七三 身に余る大金が入ったようだ
翌日朝も早くからギルドに来ている。
ライムさんとは日付は決めたけど時間までは決めていなかったので、早く来る必要はなかったんだけど、念の為朝飯を終えて身仕度を終えるとすぐに来た。
先に来ておけば、文句言われることはないのだ。誰もいない建物だから早すぎで怒る人もいないし。
親切にしてくれていてワシらの唯一とも言える知人で協力者なんだけど、ああ見えてあちらはすごーく偉い人でこちらはなりたて冒険者。別に権力に媚びへつらうつもりはないけど、波風立てずに終われるならばそれに越したことはない。
自宅から持参した煎茶と羊羹で一服していると一時間もしないうちにライムさんは現れた。
「あら。もう来ていたの?早いわねぇ・・・。・・・なんか美味しそうな物たべているわね」
催促してるわけじゃないのよとはいうものの、そんなことを言われれば出さないわけにはいかないじゃないか。
とりあえず話の前にみんなで一服する事になった。
「じゃあ、話を始めるわね。取りあえず今回の依頼は全て達成ということで、ランクは三人ともVまで上げてあるわ。破格の上昇なんだけど、言われた通り納品したアイテムから依頼達成に必要な物をとっての事だから不正でも何でもない。それと今回のダンジョンの情報提供っていうのもプラスしたかったんだけど、こちらは調査団が実際入ってからになると決まったから保留してあるの。で、これが依頼分の報酬ね」
ドンと麻袋を机に置かれる。
「それとこっちは買取のみの買取金額なんだけど・・・ごめんなさいね。伝説級のアイテムは今まだ審議中なのよ。なにせなかなか出てくる代物じゃないしね。とりあえず前金としての金額を入れておいたわ。正式な金額が出たらまた手紙だすから最寄りのギルドを教えて。そこに送るから」
そう言うとドシンと麻袋を机に置かれる。なんだこれ?さっきのより袋の数が多いんだけど・・?
「冒険者だから使いやすいように銅貨や銀貨で入れているから合計で・・・」
「あ。別に言わなくていいのぢゃ。そもそもそれぞれの依頼達成金なんて見てもおらんからわからんし、相場も知らん。ぢゃがお主はそれなりの地位の人ぢゃしごまかしたりもせんぢゃろう?なら見れば分かることだけで良い。大金ぢゃろ」
「・・・そうね。まあそうなんだけどね。三人組の冒険者が手に入れるには多すぎるわ。贅沢しなかったら・・・そうね、二十年ぐらいは生きていけるかしら」
「にっ・・・・!!???」
ワシはまだこの世界のお金事情をよくは知らないし、タマキもお金とは無縁のハズである。
唯一その辺をよく知っているミケが驚きのあまり腰を抜かしてしまった。座っているのに・・・。
「で、どうする?」
「??何をですか?」
「冒険者には無料でプリペイド機能のついたタグを作ってあげてるのよ。大金持って冒険なんて山賊やら盗賊やらのカモになっちゃうもの」
ああ、なんか結構前にヨーコさんから聞いたことがあったな、それ。
どうしようか。別にワシの道具箱ならなんの問題も無いけど・・・ここはカモフラージュも兼ねて作った方がいいのかな?
「じゃあ、ワシら三人にタグを作ってもらっていいですか?それと金額は4等分でお願いします。余った分は念の為ってことで持ち歩くことにします」
「妥当ぢゃな。これから先もそれで頼むのぢゃ」
「・・・・・」
腰を抜かしたままのミケは何も言わないけど、コレで行こう。
「分かったわ。じゃ、すぐに再計算してタグを作って来るから・・・そうね、一時間待ってて。っとその前に、はいこれ」
ライムさん三枚のカードを差し出すと消えてしまった。
なんだこれと渡されたものを見ると、ああ、この間没収されてたギルドカードか。
あれ?でもこの間と色が違うような?ワインのような赤色なんだけど・・・。
ライムさんが帰ってきたのはきっかり一時間たったころだった。
もうすでに金額を入れているらしいタグにお馴染みの血一滴の儀式を済ませると、ギルドカードに新たに金額欄が浮かぶ。が、その金額の多さにびっくりする。いくら金の事があまりわかっていないとはいえ多いことぐらいはわかる。いちおう尋常小学校はでておるのでな。
聞けば金額欄は非表示に出来るということなので、そう設定してもらった。
じゃなきゃ、見るたびにミケが腰を抜かしかねないしね。それに加えてせっかく『現金を持ち歩いてません』って言っているのにこれじゃ『私こんなにもってます』って宣伝しているのと一緒じゃないか。
現金も受け取り、今後も今回の四等分方式で報酬・買取金を受け取ることを了承してもらった。
めんどくさい奴らでもうしわけありません。
めんどくさいついでにギルドカードについて聞いてみた。
単に色が変わるっていう些細なことかもしれないけど。
「あ、それね。ごめんね言い忘れていたわ。一応私が貴方達の専用窓口っていうことになったから、それが分かるようにしておいたのよ。カードの右下に私のサインが入っているでしょ?まあ別にどうこう言うものでもないけど、とりあえずはギルド本部副マスターライムのお気に入りってことにはなるかな。別に何色でもよかったんだけど、なんか特にモリーさんは赤が好きそうな顔をしてたからね」
ワシそんな顔してるの!?確かに赤は好きだけど!
前世では地元の贔屓球団のチームカラーだったし、いかにも燃えてるって感じがして好きなんだ。
だけど、いざその色がカードになるとなんか退場させられたりしそうだし、忌まわしき記憶の赤紙召集令状思い出してちょっと嫌だったりする。
それはそうと、このカードちょっとやばくなったな・・・。
つまりこれでコネがあることを証明するってことになるのか・・・ギルド本部副マスターの・・・。
便利だからとか手間が省けるとか、こっち都合で偉い人を頼りにしていたら、なぜか強力な後ろ盾を手にしてしまった初心者冒険者たちなのだった。




