六四 再突入は疾風迅雷
とりあえずギルドの扉に休業中の札を出すことからはじめた。
もうミケはギルド職員ではないのだから勝手にギルド業務をするわけにもいかないし。
呼び方も「いつまでもさん付けはイヤ」というミケの意見を聞き呼び捨てに変えた。
たしかに仲間内でいつまでもさん付けしてるのも変な話だしな。
それから引っ越しの準備である。
旅支度ではないのかという疑問ももっともだけど、ギルド職員をやめたミケに戻る場所はない。家の中の備え付け家具以外の私物はすべて出さないといけない。
持てるだけの荷物を持っていくつもりだったみたいだけど、ここで玉の出番である。
玉の事をいいふらさないでほしいということを約束して貰って、説明をする。
にわかには信じられないだろうが納得してもらうしかないし、一緒に行く以上中の事も知って貰う必要がある。
したくないとは言わないが、家があるのに野宿しかできないではなんか腑に落ちんし。
「ま、聞くより見た方が早いぢゃろ」
説明もそこそこにタマキの一言で玉の中に入る一行。
はじめてワシらが入った時と同じようなリアクションをするんだろうなと思っていたんだけど、その通りのリアクションをいただいた。
玉の内部を一通り説明した後、使って貰う部屋をきめて、住人に紹介する。
旅立ったと聞かされていたヨーコさんがいたり、メイドさんの口に血を一滴たらしたり、ミケにとっては驚く事ばかりだろう。
それでもなんとか耐えてくれていたのには「まあモリーたちだし」という大前提があったとかなかったとか。
そのさあ、○○だしっていうのやめない?その○にはいるのがワシの名前っていうのは相変わらず自分こそが常識外って烙印みたいで嫌なんだけど・・・。
一通りやることが終わったあとは引っ越しだ。
私物をドロップ品のアイテムボックスに入れて玉の中へ。
ヨーコさんの時の事を思い出して、また何往復するのかとか何時間かかるのかとかおもっていたんだけど、ほぼ備え付けでミケの私物と言うのは本当に生活するのに最低限のものしかなく、なんと往復すらもなかった。用意していた持てるだけの荷物こそがミケの全財産だったのだ。そんなわけで引っ越しはとっとと終わってしまった。
凄く早く終わったのだが、今日はもう日も暮れそうだということで活動はそこまでとなった。
明日はどうしよう?まだカードがないから何処かに行くって言うのは無理だし・・と夕食の後話していたら、タマキがとんでもない事を言いだした。
「もう一度最後にあのダンジョンに潜らんかの」
「・・・え?なんで?」
踏破した以上もう用事はないはずだけど・・・。
それに超危険だといわれたダンジョンだから、あんまり気安く入っているとまた一つ常識外れの称号が貰えそうでいやなんだけど。
「いまのままではミケが仲間はずれぢゃからの。せっかくの最初に踏破のダンジョンは揃えたいぢゃないか。冒険者になってからの時間もそう変わらん仲間ぢゃし」
「・・でも問題があるぞ、それ。ライムさんも言ってたじゃないか・・あそこはヤバいダンジョンだって・・。ワシらだから踏破出来たけど、ミケが一緒だとちょっと難しいんじゃないか?」
「そ、そうですにゃ。とてもじゃにゃいですけど・・」
「ぢゃから、ミケはモリーが背負って、腕輪を増やしてミケにつけて・・・」
タマキなりにかんがえた攻略方法をおろしていく。
若干ながら不安を感じたが、しぶしぶながら了承するのだった。
・ ・ ・ ・
次の日さっそくダンジョンに戻ってきたワシら夫婦とネコミミ娘。
目の前には前回と同じく豚の軍団が集まってきている。
ちなみにタマキの考えた攻略方法はこうだ。
1.共有の腕輪をミケにつけてレベルをあげる。
2.ミケは今回は戦闘に参加しない。
3.ミケはモリーに背負って貰う。
4.敵は今回はタマキひとりで対処。手出し無用。
5.移動の時はタマキをお姫様だっこで迅速に。
今回ワシがやるのはおんぶ、だっこ、かけっこだ。どこの子供だろうか?
今回の肝であるミケはおんぶされているだけである。どこの赤子なのか?
そしてタマキは戦うのみ。どこのガキ大将なのだろうか?
というか自分で走ったところであまり変わらんだろうに・・。5はあきらかに自分のして欲しいことを入れただけじゃないのかな?
「今回はあくまでミケにダンジョンとはどんなのかと自分が管理していたダンジョンはどんなとこだったのかを見せることにあるのぢゃ。だから一番効率のいいやり方でいく。この方法なら夕方には出られるぢゃろ。あ、アイテム収集はもったいないので協力してやるのぢゃ。その時だけはモリーの背から降りるのぢゃ。おそらくミケは今まで格闘技とかの経験もなかろ?そのへんはダンジョン出てからおいおいウチらで教えて行くからのう」
人における悪夢のようなダンジョンを観光案内のように言う元・魔物。
そしてその通りにしちゃうのが、わが嫁の怖いところだ。
豚は丸焼き、河童は落石、牛も丸焼き、猿は感電・・・。
とりあえずミケに「これだけいますよー」っていうのを見せてからの一撃なのだが、レベルが上がったせいなのか前よりも殲滅速度が上がっていたな。
そして相変わらずしんどいのはアイテム拾いである。戦闘よりこっちが時間を食うからな。
三人がかりで拾うとはいえ、今回も神話級から食糧まで幅広いものが、前回と同じだけ落ちているのだ・・はぁ。
仕掛けが判ればなんの問題もないとばかりに、本当に夕方にはダンジョンから出てこれたのだ。
ミケはワシの背中でずっと驚いている風だったけど、少なくとも自分がどんな二人組に付いて行こうとしているかは理解してもらえただろう。
ダンジョンから出たワシらはさっそくライムさんに貰った魔法陣で、ダンジョン内アイテムを神話級を除いて全て送った。だれからのアイテムか分かるように一筆添えて、ね。
動作チェックもしたかったのもあるけど、それがちょっといけなかったみたいだな。
全てを送って、さあ魔法陣をたたむか・・と思っていた所に短い文章が書かれた手紙がむこうから送られてきた。
『もうちょっと時間を考えて送ってくれるかしら』
その短い一文には妙な威圧感が込められているように感じた。
もう夕暮れである。二十四時間仕事をやっているのは城の兵隊ぐらいのこの世界。
お怒りはもっともだった。




