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七一 思わず和む心の古里

結局ミケが倒したのは普通より大きいスライム一匹ということで、たいした疲れも無く大丈夫ということで、扉の向こうに進むことにした。

ああ、またあの暗い石畳か・・・そういえば鬼火もいたんだっけ。あれって打撃技って効くのかなあ?そんなことを考えながら扉を開けたんだけど・・・。

扉の向こうに広がっていたのは、のどかで田んぼが広がる日本の原風景だった。

目を疑った。目をこすった。だけど風景は変わらない。


「ずいぶんと・・・のどかで良い所ぢゃなあ・・モリーに背負って通ったときは真っ暗なところぢゃったが、ボスを倒すとああなるのかの?」


「・・い、いや違う。ワシが一人で入った時も暗い石畳が続いて明りは灯篭の鬼火のみ・・・こんな明るく良い所じゃ無かったよ」


これは一体どうしたことか。ダンジョンっていうのは外の世界とは全く違う所だけど入るたびに変わるようなことはないんじゃなかったのかな?


「となると、ここは一体なんぢゃ?似ても似つかんのぢゃ」


すると後ろからついてきて、風景にうっとりしながらワシらの話を聞いていたミケが挟む。


「・・・おそらく、条件が関係してるんじゃにゃいかと思いますにゃ。そんにゃに多くは発見されてませんが、あるにはあるんです。こう特定の人が入ったらダンジョンが変化するっていうの。それは例えば、剣を使う人がいたら道場のようなダンジョンになったり、女だけだったらやたら触手系魔物のおおいダンジョンだったり・・・」


なるほど、前回はワシひとりで扉の向こうに行ったからああなったと・・・。

ずいぶんと差別してくれるな、こっちのほうが相当いいダンジョンじゃないかとちょっと熱くなりそうだったけど、八尺様の性質を思い出せば納得いかない事もないのだ。

彼女は地蔵が壊されるなどして結界がなくなれば村にやってきて一人の若い男を魅入って取り込む・・・あの時ワシはタマキをおいて一人で扉をくぐった・・・つまり・・・。

若い男が一人で来る。八尺様にとってはこれ以上ない取り込みチャンスである。

さらにあの灯篭が結界の役割をしていて鬼火が消されたことで結界が無くなったとするならば・・襲われたことにも納得するしかないな。

まあ、そこまで怒ることでもないよ。前世で会いたかった人外に出会えたわけだし、悪いことじゃない。ただ目の前に広がる風景とあまりに落差があったからちょっと思う所があっただけさ。

早速探索しようかと思ったんだけど、


「こんないい風景ぢゃ。ちと早いが昼飯にしようぢゃないか」


「いいにゃあ。賛成にゃあ」


そう言う二人に押され、あぜ道にゴザを広げて、昼飯を先にした。

計ってないけど、ちょうど握り飯といなり寿し(かやくごはん)だったので風景にそぐっている昼飯となった。


昼飯が終われば探索である。

田んぼに刺さっていた案山子が襲ってきたり、田んぼそのものが襲ってきたりとなかなかにスリリングなのにのどかな風景がその殺伐さを和らげてくれる。

ワシ以外の二人はワシほどはこの風景にいいというのはあっても感動を覚えていないのか、結構普通に倒して行っているんだけどね。

やっぱワシは元日本人なんだなぁ。自分でも思っていた以上にこの風景に癒されているよ。

そういう風にほわほわと戦っていると不覚をとる。いきなりすっ転んでしまった。受け身をとり怪我などはしてないが足元を見ればロープが張られていた。

ダンジョンでこんな古典的な罠を仕掛けてくるのは誰か逆に興味がわく。

すると風と共に鎌で切り付けてくる小動物が。しかし鎌がワシに当たることは無く無情に空を切って、体勢を崩したその隙に殴り一発。消えていくその小動物の後ろにはなにやら小さい壺を持っている同じ小動物かボー然としている・・・しまった・・・これカマイタチか!ああっ、薬塗られてみたい!!だけど怪我してないのに塗ってくれるはずがない!!

後の祭りである。役割を全うできなかった壺持ちのイタチはおそらくロープを張っただろうイタチと共にかたきとばかりに噛みついてくる。こうなるともうただの魔物だ。ワシは泣く泣く殴るしかないのだった。


数刻後、敵はあらかた片付いていた。最初に入ったダンジョンはやっぱりおかしかったんだなというのが再認識できたのは収穫だ。敵の数が全く違う。


「ミケもこれくらいなら大丈夫ぢゃろ?」


「でも、そろそろ疲れたにゃあ・・・」


「ぢゃ、そろそろ切り上げようかの」


切り上げようかの、じゃないよタマキ。魔法陣はまだ発現していない。

ということはまだボスを倒していないってことじゃないの!?

そんなワシの言いたいことが分かったのか、タマキは指さしながら言った。


「ボスなら多分あれぢゃろ。なんかくねくねしとる白い物がおる。この風景には似合ってないってことは十中八九そうぢゃろ」


目をタマキが指した方向に向けると、たしかに何か白い物が動いてる。くねくねくねくねしてる・・・・遠めだと八尺様に見えなくもないけど・・・あの動きは!!


「ダメだぞタマキ!あれは近くで見ると精神が壊されると言った言い伝えが・・・!!」


「ん?そうなのかの?あれが何か知っておるようぢゃの、モリー。まあ後でその話は聞くとして・・・・」


そういうとタマキが目に力を入れる。なにも無かったはずの空から突如巨大岩石が白い物めがけて落下した。

地面に着弾する寸前で消えたが、いたはずの白い物はいなくなっている。


「近づかなければ、どうということはないということぢゃな」


胸を張っていうタマキ。いや凄いけどね。絶妙な魔法の操り方だけど、多分あいつもこんなに簡単に倒せる奴じゃないはずなんだけどなぁ・・。

後でヨーコさんの古~い蔵書で調べたらやはりワシが思っていた通りの奴で魔法無効で打撃しか受け付けないタイプの奴だった。なるほど本来は接近戦に持ち込んで状態異常をさせながら戦うって腹か・・・まさか巨岩(物理)が落ちてくるとは思わないわな。

おそるおそる近づくもそこにあったのは魔法陣とフィギュア。

跡形も無く潰れたらしい。ワシやミケが戦おうとしていたならば近づかないといけないから、ちょっとの被害ぐらいは出てたかもしれないけど・・・。

残念だけど、相手が悪すぎたと思ってどうか成仏してほしい。


おもわず合掌せずにはいられなかった。




◆今回のフィギュア収穫◇

スケアクロウ

ドロタボウ

カマイタチ

クネクネ

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