103話 飛び火するの!?
三章 百三話 「飛び火するの!? 」
俺はきっと、いくら滅多にやらないことだって言っても女子高生なら遊びとかで忙しいでしょ? そう思ってた。
だから今日の対抗戦だって、そんな集まらないでしょって思ってたのに…… そのはずなのに。
体育館の中に入るとーー
「マジか…… 」
そこには、ほぼ体育館の全域に生徒達がひしめいてる光景が目に入る。
なんつーか…… 女の子たくさん! なんて可愛いもんじゃない。
多すぎて、ありがたみが全然ないんだが。
「すごいですね。こんなに注目されるものなんですか? 先輩 」
「ですね。対抗戦そのものは規模が小さいやつなら多少はありますが、生徒会に対してのやつは滅多にありませんから。というより、勝てるわけがないって最初から諦めてるんです 」
「たしかにあの会長とやり合うのって、リスクありますもんね 」
「リスクもそうですし、何より学力対抗戦の学力で勝てる見込みがないって思ってる人が多くて 」
「あぁ…… なるほどです 」
「どした宮田? 緊張で固まった? 」
「え 」
緊張で固まるっていうか、あまりの生徒の多さにあてられて吐きそうなんだよ。
「珠希って、師匠のこと名前で呼んでましたっけ? 」
「いんや、さっきからかな。さん付けしてくださいお願いしますって言ってたけどな 」
「そこまで言ってねぇよ…… だいたい敬称なんて、ハナから諦めてるし 」
ハナからどころか、お嬢さんと一緒にいる内で敬称を付けてもらえないのが普通って考えになってきてるのでね。
「うんうん、仲良くなってくれて嬉しいです! 」
「「全然違う(よ、から) 」」
「アニメでよく見るくらいの、ぴったり加減ですね! 」
「さすが稀代のナンパ師ね 」
「お、お嬢さん? いつまで続くんすかそれ 」
もうやめてください〜…… なんか言われ続けると、俺ってナンパしたの? って自分を信じてあげれなくなりそうなんで。
「もちろん死ぬまで 」
「教会で転生してきます 」
ドラ○エネタわかるかな?
「ほら、早速今朝の金髪さんと遊びたいって言ってるじゃない。確信が持てたわ 」
「え、違っ…… マジで違うんすよ 」
そうだよな〜…… シスターさんは教会って決まってるもんな〜…… バカだなぁ俺は。
「郷橋さん、今のはドラ○エネタですよ! ね、師匠 」
「さ、桜守様〜 」
初めて役に立ってくれたぞ! 我が自称弟子よ。
「師匠が私を様付け…… あり寄りの無しですね 」
「結局無しなのかよ 」
なんでだ? 俺は様付けなんて、しょっちゅうやってるぜ? 俺より卑屈に下手に出れるやつはいないくらいなのに。
「たまにはありです。それじゃ、私達の席は一番前のところです。注目されに行きますよ! 」
「注目…… ですか …… 」
「だ、大丈夫ですよ松柴さん! 私達の方が先輩だし、何よりいつも悪目立ちしてるので、注目は私達がもらいます! 」
「悪目立ちしてるのかよ 」
悪目立ちしてるのは、てっきり内輪だけだと思ってたけど、学園でもなのね…… こりゃ負けてお灸を据えてもらった方がいいのか?
「いつもじゃないですよ? たま〜にです。さ、行きますよ! 」
多すぎて吐き気を催すほどの生徒達の視線と、ヒソヒソ話しを切り抜け、体育館の舞台下まで行く。
そこには、ツンとしてデレとかの萌え要素がない会長さんがいる。その横にも、いかにもお利口さんって感じの子が4人…… みんな同じ顔に見えるんだけど、病気かな?
「今日はよろしくお願いします 」
桜守が挨拶してる。よくできるな、これから勝負するんだろ? そこは熱い視線を交わし合うんじゃないの? 俺なんて、あの時ヤンキーに絡まれた時、その視線を浴びちゃったからさ。
「よろしくお願いします。フッ…… あなたも参加するんですね 」
また鼻で笑われた。その鼻にティッシュ詰めてやろうか? もちろん即土下座の準備をしておくので。
「成り行きで…… お手柔らかにしてくださいね 」
なんならお手を煩わすのが申し訳ないので、今すぐ辞退してくれてもいいんですよ? むしろお願いします。
「手を緩めるも何も、あなたは私と当たるのでしょう? それなら出番が来ることなく終わるので、そんな提言はしなくていいです 」
「そっか…… なら君達(生徒会のメンバー)に対してで、お手柔らかにお願いね? 」
生徒会メンバー 「…… 」
全員無視かよぉ…… ツンドラ地帯ですか?
