107話 練習しておこう
三章 百七話 「練習しておこう 」
勝つよな? 勝ちですよ! って、報せに来たんですよね。じゃないと困る、場の雰囲気が重くなってみろ、俺は全て投げ出して帰る準備をします。
「結果が出たので、口頭で伝えるよ 」
なんでこんな結果を聞くのに、緊張するんだよ…… 緊張なんてゲームのガチャイベントでたくさんだっての!
そんな気持ちを知りもせず、結果を教えてくれる先生は表情一つ変えずに口を開く。
俺の気持ちなんて、知られても困るが。
「まず 」
「「「「「まず? 」」」」」
おいおい、なんで一緒に言うんだよ。俺らはコントしてんじゃないんだぞ。
「はは…… 聞く準備はいいかな 」
先生の苦笑い頂きました!わかる、俺も同じ立場ならそんな感じになるかもしれない。
「すいません。みんな、黙って聞こうな 」
「は、はい 」
「わかってるっつの 」
「そうね、そうよね 」
「うん…… 大丈夫 」
葬式じゃないんだ、もうちょい明るくいこうよ…… いや、葬式の方が明るいな。あれって酒飲みに行ってるようなもんだろ。高井さんが言ってた。
「じゃ、改めて…… 結果はね 」
「ゴクッ…… ゴホッゴホッ…… けっかは? 」
勝ちだよね。そうだよね。賄賂あげるから。
「まず…… 」
「まじゅ? 」
噛んだけど気にしない! 笑いたきゃ笑え!
「生徒会サイドが…… 」
「が? 」
クソッ! 上目遣いしてんだから、さっさと言えよ!
それとも、こんな野郎の上目遣いは逆効果ですか?
「82点です 」
「はちじゅ…… マジか 」
15分そこいらで80点台…… さすがって、やつか。
「高いですね、相手 」
「すまんな、みんな 」
「先輩…… 」
「…… 」
え、なんでそんな空気になってんの? 久野さん? もしかしてダメなパターンっすか…… マジっすか。
どうすればいいんだ俺は……
「次にゲーム部さんの方だけど…… 」
「こっちは? 」
先生の声のトーンからして、マジでダメな感じですか? 賄賂、横領、なんでもするので勝たしてください!
「91点ですよ 」
「きゅうじゅ…… 負け…… え、91? あれ…… 勝ち? 」
足し算引き算くらいならできる。82より91の方が高いよね? 強いよね? あれ…… 勝ったの?
「せ、先輩!? 勝ってますよ! すごい! 勝ったんです! 」
「すごい…… 90点台なんて 」
「珠希! なんで変なムード出したんです!? 」
「てへぺろん、なんならこっつん 」
「あれ? てことは…… 勝ったんですね!? 」
「みたいだな。良かった〜 」
「珠希〜!! 」
「よしよし〜 ありがとうな〜 」
珍しく、桜守から抱きついてる…… 俺も抱きついて殺されに行こうかな。勝ったんだな…… 偉すぎ!
「師匠! 珠希勝ちましたよ! 」
「一緒に聞いたからわかってるし! 嬉しいし! やったし! 」
もうビックリさせないでくださいよ、久野さん。あんなムードは負けた時と、値崩れの激しいゲームを買った時以外しちゃダメ!
