九八 プラスワンとの道程
それから二週間、ワシらは道なりに歩き続けた。
出会った魔物は今まで見たことあるオークとかスライム、ワードッグとかワーキャットといったこの世界では珍しくない奴ばかりだ。
おそらく元の世界で言う所の野良犬とか野良猫の類なんだろう。
しかもダンジョンでの激しい襲来と言わけでもなく、一日に四~五体程度出会うのみである。
そんな中で唯一ビッグスライムというのがいたけど、島のダンジョンでダークスライムが合体して大きくなっていたけど、あれとは違うのかね?
タマキに確認したところ、そもそもスライムの生態についてはあまり分かっておらずそのへんはよく分からないらしい。とりあえず今回はワシのせいでフィギュアが出現したから分かっただけなのだそうだ。
さて約束どおり、ユーミさんにいろいろ教えながらの旅路になったわけなんだけど、まぁ~熱心だわ。
ヨーコさんやタマキのそれとは全然違う、どこか鬼気迫るといった感じなのだ。
これは時間制限があるという状況がそうさせるのかもしれないけど、合気道・柔術・空手といったあの時使っていたのを歩きながら説明するのだが、分からないところを質問してくるのはもちろん、一字一句逃してなるものかという気迫が伝わってくる。あそこまでいくと怨念である。
おそらく紙やペン、インクが現代と同様程度に普及していたならば、周囲を警戒するどころか、景色だってみることなく常に下を向いてメモをとっていただろう。
休憩時や本日の移動終了になるとタマキやミケと実戦である。で、そこにワシの指導が入るといったスタイルをとっていたんだけど、みんなタフだよね・・・。
事実上無休憩での進行軍だからねぇ。いくら道中にトラブルや魔物がほぼないといっても無理しすぎなんだよなぁ・・・。
その甲斐あって、上達は早いし礼節とかを省けば三級程度には技を使えるようになった。この世界にはこの武術は伝わってないし、対人であるならば十分な効果を得られそうなぐらいかな。
さらにユーミさんはそれだけではなく、ワシの料理にまで教えを乞うのだ。
さすがにこれには驚いた。あのヨーコさんやタマキでさえ料理については興味はあれど食べ専で、作り方までは知ろうとはしなかったのに・・・。
体術の時と同じように一文一句逃さまいとする怨念を感じるのだが、これにはわけがあった。なんでもユーコちゃんからの密命があったらしい。前のカツ丼と朝食のうまさに感動したらしいユーコちゃんは、城に戻り出発の日をまだかまだかと待っていたユーミさんに『今回の休暇届けは無しじゃ。出勤として扱っておくからモリーらの体術だけじゃなく、料理のうまさの秘密をも教えて貰ってくるのじゃ』という命を下したみたい。
それは近衛の仕事じゃないと思うんだが、真面目なユーミさんは受けちゃったんだよね。聞けば普段から城の食堂で食事を取るので料理は一切しないタイプの人種。味付けとか調理法以前にまずは食材をどう扱うか・・・つまり洗ったり、皮をむいたりというレベルの話から教えなければならない。これはワシの料理とは関係ないというわけではないけど、別にワシから教わらんでもいいだろう・・・。本当・・・なんでこの命を受けちゃったんだろう・・・。
とりあえず料理のいろはを教えつつ、調理法を教えて行く。さすがにユーミさんも自分の食べてきた料理の調理法は知っていたが、この世界は焼く・炒める・煮るの三つが基本。揚げるとか燻すなんて調理法はないみたい。驚かれたよ。
どおりでトンカツとか出した時に驚かれたわけだし、食べた事ないになるわけだ。
しかし・・・揚げるという調理法が無いとか・・それはそれで尊敬するな、この世界の料理事情。唐揚げとかワシらの国民食だったわけだしね。
でもたしかドイツ人とかが日本にきたときにあまりの料理の多様性に驚くなんてのを聞いたことがあるな。それと同じようなもんかな。
調理に使う調味料も塩がほとんど。ほかの調味料はあることは知っていてもほとんど後付けの使い方なのだ。
幼子の時分にヨーコさんが作ってくれた野菜のぶつ切りに塩かけただけのメニューや塩焼き肉・塩焼き魚は手抜きでも何でもなく、単にこの世界の食文化だったらしい。そりゃワシが作った食事がいいっていうのもわかる。ワシの料理は魚醤やら醤油、酒といった前世でおなじみのものを調味料として料理に使うし、後付けの味だってマヨネーズまで自作しているからな。
しかしそんな塩頼りの調理法しかないのだと、この世界寿命とか短そうだ、
とりあえずこの世界のオーソドックスな調理法に合わせて塩のみでつくれるものを主に教えたけど、教わったのは料理の素人さん・・・戻った後どう伝えるのか実に興味深い。
さらに寝る前にやっていた皆との憩いの時間・麻雀にも興味を持ち、ほぼ毎回付き合ってくれた。これも教えるところからやったんだけど、ミケ以上に時間がかかった。かかったけどそうれはもう熱心にやっていたよ。
是非欲しいということで、別れるときにあげる約束まで取りつけられたよ。
双六と花札ぐらいしかないこの世界にはやはりこういったテーブルゲーム的な娯楽が少ないのだなぁ。
・・・でも、やっぱりおかしいよなぁ・・トランプも無いのに花札があるのは・・・。
聞けば貴重な紙で作られている事もあり、貴族というか上の方の人の娯楽なのだそうだが、それにしても・・・なぁ・・。
そんな感じでワシらにとってはゆるやかに、ユーミさんにとっては刺激的に道程を歩んでいった。
そしてきっちり二週間後、今までに見た事のない人工物の沢山ある集落に辿り着いた。
◆今回のフィギュア収穫◇
ビッグスライム




