九一 待ち人来たから説明す
「いやぁ徒歩で来るには向かない場所だったわ・・・。周りにギルドが一つも無いから転送石が使えないし、一番近くの村っていってもかなり遠いし・・・結局丸三日かかってしまったわ」
「お疲れ様です」
「いいのよ。仕事だもの。それでダンジョンはどこ?」
「あの茂みの向こうです」
そう言って案内する。
着いた途端でこの行動力には頭が下がる。挨拶もそこそこに、とりあえず水を一杯と所望されたものの一息入れればこの行動力である。
「見事なダンジョンね。で、中はどんな感じだった?君たちの事だからどうせ入ったんだろうし、踏破して帰還したんでしょ?」
「まあ、そうですけど。帰還の羽を買い忘れていましたからね。中は砂漠と遺跡のようなものでした。三階層仕立てです」
「砂上にはサソリやらワームやらがうじゃうじゃ・・空には一反木綿が吹き荒れていましたにゃ」
「で、一階層のボスはスフィンクスという人の顔をした猫?ライオン?みたいなやつぢゃ。倒すと巨大な三角形の建物が出てきてのう。その中が二階層で遺跡ぢゃ」
三人で示し合わせた内容を言っておく。
砂漠を氷漬けにしましたなんていいたくないし、突破方法は伏せておくというのがワシらの共通認識だ。
「スフィンクス?・・・・・って!!守護神じゃない!?どうやって倒したのよ!!?」
「え、えっと。ミケが一人で頑張って倒してました」
「にゃあ~・・・その後回復するのに時間はかかりましたがにゃんとか倒せました」
「ミケさん・・・あなた本当にこの間まで普通の人だったのよね・・・」
どういう鍛え方したらこの短期間であのレベルを倒せるようになるのかしらと訝しげにするライムさん。
レベルの方は若干ズルみたいなことしてますが、後はミケの努力ですよ。
道中の魔物は殆どミケに任せているわけだしね。
「で、二階層・・・遺跡の内部なんですが、最初は普通でした」
「・・・君たちが言う普通がなんなのかはわからないけど、つまりこの荒野とあまり違わないという認識でいいかしら?」
「その認識でいいのぢゃ。ただし通路ぢゃから広くは無い。そのうちに落とし穴にはまり十字路で袋叩きをたくらんでおったのぢゃ。それを全部倒すと魔法陣ぢゃ」
「めずらしく本当に普通ね・・・じゃあ二階層は君たちにとっては面白くは無かったんじゃないの?」
「袋叩きにしようとしてきたのはほとんど固有モンスターでしたけどね。一度に大量に沸かない感じの」
「・・・・ちっとも普通じゃないじゃないの」
ワシの前世では神でしたといっても、通じないだろうから固有モンスターってことで通しておく。
今考えれば神ばっかりだな、このダンジョン。
「三階層は黄金の部屋にゃ。目がちかちかするぐらい輝いてたにゃ」
「ちょっとした仕掛けがあって、ワシらはタマキがいたのでなんとかなりましたが、火・炎・水・氷・雷・風・土・光・闇の九つの属性魔法がないとだめですね」
「うん、ちょっと待とうか。それ普通に来たらダメなんじゃないかしら。どこのパーティーが普通にダンジョンだーって入って全属性の魔法を用意しているのかしら?」
「封印を解いたのち、その部屋の棺が開いて、ラスボスぢゃ。これもミケが倒したのぢゃ」
ライムさんの答えに答えることなく説明を続ける。いちいちライムさんの質問に答えながらだと話が進まないしね。
どこのパーティーって知らないよ。現にワシらは用意して入ったんだよ。
「覚えてにゃいし、錯乱しての暴走だったのだけど、倒しちゃったらしいにゃ・・・」
「・・・ミケさん、ほんっっっとうにこの間まで普通のギルド職員だったのよね!?」
「にゃ!?間違いにゃく敷地から出ることのにゃい一般人でしたにゃ」
「・・・ちなみにそのボスの名前って?」
「半分生の生ミイラだけど・・・名前はファラオでしたね」
「・・・なんか古にそんな名前の悪堕ちした王がいた気がするけど、気のせいよね」
「それは・・・分からないです。その王の絵を見たこと無いですし・・・なにせミイラですしね」
「・・・はぁ~・・・今までの話で分かったのは、ここもヤバイ系のダンジョンってことね・・・」
なぜかあれだけの移動をしても疲れなんて見せなかったライムさんが、話を聞いた途端に疲れていく雰囲気を感じた。
それから、ドロップ品の一部を見てもらったんだけど、目をむいて驚いていたね。
絢爛豪華な装飾品の数々、あちらこちらに宝飾品をこしらえた武器やらアイテム・・・驚くと共にダンジョン内部にようやく強く興味がでてきたみたい。
一階層ではこういうアイテムはあまり落とさないと説明はしたんだけど、とりあえず一階層にだけでも入ってみたいと言うライムさんの希望もあって、ダンジョンに入った。人数分の帰還の羽を用意してくれて、一階層だけという約束だ。
ユーコちゃんたちはそのまま留守番だ。未だショックから立ち直って無いみたいで顔も伏せたままだったしね。声もかけたけど返事は無かった。
一階層だけといってもかなり広大なフィールドなのだが、前回と同じように進めばさほど時間はかからない。ワームやなんかの雑魚を蹴散らし、空に向かって魔法を放ちながら進み、いよいよスフィンクスである。
戦ってみたいと言うライムさんの意見を尊重し、一騎討ちをさせてあげる。ライムさんの力量は知っているし大丈夫だろう。その間ワシらは寄って来る雑魚たちの駆除・殲滅だ。
ミケがやったときよりもだいぶ早く、戦闘は終わった。今はピラミッドが出てきているところだ。
約束通りここで帰還の羽を使う。初めて使うアイテムだが、使い方はそう難しくは無い。空に各々かざすだけ。すると次の瞬間目の前の風景は砂漠ではなくしょぼくれ途中のユーコちゃん一行だ。
「ふぅ~・・・この間モリーさんと入ったダンジョンのどいつよりもしんどかったわ。さすがはスフィンクスなのかしら?そしてこの魔物の量・・・・まちがいなくダンジョンレベルは7以上ね・・詳しくは調査してからになるけど7は確実だからとりあえずそのレベルの報酬は出すわ」
スフィンクスとの戦いに満足してるライムさんは、戻っていきなりダンジョンの査定結果を発表した。
べつにレベルがどうとか報酬がどうとかどうでもいいんだけど、一つ分かったことはこのダンジョンもそこそこヤバイやつでワシらにまた使い道のない金額が手に入ったということだ。




