四七 こんな可愛い子が男なはずがない
「にゃ、にゃ、にゃにをいってるのにゃ!?」
明らかに混乱しているミケさん。
そりゃそうだ。今まで疑いながらも男として生きてきたのだ。
おかしいのは自分だと言い聞かせながら生きてきたのだ。
そこにいきなり「君は女」と言われても、そりゃ混乱するわ。
「いきなり言われても混乱するとは思いますが、ワシの眼にはそう出ました」
「あ、あなたの目にでたからにゃんだというんですか!?」
全く信じてもらえない。
大方こうなるとは思っていたけど、ワシの秘密を全部言うわけにもいかないしなぁ・・どうするかな・・ん、そうだ。
「あの水晶玉を使って、ギルドカードに登録せずにギルド本部にも情報を送らない状態でスキルを視る事って可能ですか?」
「え?か、可能ですがにゃ?」
百聞は一見に如かず、見てもらった方が早い。
そう感じたワシら夫婦はミケさんと夜もふけているというのにわざわざギルドの方まで足をのばした。
この水晶玉は夕方見たやつよりも、いささか汚い。クモの巣まみれだった。
「ちょっと汚いですが、ごめんにゃさい。こんな辺境ギルドに自分のステータスを見に来る人にゃんていにゃかったんで使ったことにゃいんですが、更新機能がにゃいただステータスが浮かび上がるだけの水晶玉ですにゃ」
まず試しにとミケさんが手を触れる。
夕方、説明でやったのと違いワシの世界眼の視たのとそう変わらないデータが水晶玉の上に表示される。
性別は男?のままだったし、称号にもふたなりって文字は出なかったけど。
続いてワシが触れるわけだが、触れる前にちゃんと頭の中で自分のステータスを確認して、隠さないとおおごとになりそうなのは擬態で隠し、触れた。
数値を偽り、称号を隠し、だが一番見てほしいスキルだけはスキル欄にうつしだされている。
もっともそれも進化する前の名前に擬態してるんだけど。
「スキル・・鑑定ですかにゃ?」
聞いたことがないという顔をするミケさん。
それを確認してもらったところで再びミケさんの家へ移動するのだった。
「まず鑑定というスキルは知っておるかの?」
家に戻って説明しだしたのはタマキ。
ワシがやろうかと思ったのだけど、先ほど君は女だと告げてちょっと興奮しているので、告げた本人じゃない方がいいだろうということで任せている。
「いえ・・聞いたことにゃいですにゃ・・・」
「ウチもはじめてこやつのスキルを聞いた時には驚いたのぢゃが、水晶玉による識別が盛んになる前の時代にあった稀少なスキルなのぢゃ。スキルの効力はモリー自身の力量もあって先ほどのクモの巣水晶以上の識別を行うことが出来る。多分現在モリー以外に持っておるのはいないぢゃろう。ぢゃから初めに他言無用と言ったのぢゃ」
「・・・なるほどですにゃ。にわかには信じられにゃいですが・・」
「それはそうぢゃ。ウチだって最初は半信半疑ぢゃったのぢゃからの。で、先ほどのクモの巣水晶には相変わらず男?とかでておったが、モリーの眼にはお主はしっかり女と出た。クエスチョンが付くような鑑定と自信を持って女と出た鑑定。しかも精度は後者のほうが高い。はたしてどっちを信じるかのう?」
ウチならば後者ぢゃがの、と自分の意見を入れてミケさんの反応を見るタマキ。
さすがだぜタマキ。人心掌握を心得ていらっしゃる。
「・・・仮に、仮にですにゃ。モリーさんの鑑定の方が正しかったとして、ボクには立派に男のシンボルが付いていますにゃ。これはどう説明するのにゃ?」
「それについてはウチもさっきモリーから聞いたばかりなんぢゃが、昔の文献に男のシンボルと女性器両方を持つ者がいたというのがあったそうぢゃ。だからいないということはなかろ」
「・・・・」
「それと先ほどお主がした出血の話しぢゃ。月に一度の頻度といい、その前後の体調不良といいどうもウチが経験するものに似ておるのでの」
説明に隙がなく、反論したいのにできない感じで押し黙ってしまうミケさん。
タマキの説明を受けているうちにピンっと立っていた耳はお辞儀をし、二本の尻尾もこころなしか元気がなさそうに見える。
「もしウチらのこの仮説が正しければ、正真正銘お主は妊娠も出産もできる女の子ということになるのぢゃ。信じられないというならば、信じなくてもいいし、男としてこの先も生きていけばいいがの」
ウチらもお主のこれからの生き様までどうこういうことはできんしの、と付け加える。
たしかに会ったその日に、こんなことを言われても納得できないし不信に思うだろう。
ワシらとしても初対面のミケさんにどうしてここまでしてるんだろうと、正直思う。
やっぱり人恋しかったからかな・・家族以外に交流なかったし。
「・・・ボクのカラダを調べてほしいにゃ」
絞り出すようにミケさんが言う。
「いいのかの?」
「今の説明には幾分納得できにゃいところもあったけど、話の道程には怪しい所は残念にゃがら無かったにゃ。男の人に裸を見られるのが恥ずかしいのも男の人を好きににゃるのもボクが女にゃらば納得できるにゃ・・だから、タマキさんお願い。ボクのカラダを見て!」
そういうとタマキを連れてミケさんは風呂場の方へと行ってしまった。
ワシ?当然待機だよ。っていうかタマキに任せてからほぼ空気だったし。
風呂場から時折聞こえる叫びに似た声をBGMにすっかり温くなった紅茶をすするのだった。




