五七 家に帰って土産話
今年最後の更新となります。なかなか物語が先に進んでませんが、来年こそはこの辺境の地を出て、もっといえば他の大陸なんかにも彼ら夫婦を旅立たせたいなぁ。
「たまには家に戻らんか?」
地上に戻ってくるなりそんな提案をされた。
魔法陣をくぐると、次のフィールドに行くこともなく、ちゃんと戻ってこれた。
見覚えのある建物が目のまえにある。
どうせなら近いんだし、ミケさんに帰ってきたという報告をしようかと思ったんだが・・。
「うん、まあ、そうなんぢゃけどの・・ほれ、中で獲得したもの、結構いいものらしいし、義母君にみせたら、喜ぶんぢゃないのかの?それに、ほれ、ダンジョンでたっぷり人形ひろったぢゃろ?メイの作業の進捗状況もみておこうではないか」
なんかしらないけど、やけに戻りたがるな。
ま、そこまで言うならミケさんへの報告は後でいいか。
たしかにタマキの言っていることにも一理ないとはいえないし。
一旦戻ることに決めたワシらはひとまず森の中に入る。
人に使っているのをみられるとなにかと面倒になりそうだからな。
元より人の来ない辺境の地なんだけど念には念を、ということで手ごろな木(根元にいい感じで草が生えているような木ね)ををみつけそこで玉を取り出す。
この玉こそさっきの説明だと夢幻級アイテムになるんだろうなぁ。
「ではウチはちとやりたいことがあるでの、また後で。あ、今日の夕飯はダンジョンでいってたトンカツがいいのぢゃ!」
玉に入るやいなや、そそくさと寝室とは違う自分の部屋に入って行くタマキ。
そうなんだ。一応自分だけの時間を作れるようにと、ワシとタマキはそれぞれ自室を用意してもらっている。
いくら秘密ごとのない夫婦でも一人になりたい時間もできるかもしれないからね。
去り際に夕飯のリクエストをしていくあたりがかわいいじゃないか。
作る方にとってはなんでもいいというリクエストが一番困るわけだしね。
メイとあいさつを交わし、異常なしの報告をうけ、ヨーコさんの部屋に向かう。
ノックをすると返事がし、中に入るとここに来る前とはうって変わって優雅に紅茶をすすりながら読書する美才女の姿が・・。
「・・う~ん、いいわねぇ・・もっとはやくここに来たかったわぁ・・」
ヨーコさんは、もうすっかりリゾートにきたセレブと化していた。
様相はそうなんだけど、なんというか・・どちらかといえば現役引退後縁側に座り茶をすするしあわせなおばあさんのような雰囲気を醸しているけど・・。
ワシの母親とはいえ、まだ二十代中盤。いくら十で成人する世界でも老けこむには早すぎるだろう。
聞けば、いままでどおり実験やら研究をしていこうかと思っていたらしいんだけど、メイとの話が興味深すぎて、そっちにドはまり。
メイが迷惑しないように気を使いながら、ワシとの約束のように時間を決めて話をしてもらい、それを今までの自分の体験やら修めた学術・魔法と照らしあわせながらマイペースに本を読んだり執筆したりしていたらしい。
なるほど。だから部屋が汚れないし乱雑になってないのか。
ワシはまずタイガさんの話をした。
「アイツもまだ結婚できてないのよねぇ。これじゃ隠居したアタシと大差ないじゃん」というのはヨーコさんの弁。
結婚出来てないという一点を除けば、全然違うと思うのだが・・。頑張って商売して生計をたてているタイガさんと魔王討伐の恩賞で隠居生活をしていたヨーコさん。この生活の差を大差ないというのは無理がある。
それからミケさんのことも話をしようとしたんだけど、ヨーコさんはミケさんの事は知らなかった。
ミケさんの前任、つまり両親とは面識があったみたいなんだけど、着任当初に一度きり顔を合わせた程度で話も交わした事が無いらしい。
それだと詳しくした話の内容をいってもしょうがないし、ミケさんが実は・・なんて話をしたってネタにはなるだろうけど、そこまで興味ももたないだろう。
なのでミケさんの事はギルドにこんな人が程度の紹介に留めておいた。
ダンジョンの話に移ると、身を乗り出しながら聞くという興奮時のヨーコさんが戻ってきた。
最初ははじめてのダンジョンどうだった程度の話だったのだが、その中身がワシの前世の物語・西遊記がモチーフだったこと、拾ったアイテムがちょっとヤバい代物だったことなどを話すと、目の色を変えさせてしまった。
ダンジョンの中身自体は実際に目で見てもらわないと、どういうことなのか理解できないだろうと思いながらも、なんとか説明をする。
そのときのヨーコさんが記者会見場の記者のように一言一句逃してなるものかという気迫を纏っているのには、少々参ったが・・。
ま、以前前世の話をしたときには肩をゆさぶられ、話をするのに弊害がでたり、それでも話をさせようとするとんでもないものだったことを思うと多少はマシか・・。
アイテムは実際みたほうが早いだろうということで、実際にみてもらい、世界眼で視た説明をしておいた。
魔術に興味があっても武器には興味が少なかったらしいが、説明を聞いた時のヨーコさんの顔は青ざめていた。
「ま、まさか・・王宮でもないのに神話級のアイテムを複数個見られるとはね・・キミ、最初からなんていうダンジョンに挑んでんのよ・・」
タマキとの会話で分かっていたつもりだったけど、そのつもりだった以上に難易度の高すぎるダンジョンだったらしいな。
ちなみに魔王討伐の折に修練の為に数えきれないぐらいのダンジョンに潜ってきたヨーコさんでさえ神話級のアイテムはさほど見つけられなかったらしい。
とりあえず神話級は道具箱のこやしにすることを伝え、何か欲しいの有る?と聞いたところ「特にないけどアタシ杖使いだからしいていえばこの杖」といったので進呈しておいた。
すごく恐縮されたけど、親子なんだからいいじゃないか。




