七八 荒野からの穴を潜れば
「若干ぢゃが・・・魔素を強く感じるのう・・」
穴を見ながらタマキが言う。
茂みに隠されていたその穴はそんなに大きくはなくワシには何にも感じないのだけど、独特のプレッシャーを放っているらしい。
タマキは怪訝そうな顔をして、ミケは尻尾を逆立たせて警戒している。
「どうする?入ってみる?」
「そうぢゃのう・・・ミケのスキルが発動して、ウチも魔素を感じるこの穴はダンジョンぢゃろう・・このまま歩いていてもつまらんし、入ってみようかの」
「ボクもちょっとこの辺りの魔物には飽きてきたのにゃ・・ちょっと刺激がほしいかも・・」
すっかりミケもワシたち寄りの人材に変わりつつあるな。
出会った頃は戦闘から最も離れた人種だったんだけどなぁ・・。
二人の要望もあり入ってみることに決まったんだけど、あとでめんどくさい事にならないかな?
周りに集落みたいなものは見当たらないし、これってまた新たなダンジョンなんじゃ・・となるとまたあれやこれやと一悶着ありそうなんだが・・・。
元ギルド職員であるミケならばそういうことも詳しそうだと聞いてみたら案の定、
「もちろん報告義務が発生しますにゃ。ギルドが定める冒険者の定義はにゃにもアイテムの流通のために採取や収集することも魔物を討伐することもありますが、その中にダンジョンの報告もあるにゃ。冒険者の意味は何ぞっていうことににゃりかねにゃいから報告だけでもしにゃいと。入っても入らなくても、どのみちここを見つけてしまったから一悶着にゃのにゃ」
手遅れだったらしい。
あんまり何も気にせず冒険者になったけど、そりゃ気ままに旅だけできるワケないか。一応職業だしね。
よく考えればダンジョンを見つけるだけでお金の入るっていうのはかなりおいしい職業だと思うんだけど、ドロップ品の納入収入がありお金に困っていないお金に無頓着なワシはそこまで考えていない。
今回のこのダンジョンも見つけちゃったし、もう手遅れならばついでに入っておこうぐらいの気持ちで入っちゃったんだ。
・ ・ ・ ・
入って後悔した。暑い・・・。
先程まで文句しか出なかった荒野がなつかしい。気候も悪くなく、草木があってのどかであったんだから。あれは贅沢だったんだな。
今目のまえに広がっているのは砂漠である。日差しはこれでもかってぐらいに降り注ぎ、それを遮るものはほぼない。入った時に飛ばされたのがこのオアシスじゃなかったらヤバかったかもしれん・・。
「・・とりあえずこのオアシスを拠点として東にでもあるいてみようか・・」
「・・そうぢゃのぅ・・」
「・・にゃあ~・・」
愚痴っても、文句言っても進むしかない。ダンジョンに入ってしまったんだから、ワシらには前進しかない。
お金があるんだし辺境ギルドで買ってくればよかったのに、ついつい忘れていたんだよなぁ、帰還の羽。
歩くとそこらじゅうから砂に潜ったりして隠れていた魔物たちが集まってくる。
砂の魔物ってなんかビジュアルが微妙なのが多いなぁ。
ミミズみたいなのとかうじゃうじゃ出てくるからちょっと気持ち悪いんだけど。
そんなうにょうにょした奴らを蹴散らしていると、今度はサソリの大群である。
サソリってこんな風に集団で出てくるものだったっけ!?
更になぜか落雷のおまけつきである。雲ひとつないこのそらの何処から落ちてきたのかという雷はランダムで落ち、ワシらを狙っているわけではなさそうだが・・・?
地上の敵が予想外に多い・・とはいっても辺境ダンジョン程ではないので問題はないのだけど時々敵味方関係なく降ってくる雷が鬱陶しい・・。
空を見ると、さっきまで何も無かったのに一つお髭の配管工のレースゲームで信号をつってる亀がのっているみたいな雲が浮かんでいた。
よく見ると・・つまらなさそうな、さびしそうな、いじけたような・・ともかくなんか悲哀ただよっている顔をしていた。
なにかがあったのだろうとは察したが、その腹いせとばかりに雷を落としてくるのは勘弁していただきたい。
というわけでタマキさんの隕石で残念なことになりました。
雷が落ちてこなくなると、もはや気をつけることもなくなり、地上の掃討作戦が始まる。
見た目が気持ち悪いと言っても戦力的にはアマゾネスの方が相当上なので、そんなにもとより苦労してはいない。ただ気分的には盛り上がらんな。
そうして進んでいく事約半日、さすがの太陽も傾き始めたころたどり着いたのは・・・最初のオアシスだった。どうやらRPGで砂漠の面によくある無限ループのダンジョンだったようだ。三人ともさすがに膝から崩れた。
もう歩きたくないと言う思いが合致したワシらはオアシスで一泊することになった。
道具箱からご飯やら毛布やらを出すワシ、簡易ながらテントをはるタマキとミケ。
夕飯を食べ終わると、一つの事が頭によぎる。以前河童のところで一晩泊った際も寝込み(正確には合体中)を襲われたんだっけ。
となると・・今回は結構危険かもしれないな。まだ南北は歩いてないからなぁ・・しょうがない。久々に魔法使うかな。
「タマキ。ワシこれから久々に魔法使うけど、後のことお願いできる?」
「それは良いが・・・魔法ならウチが使えばよかろ?そもそも何につかうんぢゃ?」
「ワシの二重魔法・・ぶっ倒れる前提の全力のを使う。これでどれくらいの範囲いけるかわからないけど、その範囲・・氷漬けにする。どうせ朝になって太陽が昇れば溶けるだろうけど」
「・・・・なるほど。魔物が襲ってこんようにしようって事ぢゃな・・まぁたまには全力で魔法放ってもよかろ。わかった後の事は任すのぢゃ。それと義母君特製の魔力回復薬もよこしておけ」
何をいっているのか全くわかっていないミケをよそに、タマキに道具箱からヨーコさん印の薬を数本渡す。それから冷える夜になるかもしれないから用心するように言ってワシは久々に全力で二重魔法を放った。
「“氷結庭園”」
◆今回のフィギュア収穫◇
ポイズンコブラ
キラースコーピオン
ワーム
サンドワーム
アースワーム
マッドスライム
マッドゴーレム
ライジン




