泣いてる子を見るのは…… 結構キツイもんだな……




