九五 一週間の予定
玉に戻ってみればなぜか空気が淀んでいた。
なんか、怨念でも渦巻いてるんじゃないかってぐらいどよどよしている。
発生源はヨーコさんだ。髪はボサボサ、目の下にはくっきりとクマ。聞けばワシらが外でライムさんを待っている間中、風呂も入らず休憩もせず食事もとらず睡眠もとらずずっとメイと二人で麻雀をしていたそうだ。
「・・・いやね、何度もこの一局で終わろう、次の局で終わろうって思ったのよ・・・・でもね、気が付けば次の局を打ち始めているのよ・・・・」
どれだけはまってしまっているのだろうか?
寝なくても大丈夫なメイがせがんだのかとも思ったのだが、どうもそうではなかったみたい。
どちらかと言えばメイは他のゲームもしてみたかったみたいなんだけど、「とりあえずこれを極めたいわね」というヨーコさんの言葉につきあっていたらしい。
極めたいって・・・・たかだかゲームだぞ。この世界では普及してないし存在も知られてないだろうに・・・誰と戦う為に極めるんだろうか?
とりあえずこれはいけないと思ったワシらは対局を勧めてくるヨーコさんを説得し、強引に飯を食わせた。いくら動かないったって腹は減るだろうに・・・まったく。
飯を平らげた後もしつこいぐらいに誘ってくる。じゃあ一局だけと相手をすれば喜んでくれるのだけど、そのあとがいけない。
きりがないのだ。もう一局、もういっちょと終わりが見えない・・・。
さすがにタマキもミケもワシも疲弊してくる。メイ、よくワシらがいない間これに耐えたなぁ・・・。
ヨーコさんのその酷い容貌はもはや餓鬼である。目がもう死んでるし・・・。貪欲に一つの事をやるのが悪いとは言わないけど、やりすぎはダメだ。
といってこの状況下では逃げれないし、どうしたものか・・・・あ、そうだ。
ワシはタマキに耳打ちをして、タマキは快く魔法をヨーコさんにかける。
たちまち、ヨーコさんは机に突っ伏して眠ってしまった。
かけてもらったのはなつかしの無魔法・スリープ。以前飲んだくれて絡み酒が止まらないヨーコさんにかけて静まらせたあれだ。
メイにヨーコさんをベッドまで送るように頼み、ワシらは机の上を片付ける。
当分帰ってこれないからと、一週間十分に堪能しようと思っていた玉の生活はため息とともに始まったのだ。
翌日にはこの玉内の規律に『相手に迷惑なことをしない』、『人らしい生活を送る』というのがヨーコさんを除いた全員の賛成多数で可決された。
ワシが今回の玉の中において考えていたスケジュールというか目的は大きく三つ。
一つ目はベットや風呂などを堪能することだな。ユーミさんがいる間はここに戻れないし、了承してしまったのだから我慢をしなくてはならない。だから今のうちってね。
二つ目は食事の下ごしらえ。今回のユーミちゃんズパーティーの突然の闖入により、身にしみて分かったのだが、時間経過の無いアイテムボックスなんて御伽話でしかないわけだし、人前ではあまり使わない方がいい。となると作り置いたものだけではだめだな。いつなんどき今回のような件があるか分からない。しかし下ごしらえぐらいはしておいても大丈夫だろう。キャンプ地で焼いたり煮たりすれば完成!みたいな。
衣付けたり、肉に味付けしたりして氷魔法で凍らして道具箱にいれておけば、魔力が多いんですねぐらいの感想で済むかもしれない。要はお手製の冷凍食品を作ろうってわけだ。
三つ目はミケに護身術のさわりの部分を教える。タマキにも一応全部教え込んでいるからタマキに全部任せてもいいんだけど、一人で教えるより二人で教えた方がいいんじゃないかな。魔法を教えた時はタマキとヨーコさんの二人体制でやってすごい効果が出たわけだしね。
これらを毎日やっていけば一週間なんてすぐに経ってしまうだろうけど、まあしょうがない。
とりあえず本日はもう昼過ぎてしまったし、ミケはタマキにまかせて下ごしらえに専念するかな。
そう決めると包丁を持ってやたら豪華なキッチンへと向かうのだった。
・ ・ ・ ・
「これに挑戦してみたいのぢゃ」
その晩。飯を食べて風呂を満喫し湯あがりにミケとオセロ、メイと将棋を一局づつ指し戻ってきた寝室でタマキが言ってきた。
手には大変お世話になっているサイクロプスのヒトミさんが書いた本。
もちろんワシには読めない。図も絵もないからさっぱりわからん。
「これって・・・何?ワシ読めないんだけど・・・・」
「夫婦生活の章にあった『飽きさせない為の工夫・体位編』なのぢゃ。一週間あるのぢゃからここにあるのに挑戦してみたいのぢゃ」
・・・・うすうす思ってたけど、ヒトミさん・・・なんか、夫婦生活の事書き過ぎではないですかね・・・。
なるほど、タマキが見送りの際ちょっと覚悟しておけと言ったのはこれだったか・・。
「衣装を替えてするのも、モリーの反応が違っておもしろいんぢゃが、たまにはあくろばてぃっくなのもいいかと思っての」
「・・・ちなみにどんなのがあるの?」
「えーっとのう・・・いろいろあるが、“たからぶね”とか“ぶつだんがえし”とかユニークな名前ばっかりあるのぅ・・・。うむ、このページには全部で四十八個あるのぢゃ」
ワシはおもわず吹き出しそうになった。
宝船・・・仏壇返し・・・四十八・・・・・・・それって江戸から伝わる四十八手じゃないか!
なんでこっちの世界にもあるんだよ!というかタマキが知らないということは失われた性技なのかもしれないけど、なに書き遺してんだヒトミさん!!
「ま、どのみち拒否権はないぞ。ウチが試したいんぢゃし、それに応えるのは旦那の甲斐性ぢゃろ?ぢゃあ、早速一番上の“たちかなえ”から・・・・」
そういうと自身の服をすぱっと脱ぎ捨て、襲いかかってきたかと思えばワシの服を器用にすぱっと脱がし始まってしまった。
結局この晩は九つの体位を試したところで、ワシが限界を迎えてしまって終わった。頑張ったんだけどタマキには勝てなかったよ・・・・。




