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五五 猿の楽園から猿が消える日

ぐっすり眠り、腹ごしらえし、意気揚々と魔法陣をくぐったら今度は山の中腹に出た。

しかも木々の生い茂るようなのではなく、どちらかといえば禿山でそこらじゅうに岩が転がっている岩山である。

下山するか登山するか・・と思ったんだけど、下山は・・無理だな。

だって崖だし・・・無理すればワシらなら降りれない事もない気もするし、ゴツゴツした岩肌をロッククライミングの要領で進んでは行けると思うけど、危ない道を選ぶこともないだろう。

しかしなんだこの山・・見れば見るほど不自然だな・・。

まるでもともとあった土台の上に山を作ったような・・・じゃないとこんな垂直の崖はできないだろうよ。

下山しないとなると、ご丁寧に作られている山肌を緩やかに登れるように整地されている登山道らしきこの道を進むべきだろうな。

なんでこんなに上に行く道だけ親切に作られているのかね?

その理由はなんとなくわかる気がするが・・・というか居るよね?上にボスが・・。

わざわざ誘導してくれるくらいだから、よっぽどの強敵か戦闘狂なんだろうな。

そう言う事がなんとなく分かっているのに、登らなくてはいけないのがダンジョンのつらさよ。

登山の途中には草花を愛でるなんて楽しみもなく、でてくるのは猿の魔物ばかり・・・。


「牛の軍団の次は、猿の軍団かの・・しかし牛といい猿といい種族もぢゃが、よくもまあこれだけの頭数を用意して従えておるものぢゃ・・」


一撃で倒せるとはいえ、さすがの数にタマキも疲弊気味だ。

ここまでは集団で出てきていたから一発でおわっていた戦いだったけど、細い登山道で出てくるのは次から次へと言った感じで出てくるのでそのたびに魔法を一発づつ放っているのものだから魔力はともかく体力を消耗しているらしかった。

なので、ワシも前に出て少しでもタマキが休めるように、ある時は空を殴り衝撃波で殴り、ある時は実物そのものを殴りまだ慣れていない感触に嫌な気分になったりしながら歩みを進めていた。

はたからみれば、これまでの戦いも今やっている戦いも蹂躙劇には変わらないかもなんだけど・・・。

それでもやっぱりキリが無い。次から次から猿が出てくる。

一本道で逃げ場も避け場もないからと言って全部相手だとさすがに・・だって20分ぐらいで進めるのわずかに5メートル程度だよ。

ボスにつくまでどのくら距離が有るのか分かんないけどこのペースだと数日かかるよね?コレ。

こんな状況にキレたのはわが嫁である。


「ええぇぇい!!もう!鬱陶しいのぢゃゃああああ!!」


天に向かって吠えたかと思うと、晴天だった空から雨が降りはじめる。

山を雲が覆っているわけでもないのに、山を覆うような範囲で雨が降っているようだ。

これは・・・久々に見るタマキの特殊能力「狐の嫁入り」だ。

前世で言われていた通り晴れているのに雨がふるという不思議な現象。

気持ちが高ぶったときにそれを発散しようとすると起こるらしいが、メカニズムは使うタマキでさえ理解できていない。「本能に近いんぢゃ無いか」だそうだ。

え、この状況でなんで?と思ったのだが、続けざまにタマキの雷の無詠唱が炸裂する。

なるほど、雨(水)を通すことで威力倍増というわけか・・・って感心してる場合じゃないんじゃ・・これワシも危なくない!?

危機を感じる状況でもあったけど、タマキも怒りを発散しただけで正気の類だったのでちゃんとワシを避けるようにしてくれていたらしい。心臓に悪い・・・。

しかし猿軍団には容赦ない・・・というかもうこの山全体が電撃で焼かれるんじゃないかというレベルだ・・地形変わらんよね!?

たっぷり30秒の電撃が終わると、岩まで焦げくさくもはや生物が住むには無理のある山が出来あがってしまっていた。

おそらくもう猿も・・・そう考えると、背筋が凍りそうになるよ。

本当に、タマキを本気で怒らせたらいけないとあらためて思った登山道だった。


案の定それから頂上までの間、いかなる種類の猿も出てくることは無かった。

恐れをなして逃げたたというよりは、これはもう全滅したととらえた方が普通だろう。

山道にはおびただしいほどのアイテム、食糧、武器、フィギュア・・・もしタマキが怒らずに普通に登って行ったらこれ、さっきは数日かと思ったけど数ヶ月はかかったかもしれない・・・。

中腰でアイテムを拾い拾い登り頂上らしき開けたところにたどり着いた時には、若いとはいえ腰が痛くなっていた。

ふぅぅ~・・・。田植えでもこんなに腰が痛くなったこと無いぞ、まったく。

よっこいしょと腰をおろそうとした時、向かいの大岩のところからなにか棒のようなものが、飛んで?くる。

まずいと思ったワシは、羅刹女の風を受けたときと同じようにタマキをかかえ地面を蹴る。

咄嗟だったので、力加減をまったく考えずに筋力を使った結果、思いがけず結構な高さのフリーフォールを味わうことになったがなんとか避けられた。

着地すると同時に夫婦一斉に戦闘態勢をとるが、攻撃はこない。

飛んできたと思っていた棒も動かない。よく見ればこれ伸びてたのか・・。

棒の伸びてきた方に歩みをすすめる。すすめる。すすめる・・。

根元だと思われる大岩にたどり着くと、消し墨になりかけた何かがいた。

ぎりぎりで人のような姿をしていたそれは、ワシの姿を確認すると、少し笑って消えていった。

その顔は「人生最後に強敵と相まみれた。感謝する」と言っているようだった。

なるほど、こいつがボスだったか・・明らかに物語の主人公の猿だな。

こんな状態になってまで最後の意地で攻撃を繰り出すとは、敵ながら天晴れである。

だが一つだけ言っておこう。やったのはワシじゃない、嫁だ。


消えると同時に棒も消え、かわりに普通サイズの棒と金に輝く輪、さらにいままで一度も見たことのない箱が魔法陣と共に現れた。


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