98 叶えるとは言ってません
三章 九十八話 「叶えるとは言ってません 」
お昼の為にカップ麺を職員室まで買いに行ってる。職員室でカップ麺販売してる先生が居て、そこだけはよくやったって言いたい。
「おはようございます。本間先生は今、大丈夫ですか? 」
たしか本間先生って言ったよな…… できれば、定価以下で売ってくれればさらに良いんだけどな〜
「本間先生…… あっ、カップ麺買いに? 」
「そうです。お世話になっちゃってます 」
「今日は、対抗戦なのでは? もう少し栄養のつくものを食べたらどうです? 」
そうしたいよ、できればそうしたい。でもね、高いんですよ…… あの食堂のメニュー。
ていうか、職員も知ってるのか…… いや、職員なら知ってて当然ですよね。
あれ? そういえばこの人…… お嬢さんの担任の先生だったような。
「普段と同じものを食べた方が、割と効率よく脳も体も働いてくれるんですよ。でも、そうですね…… 勝てたら、お祝いで食べてもいいかもしれないです 」
それで勝ってくれるんなら、いくらでも奢りってやる…… 訂正しよう、限度は設ける。
「生徒会の子達に、勝てそうですか? 」
「どうですかね…… まぁ、頑張ってくれると信じてはいます 」
「警備員さんは何を? 」
「見守ってるくらいですね 」
それ以外にできることがありましぇん。
「あはは…… 生徒達には、それが一番いいかもしれないですね 」
「できるなら、ちゃんと力になってあげたいのですが、なにぶん勉学とは縁がないので 」
これからもずっと縁はないと思うけどね。
俺のことだ、これを機に勉強…… なんてことはしない。
「ふふ、ウチの生徒達は警備員さんってどのくらい優秀なの? って思ってる子が、たくさんいるんですけどね 」
「それは困りました。何もせず終わる予定なんで、その期待には応えられないです 」
「私も応援させていただきますので、頑張ってください 」
「いいんですか? 聞けば、生徒会の権限…… とでも言うのでしょうか、それが強く、そして教師もほとんどが生徒会側って聞いたんですけど 」
そんでもって、会長は校長の孫…… こりゃ最高のポジションですね。代わってもらいたい。
「そうですね…… でも、私は郷橋さんの担任です。それに…… あの子が部活に入って、あんなに楽しそうにしてる姿を見るなんて思ってませんでしたから、お家の仕事とかで忙しそうな感じだったので 」
「はは、たしかに最近まではそうでしたよ。ちょっとしたきっかけで、今があるんだと思います。実は部活入る前に、一悶着あったんです 」
思えばあの辺りから、らしくない歯車が回りやがった気がする。
「そうだったんですね。なら、やっぱり今の部活は続けるべきです 」
「ま、本人もやめる気とか一切ないと思うんで 」
妥協なんてクソ! みたいな子だから…… もうちょい、妥協することを考えてもいいんですよ?
俺みたいに妥協の後に妥協はダメかもしれないけど。
「応援してます 」
「同じです。応援させてもらいます 」
その後にカップ麺を買うことはできたが、本間先生の言い方が 「今日は対抗戦でしょ? なら、20えオマケで200円の販売だ! 」と言われた。
いやいやそこはタダにしてよ…… って、寸前のところまで出かけた。
カップ麺片手にそして部室へと向かう。
「こんちゃ〜 」
部屋には全員いた。お昼だし居るよな。
「あっ! 師匠、こんにちは! 」
「今日もそれ(カップ麺) かよ 」
「そんなんで今日、大丈夫なの? 」
「いつも大丈夫ですか? 」
松柴さんの言ってることが、たまにわからない時がある。いつも大丈夫ですか? 何がでしょう……
「俺はそんなに気合入れなくていいから、コレでたくさん 」
「いやいや師匠も気合入れてくださいね? 」
「その通りだ、負けたら全員に家庭用ゲーム機をプレゼントってくらいの覚悟をしろ 」
「むり〜 そんなに財布に入ってない。でもそうだな、勝てたら全員にお菓子買ってあげる 」
だれか家庭用ゲーム機なんか買えるか! ナメんなよ、庶民の財布。
「お菓子って…… 今時の小学生でも喜ばないわ 」
「師匠は節約志向の人ですから 」
「いや先輩、あいつは節約なんかできません。月に数万くらいのソフト買ってますから 」
「さすがのダ…… らしい買い物ですよね 」
さすがお嬢さん、俺の買ってる物は旅館宛に届くから、いつも見てるだけはある。
だからエロ系は絶対に買えない! それと買っても、俺はできる自信がない。
「マジかよ、最近の子供はリッチだな。まぁ…… 勝てればなんか考えとくから頑張ってね 」
「絶対に勝ちますので、ちゃんと考えてくださいね! 私はなんでも嬉しいですけど、できればソフトがいいです! 」
「私は、一ヶ月間食堂を奢るを希望 」
「私は遊園…… じゃなく、街の方にある人気洋菓子店のゼリーかな 」
「あっ、それ美味しいよね…… 私しもそれで 」
えぇ…… 何それ?
