五〇 いざ初ダンジョン
依頼に必要なものを出し終えたワシは、その後さらに換金してみようと余剰なアイテムを売ることにした。
依頼の品でもうすでに茫然としているミケさんに、聞こえているのかいないのか分からないけど一応確認を取り、首を縦に振ったように見えたのですでにアイテムの山で置く場所のないカウンターではなく、床にアイテムを広げて行く。
数十分後全部出し切ったワシは心地いい疲労感で包まれていた。
ただアイテムを出していただけなんだけど、いやぁいくらでも入るからっていれまくってたらいけないね。
「で、では依頼の方は依頼で、買取の方は買取で整理・処理して本部に送っておくのにゃ。ボクも初めてでこれだけの量にゃので少し時間がかかると思うんだけどいいかにゃ?一週間ぐらいかにゃあ・・?」
「あ、別にいいよ。特に急いでないし」
申し訳なさそうに言ってくるミケさん。
初めての業務でいきなりこの量だ。しょうがない。というか、調子にのりすぎました、ごめんなさい、ミケさん。
別に今お金に困っているわけじゃないし、ランク上げもついでだからな。急ぎはしないさ。
多分普通の旅なら、行く先々で食べたり泊ったりがあるんだろうが、玉があるから泊る場所には困ってないし、食べ物だって玉にいけばあるし、ワシの道具箱の中にも一カ月は大丈夫なように食料やら料理を備蓄してある。
「で、ぢゃ。ウチらはダンジョンに行きたいのぢゃが、何処にあるのかの?」
「ああ、それでしたら、こちらの護符をお持ちくださいにゃ」
そう言ってミケさんはお札を二枚渡してくれた。
「これを体に貼れば村・・・というか柵の外の森側に穴が見えると思うのにゃ。そこが入り口にゃ。普段は勝手に出入りされたり、魔物が溢れて出てこにゃいように結界で隠してあるのにゃ」
「意外に近いな・・あ、そうか。ダンジョンの近くだから村ができるんだっけ」
「それにしたって近すぎぢゃ」
「まあ、だから普段は結界で見えにゃい、行けにゃい、入れにゃいの三にゃいで守られているのにゃ。多分他のどんにゃダンジョンも一緒だと思うのにゃ」
「ちなみに中についての情報は?」
「もちろんにゃいです。だれも入った事ありませんので。調査隊もこんにゃ辺境のダンジョン、発見はしても内部調査まではしてにゃいのにゃ」
そりゃそうか。そもそも人が来ないんだもんな。
調査もされていないダンジョン・・なんかわくわくしてきた。
隣のタマキもみるからにわくわくし始めている。
「早速行くのぢゃ」
「そうだな」
「では、次来る時までにはにゃんとか処理しておきますので。無理をしにゃいで頑張ってにゃのにゃ」
ミケさんと挨拶をかわし、ギルドを後にした。
柵から出ると、そこには昨日は無かったはずの穴が地面にぽっかり空いていた。
本当に近すぎるだろ、これ。柵の外とはいえ、これじゃギルドの裏庭と変わらないじゃないか。
「そういえば、モリーはダンジョンはじめてぢゃの。まあ、ほとんどは昨日歩いた森の中みたいなものぢゃ。魔物が出る。ドロップ品もある。ただ一部の道具が使えなくなったりするらしい。そして一番違うのは・・あ、これは実際見た方が説明しやすいのぢゃ」
そういうと先導して穴に入って行くタマキ。
ダンジョンがなんたるかを知っているタマキだから出来る事だ。
ワシには真似できなかっただろう。
「穴に入るとおそらく義母君の元家のようにどこかに転送されるぢゃろうが、バラバラにはいっても同じ所に出るから心配はいらんのぢゃ」
そういうとタマキが消える。
前にも言ったけどいきなり目の前から人が消えるって、分かっていてもやっぱりホラーだ。
タマキに続くようにワシも歩を進めある地点で転送された。
目を開けるとそこは先程までの暗い穴の中とは似ても似つかないのどかな村が広がっている。
ワシが来た事に気付いた先に転送されていたタマキが先程の説明の続きをしてくる。
「見ての通りぢゃ。入った所とは関係ないところに出るのぢゃ。で、このフィールドでフィールドボスを倒すと次の階層への魔法陣が現れる。そこが最下層ならば穴の外に出られるという寸法ぢゃ」
「途中で出る事って出来るの?」
「それはムリぢゃ」
え?
「タマキ・・そう言うのはもっと早く言って欲しかった・・」
「すまん・・・。誰も入っていないダンジョンときいて、気がはやったのぢゃ・・・」
分からんでもないけど・・。
とりあえず今あるもので何が出来るかを確かめる。
玉はだめだった。なんの反応もしない。これはダンジョンに入る前にタマキが言っていた使えなくなる道具だったか・・。
道具箱は・・大丈夫。使えるな。とりあえずは食料と掛け布団程度の心配はしなくてよさそうだ。
「本当にすまん。入る事しか考えてなかったのぢゃ。なにせ前回ダンジョンに潜ったときはまだ魔物・九尾の狐ぢゃったし、魔物のよしみでフリーパスだったからの・・すっかり忘れておったのぢゃ」
「・・まあ、過ぎたことはしょうがない。なに、それなりの期間生活できる程度の物資は道具箱に入っている。それに踏破すればいいんだろう。頑張ろうな、タマキ」
「・・モリー・・うん。頑張るのぢゃ!」
ワシはタマキに謝ってほしいわけじゃない。
まあちょっと反省はして欲しいけど。
それをいつまでもぐちぐち言う程ワシは狭量ではないさ。
そんな風にお互いに士気を上げていると、民家のような建物の中から足音が聞こえる。
さあ・・・鬼が出るか蛇が出るか。でも、やるっきゃない。




