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八九 あちらは諦められなかった

「え?なんでそういう結論に?断るって言ってるじゃないですか」


「それは分かっているが、分かっていてなおのワガママだ。こちらとしては三人共どうしても欲しい人材だ。攻撃魔法、治癒魔法、料理・・・どれも私たちに足りていないところだからな。いっそどっちが上か実力を見てすっきりさせたい。これからもその自由な生き方を通すというのならばその実力差を私たちにしっかりと見せてもらいたい」


そう言いながら己がつけているガントレットをなでる。

あまり気にしてなかったけど、あちらのパーティー、鉈・ガントレット・長剣・弓のいかにもな脳筋パーティーである。

魔法使いとか喉から欲しいだろう。

ユーミさんの目をみれば冗談でもなんでもなく、本気度合いが伝わって来る。

これは承諾するしかないな・・・あれだけ真摯な目で見られたらなぁ・・。

いっそ本当に脳みそまで筋肉であってくれたら、ここまでめんどくさくならなかったかも知れないな。


「・・・はぁ。分かりました。その勝負受けましょう」


「かたじけないな。で、勝負の方法なんだが・・・一騎討ちでいいか?敗北条件は地面を舐めたら負けだ」


なんとまあ分かりやすいことで。

てっきり腕相撲とか力を最大限につかえるもので来るかと思ったけど、実戦か。

しかし実戦となると、剣と弓もっていた方々が気になるな。見た目ユーミさんほど洗練されていない風に見えたし、いかにも血の気がおおいって感じだったし・・・。


「なんとなくだけど、ユーコちゃんはまあ何も言わないかもだけど、ユーミさんとだけ戦うと残りの二人が文句言いそうなんだけど・・・」


「む。確かに・・・あいつらも戦いたがるかもしれんな・・・」


「じゃあ・・・三対一で行きましょう。こっちはワシ一人でいきます」


「いいのか?料理人の君一人で私たち三人で・・・あまり舐めすぎると後悔するぞ?」


あ、これはワシをただの料理人としか見てないな。

若干イラついてるし。ただの料理人がなにを言ってるんだって感じかな。


「問題無いです。一騎討ちという言葉を出すぐらいならば卑怯な策は練らないでしょうから。それでそっちが勝てはワシたち三人はそちらのパーティー、負ければ諦めるってことですが、うちのパーティーにいい事ってあります?」


「ん?そういえば特に考えてなかったな・・・なんか欲しい物ってあるか?」


やっぱりな・・・。そんな気はしていたけど。

片方だけの理屈や条件だけを通して決闘なんてできないよ。

でもこれ、とぼけていたわけじゃなくて素でかんがえてなかったな。いいね。こういう裏表のない考え方も。

さて、欲しい物か・・・無いんだよなぁ・・・どうするか。


「無いのならば今回の分は貸しにして貰えると助かるが・・・」


「貸し・・・ですか?」


「なにせ今回の狩りではそんなに獲物も取れていないうえに、二人ほど亡くしているからな。遺族への謝罪金やら、なにやらでそんなに持ち合わせも無いうえにロクな物も持っていない。このガントレットやらの武器は勘弁してもらわないと帰れなくなる。だから貸しにしておいてもらえたら嬉しいのだが・・・」


あちらはぎりぎりで冒険者やっているんだなぁ。こういうのが本当の冒険者なのかもしれないけど。

ワシらは土台から規格外ってことだな。

こんな状況のパーティーからむしり取るわけにもいかず、ワシはその提案を受け入れた。


「では明朝、仮眠ののち」


そう言うと焚き火の上でがっちりと握手を交わしたのだった。


・ ・ ・ ・


「なんとまぁ、こじれたものぢゃのう・・・」


「にゃあ~・・・ボクらが眠っている間に急展開だにゃ・・・」


翌朝、仮眠をとってすっきりしたところで、夜と朝の間にあった話し合いの顛末を二人に報告しておいた。

焚き火の残骸のむこうでは、同じようにユーコちゃん達に説明しているユーミさんの姿がある。


「まあこれで丸く収まるのぢゃから、悪いことばかりではないのぢゃ」


「だにゃ。朝に断るだけだったら、またいつ狙ってくるかわからにゃいにゃ」


「でもモリーが戦うことは無かったんぢゃ無いかの。あやつらずうずうしくも朝飯までたかりおって・・・」


「まあまあタマキ。あっちはあっちで大変みたいだし、いいじゃないか。それにワシだってたまには体を動かしたいし・・・歩く以外でね」


そう言うとタマキとミケから離れ、焚き火があった場所近くに立つ。同じく説明を終えたユーミさんたち三人がこちらに向かってくる。ユーコちゃんだけはタマキとミケの方に歩んでいった。

同じ場所から観戦するらしいな。


「昨晩の取り決め通り、三人で行かせてもらいます。タマキ殿やミケ殿の魔法を見ればモリー殿がただ者ではない可能性が無いとは言えません。が、今の私たちから見ればただ腕の良い料理人です。しかし全力で行かせてもらいます」


そう宣言するユーミさんに追随するように頷くクミさん、ベーアさん。

クミさんは剣を、ベーアさんは弓ではなく短剣を構えている。そしてファイティングポーズをとるユーミさん。拳にはガントレット。

一方のワシは自然体。こんな時でもどうやって殴る蹴るをしないように制しようかと考えてしまった末にこうなった。あまり痛くはしないから・・・・せめて早く終わらせよう。


「「それでは、はじめ!!!」」


タマキとユーコちゃんの示し合わせたような合図で決闘の火蓋は切られた。

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