「ほれ、下手くそ司令官なにかセリフは? 」
「素晴らしい戦果だ。よくやったな、久野(司令官風) 」
「下手〜 それじゃ3話で死ぬな 」
「練習しておこう(3話で死ぬ司令官風) 」
ほんとよくやったぞ〜…… もうダメかと思ってから、救われた感がハンパないっすわ。さすが、ゲーム部の精神的支柱って辺りかな。
「おめでとう。でもまだあるからね? 初戦は部活側の勝利だけどさ 」
「いやいや〜 こっち最強っぽいんで、たぶんこのままストレート勝ちですよ 」
あのお利口チート生徒集団に、初戦から黒星をつけたんだぞ? もうこれ全勝じゃね。
さっきまでは、負けフラグ来た〜 とか考えてたけど、やっぱり現実では無意味。この世界は非情なまでの、実力と運で構成されてる。
つまり…… フラグフラグ言っても、勝つのはこっちだ! ウヘヘヘ!…… 言ってたの俺だけど。
「なんでお前が調子に乗ってんだよ 」
「師匠も嬉しいんですね! わかります! 」
「アンタのバカがここまで聞こえるんだけど 」
「でも良かった…… さすが先輩です 」
「ありがとな松柴。郷橋も 」
「やりましたね先輩 」
「まだ残ってるけどな 」
「大丈夫です! 勝ってみせます 」
「今度は応援させてもらうな 」
「頑張ります! 」
「ほんとにすごいよ。ありがとう 」
素直にそう思うよ。たぶん俺があの場いたら、ただ立ち…… 動くことなく敗北するだろう。
だけどお前は違う。自分に自信を持って勝負に挑み、そして勝ち、みんなにも自信を与えた。
他人に自信を与えることができるのは、易々と成せることじゃないんだ。それは誇れることになる。
「急にマジなトーンになるな、気持ち悪い 」
「るっせ、負けたら罵ってやりたかったのに 」
「お、聞いたかみんな?負けたら罵るらしいぞ 」
「師匠サイテー 」
「ですよね、サイテー 」
「ク…… カ…… サイテーになっちゃいますよ 」
「冗談ですって、とにかく…… やったな 」
すごいな冗談のつもりだったんだけど、松柴さんなんて、クズ、ゴミ、サイテーの三連コンボかよ。
「それじゃ、次の試合に移るよ。誰がでるのかな? 」
「休憩無しっすか 」
普通はトイレ休憩とかありませんか? 漏らしたら、責任とってね。
「無いですよ。教員の時間も潰してるので、なるべく早く済ませないと 」
「なるほど…… でも、あちらさんですよ? 仕掛けてこられたのは 」
「…… そうですね。とにかく、次の子は? 」
「私…… です 」
勝利の余韻に浸っていたいが、様々の思惑や都合によりそうはならないようだ。
そして…… 再度緊張することになりそうだが、その前にわかったことは…… 松柴さんが次鋒なんだな。
「初絵、ファイト! 」
「松柴さん、落ちついて気負わないでくださいね 」
「負けたらとか考えないで、いつもテスト受けてる時みたいにやってみな 」
「は、はい…… ふぅ…… 頑張ります 」
「余裕だって、初絵! 」
「ありがとう、みーちゃん 」
「余裕っすよ、いっちょ懲らしめてやってください 」
「難しいと…… 思いますよ 」
「大丈夫ですって、あの集団そんな頭良くないですって、楽勝楽勝っす 」
俺にはわかる…… 松柴さんなら勝てる! なんせ、普段からの隠しきれないドS魂が会長よりも強い。
それがいいのかって言われたら…… うーん……
「宮田さんが言ったら…… ダメかと 」
「ですね。俺なんてマジでなんも出来ないですからね。そこそこに頑張ってください 」
「そこそこ…… ですか 」
「俺のポリシーなんで 」
下手したら、そこそこもキツイ時があるから、その時はどっか妥協できないか探る。
久野とかには言わんぞ、だって聞くわけないし。
桜守も同じくな…… お嬢さんなんか、特にアウトだろうな。
「わかりました。そこそこに…… 行って来ます 」
「行ってらっす。そこそこにワクワクしながら待ってます 」
期待してるは言わない。久野が言ってたよな、後輩に負担を与えたたくないって…… それを聞いてた俺が、負担を与えることを言えるわけない。
でも心では、ひたすら期待してる。なんせ一回勝ってしまったんだ、期待もするし、希望も抱くし、望みも託す。
心配はいらないな…… だって我が軍は最強だろ?




