七九 砂漠スケート
目が覚めたのはぼちぼち陽が昇るかなって頃だった。
薄暗い中体をおこすと、まだちょっとだるいけど問題はなさそうだ。
後を任すといったワシの言葉を聞き入れてくれたのか、毛布が掛けてあってちゃんとテントの中のようだが・・。隣ではタマキが寝息を立てている。
起こさないように用心しながら、テントを出ようとするとミケにはち合わせた。
「お、おはよう、モリー・・・あ、あの。体は大丈夫ですにゃ?」
「おはよう、ミケ。ちょっとだるいけど大丈夫だよ」
「・・・あ、あれだけの事をして、だるいで済むんですにゃあ・・・」
なぜか心配と呆れが合わさったような反応をされる。
「ところでミケはなんで外に?」
「一応見張りですにゃ。タマキと交代でやってましたにゃ。今はボクの時間にゃんだけど、そろそろ朝だし一旦テントの様子を見に来たにゃ」
そこまで考えてなかった!そりゃそうだよするよな、見張り・・!
女の子たちに見張りやらせて気を失っていたとかちょっと情けないんだけど。
「それで、一晩なにもなかった?」
「それは大丈夫ですにゃあ。ちょっと寒かったのでどちらかと言えば火を消さないようにするための見張りにゃ。空からも敵は飛んで来なかったのにゃ」
「空からは来ないかもしれないけど・・」
「地上は無理ぢゃろ・・・」
ミケと話をしていると、タマキが頭を掻きながら起きてきた。
ちょっとうるさかったかな?
「おはよう、タマキ」
「おはようなのぢゃ・・・ミケもおつかれなのぢゃ。・・まあ見ればわかるぢゃろうけど、お主、島で気を失ったのと同じ感覚で今後放ってはならんぞ。タマキさんとミケさんとの約束なのぢゃ」
なぜか一方的に約束を取り付けられたんだけど、ワシ一体何をしたの?
見ればわかるというタマキの言葉に連れられてテントを出ると、そこに広がっていた光景は昨日とは似ても似つかない景色・・・氷の世界だった。
砂漠で火の番って?と思ったけど必要だわ。火が消えたら凍死しかねん。
見渡せる遥か向こうまで凍ってそうである。これって太陽出てきてもそうそう溶けないんじゃ・・・?
「の?」
「・・・本当にこれワシがやった?」
「他にだれがおるんぢゃ?こんなこと出来るのはそうおらんぢゃろう。知っておるのはウチ、モリー、義母君・・・・結構おったがウチはお主に後を任されたんぢゃからこんな大掛かりな魔法は使わんし、義母君は玉の中。今はダンジョンぢゃから出てこれん」
「モリー・・・目立たにゃいけど・・・おそろしい実力にゃ」
あきれ顔のタマキとちょっとの恐怖となぜか憧憬がまざった顔のミケ。
自分のやったことの大きさを考えればこの二人の顔を素直に受け入れるしかなかった。
・ ・ ・ ・
「しかし・・・あれはダメだな・・やり過ぎだな・・」
飛んでくる一反木綿達を切りながら反省する。こいつは布なので殴りでは効果薄と考えて珍しく包丁で戦闘している。
あれから朝飯を食べてさあ動こうと思ったんだけど、滑ってしょうがない。靴に昨日手に入れたサソリの殻を加工して付け、スケートの要領で進んだんだが、行けども行けども氷は終わらない。
太陽が昇り昼ぐらいの時刻になってようやく氷が解けてきて、戦える足場ができたのだ。
「まあ、普段モリーは魔法を使わんからのう。しょうがないといえばしょうがないのぢゃ。・・ぢゃが、普段から自分のステータスを確認できるのぢゃからもっと興味をもって確認したらどうぢゃ?」
空に浮かぶ二つの影に魔法で応戦しながらワシの独り言に反応してくれるタマキ。
どんな奴らと戦っているのかというと太陽神達と風神である。
このふたり・・あろうころか一反木綿で太陽と北風ごっこのような事をして遊んでいやがった。内容はどちらが多くの一反木綿を一回の攻撃で滅せれるかという物騒なものだったが・・・。仮にも神とつくやつらが何をやっているのか。
あ、きのうの雷神のあの表情、これが原因じゃない?相方が取られちゃったって拗ねて雷撃飛ばしてたんじゃないの!?
そしてミケは黙ってネコのようなライオンのような化物・スフィンクスと戦っている。
ワシが知っているスフィンクスはまずなぞかけをするんだけど、こいつはいきなり襲ってきやがった。楽しみだったのに、答えが人のあの問いかけ・・。
最初はワシが戦う予定だったんだけど、ミケが同じ猫(?)同士やってみたいと立候補したので任せている。
かなり苦戦しているみたいなんだけど、なんとかなっているし手出しするのは無粋だな。
まずワシが終わった。考えればこのラインナップの魔物だと一番雑魚だろうし。
次にタマキ。昨日の雷神のうらみと言わんばかりのイカヅチでごり押しした。
そして、満身創痍でミケが猫対決に勝利した。ミケが回復魔法を使えなかったらやらせない戦いだったな。
そのスフィンクスがこのフロアのボスだったらしい。倒した直後地響きを立てながら、地面から巨大な四角錐状の石造り建造物がせり上がってきた。
それほど大きいものではなく、せいぜいワシの身長の三倍程度で地響きの大きさの割には小さいがその入り口らしき場所には魔法陣が描かれている。
すぐに行きたいという気持ちもあったんだけど、昨日の雷神といい先程タマキが片手でひねっていたヤツらといい神の名を持つやつが多すぎる。
全く問題が無いのはタマキとたぶんワシだけであろう。ミケにはちょっときつい戦いが続くのかもしれない・・。
そう考えるとこのまま進むのは愚策である。せっかく平和なダンジョンになったのだ、このフロアでもうちょっと休んでおこう。
ミケの体力を戻す意味合いもこめて今日はこの先に進まず、なんの生物もいなくなったこの広大な砂漠を引き返し、オアシスで明日への英気を養うのだった。
◆今回のフィギュア収穫◇
イッタンモメン
ラー
アメン
アテン
ホルス
フウジン
スフィンクス