「師匠! 私が負けるって言ってます? 」
「なわけないだろ。社交辞令って知ってる? 」
「挨拶ですね! 」
「ちょっと違うけど、まぁそんな感じ 」
挨拶は咄嗟にか、ちゃんと予備動作を確認できるだろ? 社交辞令はな、ただの嘘の付き合いだ。
手を緩めてほしいのは、今一番の本音だけど。
「社交辞令ですか…… 勝てる見込みなんてありませんけど、こちらはどう返せば? 」
「そっちはいいよ、なんせ受ける立場でしょ? どっしり構えて負けてね 」
「負けて…… なるほど、その脳にもちゃんと皮肉は言える知識はあるんですね 」
「皮肉なんてそんな…… ま、俺の番に来ることなく、俺が手を煩わせることなく勝つから、皮肉じゃなくて予見かな 」
どやぁ…… めっちゃカッコいいだろ? 一回はやってみたかったんだよね〜…… 生徒会の子達の目が、さらに鋭くなっちゃったかもしれない。
マジですいません! 調子に乗らせてください!
「師匠、めっちゃカッコイイです! 」
「結構言えるじゃんか 」
「なにカッコつけてんの? 今度はあの会長にロックオンしたの? 」
「その可能性はあるね、みーちゃん 」
さすがの俺でも、目からビームが出そうな子はちょっと難易度高いです。そもそも違うし。
「せいぜい励むことです。結果はすぐにこの館内全ての生徒が知ると思いますが 」
「こっちの勝利に対する喝采を浴びたいですよ 」
「敗北に対しての当たり前の、社交辞令の喝采を浴びることになると思いますよ 」
「私達は部活したいだけです! 負けません 」
うぉい急に入ってくんな、そんな言い方したらその会長さんは熱が入るんじゃないの?
「部活? あなた達は部活なんてしていません。場所の独善的な占有をしていたので、こちらは手を打つたまでです 」
「なに言ってんだお前? 部の許可を得てるんだけど? 」
「お、おい久野さん…… 落ち着こう 」
落ち着こうね、お前は熱入るとリアルファイトしそうだから違う意味で心配なんだよ。
「その許可は前任の顧問ありきですよね? そもそも、学校の価値を貶める内容の活動を部として認めるわけにはいきません 」
「は? 貶める? 」
「ちょ、ちょ、落ち着こう、ね! 」
待って待って、これ以上どっちも刺激し合わないでください。
「珠希、勝てばいいんです! 勝てば会長も部活として認めてくれるみたなので 」
「緋夏…… 」
「せ、先輩! 絶対必ず勝ちます! 」
「は、はい…… 頑張ります 」
「まるで園児の慰め合いですね。できもしないことは、言うべきではありません 」
なんーんでこの子は、火に油を注ぐの!? 天才なの!? それとも天災なの?
「勝ちますよ。だって私達の部活は先輩からもらったもので、後輩達と頑張って行くもので、まだやり残したことが多すぎますので! 」
「緋〜夏〜!! 」
「先輩…… そこのバカより、男前です! 」
「3倍増し…… です 」
なんで俺に飛び火するの!?
3倍増しって…… 今日はカッコつけたのにぃ。
「言葉1つ取っても、我が校の生徒らしからぬ言動…… これを機に少しは、勉学に励んではどうです 」
「あ、あの! 」
「? 」
「お嬢さん? 」
なに言ってんすか、お嬢さん? これ以上余計なことは言わなくていいんすよ!
「あの…… さっきから見下してませんか? そんなに偉いんですか 」
「なんのことです? 見下す…… なるほど、見下されてる感覚に陥っているのですね。だとしたらやはり、そこにいることが全てを物語っています 」
「違います! …… これ以上言っても、今は仕方ないのでこの勝負が終わったら言います 」
「その頃には、こちらの言っていることが正しかったと己を省みてることでしょう 」
それだけ言って会長さんは、向こうの席に戻って行った。それにしても相変わらずだ…… 自分が是、絶対の肯定だな。
「絶対勝ちましょうね! 」
「スッゲー イラッときた 」
「負けてたまるか! って感じです 」
「少し…… 悔しくなってます 」
「松柴さんも、それだけこの部を好きになってるって思っていいですか 」
「は、はい…… たぶんそうなんだと思います 」
「初絵…… 余裕で勝てるよ! 」
「だね、ちーちゃん 」
「心強すぎだぞ、この後輩 」
「先輩として、頑張りましょ珠希 」
「はいよ、部長 」
「師匠もカッコつけてください! 」
「勝って、泣かせてやれよ。そんで特別に許してやるって言うのはどうだ? 」
それにしても松柴さん…… まだ入ってから、そんなに経ってないのに、ほんと変わったな。良い傾向だと思う…… よ?
だってたまに、本音が聞こえてくるだもん。その度に耳を塞ぎたくなる。
「アリですね。ぐふふ 」
「だろ? ぐへへ 」
なんせ俺も見てみたいよ。あの会長が、許してください〜 って懇願する姿とか…… 萌えるかもな。
頼むからこっちが許してください〜って、なるパターンは避けてくださいね。
なった場合は、俺に任せろ!
土下座は俺の嗜みの一つにカウントしてあるから、心配するな!




