五九 ダンジョンのもうひとつの手土産
遅くなる前に終われよと、一応の忠告をしてコレクションルームをあとにした。
たぶん、聞いてないんだろうなぁ・・。
寝なくても大丈夫とか食べなくても大丈夫とか、人と違うところをフルに活用してしまっているのがメイだ。
人と同じように朝起きて食べて、昼食べて、夜食べて風呂入って寝る、そのあいだあいだに何かするという生活をすれば、ヒマすぎてどうしようもないなんてことは減るんじゃないかなぁ?
というかそんなにヒマなら、メイは多分タマキよりも長い間生きて(?)いるようだし、ヨーコさんに古文書とかでタマキがまだ訳していない本とか借りて、訳して貰ってもいいかもしれないな。
寝室に戻ってきたんだけど、タマキはまだいないようだ。
『寝るときは必ずこの部屋で』という夫婦の不文律があるのでいずれそのうちくるんだろうけど。
ベットにころび、ここ数日を反芻する。
島から出て、ミケさんと出会い、ダンジョン踏破・・・か。
いままでゆっくり流れていた時間が、いっきに動き出してしまったみたいにてんこもりのイベントだらけだ。
まあいざワシ一人がやったのはといわれると、料理とかアイテム回収とかちょっとの戦闘とか料理とか・・うん。考えるのはやめよう。
まずミケさん。
おどろいたなぁ。本当にふたなりさんが存在しているのもだけど、それ以上にそのことがこの世界には認知されていないことにびっくりだ。
両親も何か変だと思っていたんじゃないかと思う。とくにオンナノコの日に関しては普通は不自然と思うだろうし、気付きそうなもんなんだけどなぁ。
もしかしたら先天性に生えていたわけじゃなくて、尻尾が二又に割れたと同時に生えてきたから、両親が気味悪がって放置したとも考えたけどそれはないな。
あきらかにミケさんは男だと信じていて、両親もおそらくギルドカードを確認してクエスチョンがついているとはいえ男という文字を見ているはずだ。
それを信じられるということは、二又になる前から生えていたことを知っていたって事になるしな。
そして、ダンジョン。
聞いていた以上におもしろい存在だな。外と中でこうも変わるかってぐらい、別世界といわれればまた飛ばされたかと思うぐらいベツモノだった。
ここしか知らないから確かなことは言えないけど、ここに関してだけいえば近くの森でスライムやらハチやらにしか会ってないのに、いきなりオーク軍団とか河童軍団はあきらかにおかしいだろう。
さらに西遊記が題材につかわれるとは予想外だった。
小説の中のキャラクターと戦えるのはそれなりにドキドキしたんだけど、どうしてこうなってしまったんだろうと思わざるを得なかったな。
・・・ダンジョンに関しては考えれば考えるほどなぜかあのてへぺろ女神が浮かぶけど、確かな証拠がないのに疑ってはいかんな。
そんな風に反芻しているとドアを開ける音がする。
ヨーコさんもメイもノックだけはするようにと頼んであるので、いきなり開けるのはこの部屋のもう一人の主・タマキに違いない。
体を起してドアのほうを見れば、そこには若干おつかれのご様子のタマキがいた。
「またせたのう、モリー。だがもうちょっとだけ待ってくれなのぢゃ。ちと風呂にはいってくるでのう」
そう言うとタマキは風呂へ行ったようだった。
なんだ今の?最初から風呂に入った後にくればいいのに、あれじゃまるでワシがまだ起きているかどうかを確認しにきただけみたいなんだけど・・?
しばらくしてタマキは戻ってきた。いつもは夫婦ではいるからまったり時間をかけて入っているが一人で入るときのタマキは女の子にしては早風呂なのである。
そしてその姿に驚く。なんとチャイナドレスである。
「ど、どうかの?あのダンジョンの寝室で見つけた服を参考につくってみたんぢゃが・・」
自信なさげに聞いてくる。なるほどメイド服の時と同じく作っていたのか。
あいかわらず凄い裁縫技術だな。中華街や本場で売っているのと並べてもわからないぐらいだ。それほどまでにクオリティは高い。
そしてもちろん似合うか変かといえばかわいいし似合ってはいる。
似合って入るんだけど、いろいろおしいと言わざるをえない。
なぜなら、ワシのイメージではもっとスタイルのいい人が着るイメージの服だからだ。
タマキは控えめに言えばスレンダー、直球でいうと幼児体型なわけで、ちょっとイメージが違う。スリットから見えている足とかはすごくそそられるものがあるけどなんか違う。
「うん。可愛いのは可愛いんだけど・・・」
「・・やはりそうか。モリーもやっぱりそう思うかの。たしかにあの服の持ち主のえーと、らせ・・らせつにょはいいカラダしとったからのう。作ってて感じたんぢゃが、ああいうカラダに似合う服なんぢゃろうの」
ワシと同じような事を思っていたらしい。感想を全部言う前に思った事を言われてしまった。
「なのでぢゃ・・・これならばどうぢゃ?」
そう言うとタマキが白煙に包まれる。白煙から出てきたのは九尾の姿のタマキだ。
変化を解いたタマキはワシと同じような身長になり、胸も尻も大きくなる。胸はAからCぐらいになる。
変化を解くだけだから成長と言うのもおかしいけど、その成長した肢体にチャイナドレスはものすごく似合っていた。
「ウチが自分でいうのもなんぢゃが、この姿ならば似合っておるぢゃろう?今日はこの姿でやろうぞ」
そんな気はしてたけどやはり今夜もコスチュームプレイか・・・ま、いいけど。むしろうれしいけど。でもそれなら・・・
「タマキ、ちょっと髪いじらせてくれる?」
「ん?別にいいが・・めずらしいのう。何年ぶりかの?」
「タマキの髪が綺麗だから、普段は恐れ多くてね。でも今日はせっかくそんな格好してるんだし・・」
ワシはタマキの後ろに立つと髪型をセットしていく。
やっぱり、この格好ならロングのままでもいいけど、ワシはお団子だと思う。
仕上がった髪型を見てワシは満足した。チャイナにはお団子!これ正義!
「おもしろい髪型ぢゃが、不思議と似合っておるのう」
部屋に備え付けの姿見で自分の格好と髪型を確認したタマキも満足そうだ。
その後はタマキの要望通りに合体という運びになったのだが、変化をしてないのが影響しているのかいつもよりも余計に搾りとられた気がした。
最中はせっかくセットした団子がみだれて解けてしまうぐらい激しいものにもなったが、これによりチャイナドレスが団子でもロングでも似合う事を再認識できた。
そして終了後まどろみのなかワシはこう思いながら意識を手放すのだった。
・・肉まん、食べたくなったなぁ・・今度作るかな・・




