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六〇 ギルドでのうららかなひととき

翌朝、朝飯をつくりながら、いろいろ仕込んでいる。

朝食は久しぶりの白米・油揚げの味噌汁・きゅうりの浅漬という純和風メニューだ。

昨晩が大量のトンカツだったのでこれぐらい軽い方が胃に優しい・・・。

タマキは見かけによらず普通にワシの二倍は食べるし、ヨーコさんも食いだめとばかりに一緒の食事のときはタマキと同じぐらい食べる。メイにいたっては際限なく食べる。食べなくても平気なのに・・・。

周りにあわせて食べていると、ついつい食べ過ぎてしまうと言った具合だ。

こんなときキャ○ツーとかがあればなぁ・・。

仕込んでいるのはダンジョンで大量に手に入ったキュウリ。

様々な漬物にして加工しておこうと塩漬け、ぬか漬け、カラシ漬けにキムチ漬けなどなど片っ端から漬けて行く。

しかしもとより一本が極巨大なこの世界のキュウリ、漬けども漬けども一向に減らない・・。

道具箱には数えきれないほどのキュウリが眠っているのだが、一生でつかいきれる気がしない。

生ものだけど、これってギルドで買い取って貰えるんだろうか?

もう一つは、寝る寸前に思った肉まんだ。

こっちのほうもダンジョンで大量に手に入れた豚肉をふんだんに使って作っているが、かたまり一つ分使ったのは失敗だったなと後悔している。

みじんに切って行くのも大変時間がかかったし、包んでも包んでも終わらない・・。

またワシの攻撃力が上がってしまうな、はは。

でも、こっちの方は非常食としてもそのまま食べることもできるからあってもいいか。

そんなこんなで仕込みと料理だけで午前中が終わってしまった。


昼過ぎ。つくりたての肉まんを手土産にギルドへと向かう。

いまはもう護符はないので、ダンジョンは見えない。

あの護符もどういった仕組みなんだろうか。

つけるのは手動だったくせに、ダンジョンから帰還すれば消えてしまった。

あいかわらず人気のない柵の中を進み、数日ぶりにギルドに入った。

中もあいかわらず閑散としている。

そんなギルドのカウンター奥で腕をくんで目を瞑りなにやら唸っているネコミミ少女。

どうやら、ワシたちが来た事に気付いていないようだ。


「こんにちは」


「にゃっ!!??」


いきなりの挨拶にびっくりさせてしまったようだ。

あ~あ~、尻尾まで反りあがってるよ。

たしかに人が来ないギルドで他人の声がするとびっくりするよね。

でもミケさんはびっくりしすぎだと思う。少なくとも裏庭のような近さのダンジョンに潜っているのがいるのは知っているはずでしょうに。


「・・・あっ!モリーさん、タマキさん!おかえりにゃさい」


「うむ。ただいまなのぢゃ」


挨拶もそこそこに手土産の肉まんを渡す。

渡すやいなや、今お茶を入れますにゃと言って待合の机でティータイムが始まったのだ。


・ ・ ・ ・


「それでどうだったかにゃ?ここのダンジョンは」


「一応、踏破してきましたけどなかなか強者だらけでしたよ」


「まぁ、ウチらにかかれば何の障害でも問題でもなかったがのう」


お茶を頂きながら、ダンジョンの話に花を咲かせる。


「そうですかぁ~・・・、にゃっ!?と、踏破したんですかにゃ!!?」


「じゃないと帰ってこれないし・・」


「帰ってこれにゃいって・・・帰還の羽は持ってにゃいのかにゃ?」


「帰還の羽?なにそれ?」


「知らにゃいのかにゃ!?ダンジョンから強制的に離脱するマジックアイテムにゃ。だいたいの人は冒険者になる前に手にいれているものにゃ。てっきり持っているものと思っていたにゃ」


初めて聞いたんだけど・・・!


「・・タマキ、知ってた?」


「・・知るわけ無かろう。知っておったらいきなり突入したりしないのぢゃ・・」


物知りだ、生き字引だと思っていたタマキにも知らないものはあるらしい。

そういえば今までタマキはダンジョンはフリーパスだったっけ。


「うちにもあるにゃ。持ってにゃいのを知っていれば代金はいただきますが差し上げたのに・・」


「・・それならどのみち・・」

「うむ、買えないのぢゃ・・」


「???にゃんで??そんにゃに高くにゃいものにゃのにゃ。一個50Gですけど・・」


「いや、だってワシら・・」

「・・現在、一文なしぢゃし」


今までお金のいらない生活だったし、今は玉があるしいざとなったらこれからもお金なしで生きて行くことも可能だ。

そもそもお金の概念は前世と変わらないなということぐらいは、ヨーコさんに教わっているけど、お金そのものを見たことはない。

信じられるか?見た事もないんだぜ、ワシ。もう成人なのに・・。


「・・ま、まあ色々あるんですにゃあ・・ともあれ踏破したんですかにゃ!おめでとうございます!」


「ありがとうございます。で、早速カード更新して欲しいんだけど、大丈夫かな」


「・・カードこうしん・・」


いままでそれなりにテンション高く話していたミケさんが急に固まる。

あれ?なんか変な事言ったっけ?


「・・どうかしたかの?ダンジョン踏破して証も手に入れたんぢゃ。当然ぢゃろう?」


「・・え~と・・ちょっと言いにくいんにゃけど・・この間大量に依頼品とその他の買取品を送ったんにゃけど・・」


うん。それは確かにダンジョンに入る前に預けたけど・・。

そういえば、あれから一週間ぐらい経つから結果とお金が入るはずだな。


「・・その、あまりに大量だったので、不正を疑われてにゃ・・本部の人が見に来るらしいにゃ・・まいったにゃ・・」


それで入ってきたときに唸っていたのか。

それにしても今まで何も送ったことのない辺境のギルドからのいきなりの大量納入・・今考えれば確かに怪しさしかない。誰でも疑うわな。


「そんにゃ訳でまだ預かっていた品の件終わってにゃいのにゃ・・本当に申し訳ないのにゃ・・」


「いや、こっちも悪かったな。たしかに冷静に考えるとやりすぎた感も半端ない」


「そう言って貰えると助かるにゃ・・で、その件が解決するまでカード更新凍結ににゃっているのにゃ・・だから、」


そこまで言ったところで、ギルドのドアが開く。

そこに立っていたのは長い緑髪の美女だった。

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