まず桜守…… アホか。
久野…… は? 俺だって食ったことないのに、なんで奢るんだよ! しかも一か月だと?
お嬢さん…… 勘弁してください。あの店のやつは俺も知ってます。だから言える、高いっす。
松柴さん…… 高いんすよ、あれは高いんす。
「希望はわかった。叶えるとは言ってません 」
絶対に叶わないな…… ドラ○ンボールでも集めてこようかな。
「絶対聞いてくれないパターンですね 」
「私達は頑張るのにな〜 」
「甲斐性がないのは、今に始まったことじゃないですよ 」
「だよね 」
みんな、ひっどぉい…… でもその通りだよ。
「まぁまずは勝ってください。それから相談だな 」
「頑張っちゃいますよ? 勝っちゃいますよ? 」
「おう、勝て勝て 」
「それじゃ、まずはお腹を満たしますか! 」
そうしてくれると助かる。
俺も職員室でお湯を入れてから来てるので、そろそろ伸びちゃう。
ーーーー みんなそれぞれのお昼を食べてる。
桜守、久野、お嬢さん、松柴さん、みんなお弁当か…… お嬢さんのは大丈夫なのか? 自分でお作りになったのなら、だとしたら自殺願望でも?
桜守と久野って、料理ダメって言ってなかった?
作ってもらってる? それとも少しはできるのか。
松柴さんは料理得意なのは知ってる。
お嬢さんは…… ヤバかったはず、でもおにぎりだけだな今持って来てるの…… おにぎりは作れるんすね。良かった。
「師匠って、お弁当は作らないんですか? 」
「ヂュルルッ…… え、作るわけないだろ 」
「お弁当食べたいですか? 」
「いんや別に、このカップ麺美味いから 」
でもやっぱり、毎日コレだと飽きるかも…… 栄養面のことはどうでもいいが、レパートリーが少ないからな…… 本間先生のは。
「そうですか〜…… ちょっと私の食べてみます? 美味しければ、作ってきますよ! 」
「は? 」
「「「!!?? 」」」
「ひ、緋夏? 無茶するなよ、そんなに料理得意じゃないだろ? 」
「せ、先輩? そんなのに食べさても何の感想もないから、オススメしません! 」
「だ、大胆…… 」
「わ、私はそこそこ料理得意ですよ? 珠希は知らないかもですが 」
「緋夏…… 嘘…… だよね? 」
「マジのマジです 」
「知らなかった…… 料理スキルを上げてたなんて 」
大丈夫ですか、久野さん。目が血走ってますけど、ほんとに大丈夫ですか?
「気持ちはありがたい、でも今はいい 」
「美味しくなさそうですよね…… 」
「いやそういうわけじゃ…… おかずを一つ頂けますか? 」
元々食べる以外に選択肢がないのね…… それならそうと言ってください。
「よかったら珠希やみんなもどうぞ! 」
「緋夏〜! ありがとう〜! 」
「先輩、それじゃ一つ 」
「わ、私は大丈夫です 」
「そんじゃ俺も 」
お嬢さんの時みたいに、食ってからの死を味わうのだけはないよね? 大丈夫ですか?
もう三途の河が見えたら帰れなくなるから。
「美味しい! 美味しいぞ〜緋夏〜 」
「ほんと…… 美味しい 」
俺も卵焼きらしきものを食べてみる……
「美味いな…… 」
失礼を承知で言うなら、普通に美味しい。
料亭の味! とか、そこまでは言わないけど、ただただ食べれる…… 意外だ。
俺の作った卵焼きなんて…… いや、俺のは卵焼きじゃないな、面倒だからごちゃ混ぜにしたスクランブルエッグだし。
コレはちゃんとした卵焼きだ。厚みがあるからな。
お嬢さんや久野が食べたやつも食べてみたいくらい。
でもよかった…… 三途の河に行かないで済んだ。




