四四 辺境ギルドのかわいいネコミミ
ギルドの中を見ると予想通り閑散としていた。
待合らしい椅子にも受付口にも誰もいない。
これ、本当に人いるの?
「あ、あの~。誰かいませんか~」
怖々と尋ねてみる。
すると奥から足音が近づいてくる。
・・良かった、誰かいたようだ。
「にゃんですかにゃ。タイガさん忘れ物かにゃ・・・」
出てきたのは頭にネコ耳のある少女だった。
髪の色は白地に茶と黒が所々、人懐っこく活発な印象をうける顔立ち。
タマキとは違うベクトルで可愛い。
首輪ではなく耳に付けた鈴飾りがかわいらしい。
「す、す、すみまんにゃ!てっきりタイガさんだとばかり・・」
「いや、いいんだけど。えっと、ここギルドで合ってるよね」
「は、はいですにゃ!ようこそ名も無き辺境の村のギルドへ!」
・ ・ ・ ・
「先ほどはすみませんでしたにゃ・・タイガさん以外の方がここにくるの十数年ぶりだったもので・・」
深々とお辞儀をしながら状況を説明してくれる。
「十数年ぶりって・・・そんなに人が来ないんですか?」
「来にゃいんですにゃ。まず立地が悪すぎますにゃ」
「辺境ぢゃしのう」
「村とは名ばかり、実際はギルドというの名の流刑地ですにゃ」
「なんか悪いことをお主はしたのかの?」
「いえ、してにゃいですにゃ。にゃけども・・」
「???」
「あ、挨拶が遅れましたにゃ。ここのギルドに籠って十余年の今やベテラン、ミケですにゃ」
「ご丁寧にどうも。ワシはモリー、こっちはワシの嫁さんタマキです」
「よろしくの・・・ずいぶん若く見えるがそんなにここにおるのかの?」
「はいですにゃ。両親についてここまで来たんですが、ボクが十歳で正式にギルド職員ににゃったときに『どうせ人はこないし一人でやっていけるだろう』と両親は違うギルドに行ってしまったのにゃ。で、その最中に魔物に襲われて両親はもう・・・。ボクは他に行くところもにゃいしここに留まってるわけですにゃ」
「・・今ミケさん何歳?もう二十超えてるの」
時系列は知らないけど話の限りではそれぐらいになるのでは?
この見た目で二十歳とか・・タマキと同じぐらい詐欺なんだけど。
「あ、両親の手伝い期間も入れての年数ですにゃ。ボクは今年で十三歳ですにゃ」
「見た目通り若いのう。強そうにも見えないのぢゃが魔物とかは大丈夫かの」
「一応この二軒は安全です。あ、もう一軒はボクの家でして。村という体ににゃっている柵の内側には退魔の術が施してあるので、大丈夫ですにゃ。こんな辺境でもちゃんとギルド本部の偉いさんが非戦闘員でも住んで大丈夫にゃようにはしてくれますし、ギルドとしての機能も一通りありますにゃ」
そうよな。ギルド職員のイメージって役所の人ってイメージだよね。
どちらかといえば戦闘は得意ではない、みたいな。
そこら辺はよく考えているか。じゃないと成り手いなくなるだろうし。
「ところで、お二人はどうしてここに?」
「あ、そうだった。実はギルド登録をしようと思って来たんだけど、出来る?」
「もちろんですにゃ!あにゃたたちはこのギルドの記念すべき初めての登録者なのにゃ!」
そう言ってからは猫のように素早かった。
カウンターの中に戻ったと思ったら、なにやら水晶玉のようなもの数個と何も書かれていないカードを二つ持ってきた。
「一応説明するにゃ。それぞれの水晶玉には自分の年齢、性別、レベル、ランクが出るにゃ。職業も出るんにゃけどギルドに登録すると一様に冒険者ににゃるにゃ。ランクはZからにゃ。あとお二人は夫婦ってことにゃのでそれも出るにゃ。で、出たものを証明書として持ち運ぶのがこのカードにゃ」
事前にヨーコさんやタマキから聞いていたけど一つ一つの水晶で一つ一つのことしか分からないんだなぁ。
それにカード。思った以上に何の変哲も無く普通だな。
「まあ、いきにゃり説明だけで手をかざせといっても不安があるだろうから、試しにボクがやってみるにゃ」
そうしてデモンストレーションでミケさんがそれぞれ手をかざす。
ミケさんはすでに身分証明書として登録しているので持っているギルドカードの文字が触った水晶玉に応じて光る。
名 前:ミケ
年 齢:13
性 別:男?
レベル:2
ランク:Z
職 業:ギルド職員(嘱託)
なるほどワシの世界眼の劣化版だな。しかしいる情報は揃っているのか。
・・ん?・・・性別が・・・!??
「このようにボクの場合は持っているから、文字が光って更新されているけど、二人は持ってにゃいから新たに文字が書き込まれるのにゃ」
「そ、そんなことよりミ、ミケさん!?君、お、おと、男!???」
「?」
「う、嘘ぢゃろ!こんなにかわいいのが男のはずがなかろう!?」
「そ、そういわれましても・・・」
驚くワシら夫婦に、戸惑うミケさん。
説明の内容よりもそっちだ。
どう見たって女の子だし、ボクっ娘だとばかり思っていたよ。
「ちゃんと付いてますし」
「と、というか、性別の後ろの『?』ってなに?かもってことなの?」
この世界にも釜とか鍋とかそういうのがいるのだろうか?
いやいたとしてもこんなに若いのが・・・あ、そうか十歳で成人なのだからいるかもしれないのか。
「にゃんといいますか、それがボクがここにいる理由の一つでもあるのですにゃ・・・初対面の方に言うのは違うとは思うのですが・・ちょっと聞いてもらえますかにゃ・・・?」
そういうとミケさんは少し言いにくそうに目を伏せたのだった。




