四五 はじめてのおとまり
もう時刻も遅いし泊っていって下さいというミケさんの好意に断る理由もないので甘えることにした。
話の続きはその時にでもと言うことらしい。
聞いてもらえますか?と深刻そうに聞かれたので、心して聞こうと思ってたのだがどうも心の準備が足りなかったらしい。先延ばしにして心を落ち付かせていたようだったな。
玉の中が快適なのでそこと比べるのは酷なんだが、見た目通りの質素な作りだった。
風呂も無く、あるのはタライとタオル。戦時中を思い出すぜ。
こんな具合でもタマキと一緒のワシはお互いに背中をタオルで擦りあいっこしたりと通常運転だった。
夕食も質素である。もともとミケさん一人分の物しか配給されていないので、量も少ない。
これでは足らないし申し訳ないと思い、ワシは台所を貸してもらうと、道中の敵ドロップ品と無人島で釣った魚で数品、三人分にはちと多い量をつくり、ふるまうことになった。
「こんにゃおいしいの食べた事にゃいにゃあ♪」
幸せそうに一口一口だいじに口に運んでいくミケさんを見ていると作ったものとして嬉しくなる。
やっぱり見た目通り魚がお気に召したようだった。
夕食後、テレビも電気もないこの世界はとくにすることはなく、いつもなら蝋燭の明かりをたよりに読書をしたりするところだが、夕方の話の続きをすることになった。
「まずボクは生まれて間もにゃく、ここに来たのにゃ。理由は両親の転勤ですにゃ。ここは辺境でだれもやりたがらにゃかったので給金がそれにゃりによかったらしいのですにゃ」
「まあそうぢゃろな。まずやりたがらんぢゃろ」
「でもそのころは親の休みのたびにいろんにゃ所に行ったのにゃ。ダンジョン休みっていうのがあってにゃ。休みににゃれば本部から転送石っていうのが配られる制度があって申請すれば申請した街やら観光地にいけたのにゃ。だから同世代との交流もあったのにゃ」
「転送石?」
「ほれ、義母君が使っていた転送の魔法があったぢゃろ。あれを誰でも使えるようにしたのが転送石ぢゃ。ただし色々制約が多くての、使い捨てで片道切符なのぢゃ」
小声でタマキが教えてくれる。
「普通じゃにゃいけど普通っぽくボクは成長していったのにゃ。親の愛も受けてたと思うし、休みのたびの交流も楽しかった。学校には行けにゃかったけど親からギルドの仕事を徹底的に教え込まれていたし将来はにゃんの疑いもにゃく、ギルド職員ににゃって親と同じように各国各所に転勤しにゃがら平凡でも普通の人生を送ると思っていたにゃ。成長期に入るまではにゃ・・」
だんだんと声のトーンが下がる。
「まず成長期と言えば知っての通り、背が伸びたり声変わりしたり体が大人ににゃるための準備期間にゃ。にゃんだけど・・・ボクの場合、まず尻尾が二又に割れたにゃ。見ての通り今も割れたままにゃのにゃ」
そういうとミケさんはワシらに尻尾をみせる。
確かに割れたというのが信じられなく元から二本あったといわれれば信じるぐらい、綺麗に根元の部分から二本生えている。
「めずらしいのう。年月を経て魔物化した動物が魔物化する時に尻尾が二つに割れるなんてことは聞いたことがあるが、猫人族がそうなるというのはあまり聞かんのぢゃ。おそらく先祖の何処かに魔物化したのがいたんぢゃろうな。先祖がえりぢゃな」
ああ、そういえば前世でもそういう話があったな。
長い年月を生きた猫は尻尾が二又になり、妖怪となるっていうの。
「両親はもとより、一緒に遊んでいた人からも気味悪がられるようににゃっていって周りから人がいにゃくにゃりましたにゃ。そのうちこの村から出ることもにゃくにゃりました」
「・・両親が避けたな。変な目で見られないようにってことか」
「世間体を気にした結果ぢゃな。でもお主はまだ愛されておるの。そういう風に異形だと思った親は酷い時はわが子を殺したり奴隷として売ったりするというのを聞いたことがあるのぢゃ」
「・・まあ、その愛も成人するまででしたけどね。それでも感謝してますがにゃ・・」
ここに閉じ込めて、逃げた・・・か。
それでも成人までは育てて、手に職までつけてあげるあたり親の責任は果たしたと言えなくはない。
でも、いまなら別のギルドに転勤中に魔物に襲われたというのは天罰が下ったと思ってしまう。
「・・それだけではにゃいんです。ボク、お恥ずかしにゃがら成長期からこっち、心の面でもおかしいことが続いてるのにゃ・・だから実はこの隔離には感謝してる面もあるんですにゃ・・」
「どういうことぢゃ?」
そうだ、こんな状況で感謝するところあるのか?
「というのも、大体成長期迎えると異性に興味を持つものにゃんだけど・・ボク、その頃から男の子に興味が出ちゃうようににゃったのにゃ。一緒に遊んでいた男の子に恋心まで抱くようににゃったのにゃ。なんとか抑えて、両親にも知られずにいられましたが・・」
え?そんなに珍しくないんじゃ・・。
普通じゃないんだろうけど、さっきの二又に比べればさほど・・
そんな風に思っているとまたタマキが小声でフォローを入れてくれる。
本当、よくできた嫁だ。
「お主に前世のことを前に聞いておったのでどうしてそこまでと考えとると思うのぢゃが、この世界では異常なことなのぢゃ。同性同士の恋愛は二又と同じぐらいに異端視されるのぢゃ」
あ、そうか。ワシの物差しで測っちゃだめだ。
まだこの世界は同性婚や性同一性障害に理解が無いのか。
というか若干タマキの説明の読み方がおかしかったのは気のせいだろうか?
「だからボクは何一つ悪い事はしてにゃいけど、流刑地のようにゃここに留まっているのですにゃ。他に行く所もにゃいですし・・」
ちょっとさびしいですけど、と付け加えるミケさん。
この世界では仕方が無いことなのかもしれないけど、異端は排除っていうのは考え方が固いよな。
まあ前世の世界でも似たようなことはあるか。
「それにボク、本当に恥ずかしいんだけど、成長期の途中から月に一度出てくる血ににゃやまされているのにゃ・・・本当に月に一度・・多分神様もボクに罰を与えているのにゃ」
え?血とは穏やかでない。
不治の病かなんかか?
「血とは穏やかでないのう・・。ちなみにどこから出るのぢゃ?」
「それが・・・よく分かんないんですにゃ。気がついたらスボンに染みているのにゃ・・」
・・・・え?それって・・・・




