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四〇 お目覚めメイドと所有権

メイドが目を覚ましたのはその日遅くなってからだった。

腕輪が分裂する事を確かめたのち、ワシとタマキは玉の中で別行動をしていた。

タマキはなんかちょっとやることができたのぢゃとか言っていたけど、ワシにはとくにすることは無い。

やることはなくても、なにもしなくても腹はへるので料理だけはつくるのであった。

タマキと二人夕飯を食べて、客間を覗くと丁度メイドが目を覚ました所だった。

煙はもう出ていないし、こっちのことも認識しているように見える。

思っていたよりは大丈夫そうだ。

そんな事を思っていた矢先、はっとなにかを思いだしたかのようにいきなりベッドから降り流れるように土下座である。

な、なんだ?土下座するぐらい謝らないといけないのはこっちの方だと思うんだが・・。


「全力で来いなどとのたまったあげくこの体たらく、誠に申し訳ございません」


しっかりとした口調で謝罪の言葉を紡ぐ。

そこを謝るのかよとツッコミたい気持ちもあったが・・なにより。

よかった、故障でもしたかと思ったよ。


「それで、どうなのぢゃ。モリーは主として認められたのかの?」


土下座のメイドに興味は無いとばかりにタマキが話を進める。

いくら魔物の一匹にすぎないと感じていても、もうちょっとさぁ・・。


「それはもちろんです。あのレベルの衝撃を喰らったのはわたくしの長い生のなかでも経験ないことです。残念ながら記憶は攻撃を受けた際飛びましたが。しかし記憶はないですが経験は残るのです」


「ぢゃあ、ここに住んでも問題ないということかの?」


「むしろ、そうして下さいとこっちからお願いするところです」


「ぢゃと。良かったの、モリー」


・・なんか住む住めないの問題より大きい問題がメイドの発言にあった気がするのだが。

まあ、なにはともあれ住めるんだな。よかったよかった。


「これからはご主人様のために粉骨砕身頑張る所存であります」


「・・ご主人様というのはワシのことか?」


「?そうでありますが?」


さすがにその呼び方は恥ずかしいのだが・・。

前世でメイドカフェに行った時もあの呼び方には慣れなかったな。

あ、そういえば行った次の日に亡くなったんだ、ワシ。

文字通り冥土のみやげだったなぁ・・。

そんなどうでもいい事を考えていると、あれだけ大きな音を出しても顔さえ出さなかったヨーコさんが現れた。

桶に手ぬぐい・・・どうやら風呂に入りに自室から出てきたようだ。

ヨーコさんはこちら(主にメイド)に気付くと持っていた桶を地面に落しながら、ワナワナとふるえワシを糾弾した。


「・・・モリー、あんた・・・。無人島出た途端給仕って・・。女の子手篭めにした!?攫ってきた!?それとも奴隷買ったの!?」


ヨーコさんや・・・貴方は息子をどんな目で見ておるのか!?

まだ一日足らずだぞ!いや何日過ぎようがそんなことするか!!


「い、いや。これはそういうことでは・・・」


「まだ結婚して数日よ!!タマキさん可哀そうだと思わないの!?」


はぁはぁと息を切らしながら糾弾しつづけるヨーコさん。

いや、ヨーコさんが言ってたどれかが真実ならば、申し訳ないしタマキに顔向けできないだろうが、そもそもそこに真実は無い。

せめて弁明させてほしい・・が、そんな暇を与えることなくさらに糾弾してこようとするヨーコさん。

それを止めたのは、二発のパーンという良い音。

見るとタマキとメイドがハリセンを持っていた。この世界にもあるんだなぁ・・・ってどこに持ってたの!?

ヨーコさんは地面に突っ伏す。

助かった・・・。


いったん勢いをなくしたヨーコさんは素直にいままであったことを聞いてくれて、理解してくれた。

自分の早合点を反省し、挨拶もそこそこに風呂へと行ってしまった。

メイドロボだしこの玉のこと一番詳しいのだから、もっとつっこんでくるかと思ったんだが、案外あっさりとしたものだった。

去り際に、


「時間はたっぷりあるし、今日のところはこのへんで。給仕さん、今度また話きかせてね」


と不穏な事を言っていた事以外は別段問題だなと思う所はなかった。


「では、わたくしの口の中にご主人様の血液を一滴垂らしてください。そうすることで契約終了です」


「な、なあ。そのご主人様ってのなんとかならない?落ち着かないんだけど・・」


「ややっ。そうでしたか。ではなんとお呼びすれば?御屋形様ですか?」


「・・・普通に呼び捨てとか、せめてさん付けぐらいにして貰えないかな?」


「・・珍しい事をおっしゃりますね。配下に様付けを要求せずに・・まぁ、そう言うならこれからはさん付けで呼ばせて頂きます。ええと・・あ、これは失礼。まだお名前を聞いておりませんでした」


君を配下にした記憶はないんだけど・・そういえばなんやかんやで自己紹介もしてなかったな。

ワシとタマキは軽く自己紹介した・・と言っても軽く名前を名乗ったぐらいだけど。

ついでに先程風呂に行ったヨーコさんのことも紹介しておいた。


「承知しました。では改めましてモリーさん。血液を一滴、わたくしの口の中に。それからタマキ様とさきほどの方にもその後に血液一滴口の中に頂きます。これで住人登録が完了します。」


「ウチのこともさん付けでいいのぢゃ。ウチらのも必要なのかの?」


「はい。申し訳ないですがそういう術式ですので」


「ちなみにしなかったらどうなるのかの?」


「強制力で排除されます。これは防犯上のことでもありますので。わたくしより強い弱いは関係ありません。試練をしていない場合と同様三日以上の滞在ができないのです」


なるほど、イメージ魔法の使える魔物が玉に入ってこないという保証はない。

入ってきたものを排除するのがこのメイドの役目なんだろう。

さらにメイドが対処しきれない場合も三日という時間制限で最悪ここが完全に敵の手に落ちないようにする防犯の役割もあるようだ。

血を垂らす意味を理解した所で、まずワシが、次にタマキが、最後に風呂からあがって部屋帰ろうとしていたヨーコさんにも事情を説明して一滴垂らしてもらう。

何が変わったかなんていうのはわからない。

メイドが光るわけでもなければ、空気が変わったわけでもない。それでも、


「この玉の所有者をモリーさん。住人にモリーさん、タマキさん、ヨーコ様の3人を登録しました」


と言うのだから変わったのだろう。


こうしてワシらは正式にこの玉と屋敷の所有権を得たのだった。

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